あらすじ
恋愛小説の名手が満を持して描く故郷・金沢の女たち
金沢の花街に生きる2人の芸妓。恋することすら許されぬ場所で、彼女たちが掴んだものは――。
【担当編集者より】
3年ぶりの新作で描くのは著者の故郷・金沢、昭和初年頃の花街です。デビューから40年、一貫して女性の恋愛や友情、生き方を描いてきた唯川さんらしく、本作で描かれるのも、置屋「梅ふく」で働く女性たちの生き様です。
主人公の朱鷺やトンボをはじめ、登場する女性たちは一人として恵まれた境涯の者はなく、余儀のない選択として花街に生きています。
こう書けば、ただ辛いだけの物語のように思われるかもしれません。確かに彼女たちの眼前には次々と御し難い問題が現れます。しかし、唯川さんの描く登場人物たちの、健やかで瑞々しくどこまでも気持ちのいいこと!
それはきっと彼女たちが自らの運命を受け入れる覚悟をし、逆境を逆境として飲み込んだ上で、それでも前を向いて歩いているから。彼女たちにエールを送りながら読んでいると、最後には読んでいるこちらも明日からまた頑張ろうという気持ちになるはずです。
昭和の初めに比べれば、人生の選択肢は比べようもなく増えた現代ですが、選択肢が無数にある自分たちの方が、かえって周りに流されていないだろうか。そんな問いかけが聞こえてくるようです。
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Posted by ブクログ
時代小説は苦手だけど、これは、一話一話で完結しつつ繋がっていく話で、とても読みやすかった。
自分の生活で、つい、芸者さんの言葉に変換しそうになるくらい、ちょっとのめり込んじゃった(笑)
Posted by ブクログ
正月早々、素敵な小説に出会えた。
金沢には、金沢城を真ん中に南に犀川、北に浅野川がながれていて、犀川はおとこ川、浅野川はをんな川と呼ばれている。二つの川は一度も相容れぬまま海に流れ着く。まさに男と女そのもの。これが、この小説のテーマのようだ。
「朱鷺」と「トンボ」という芸妓を中心に花柳界で色々な事が起こる。それが皆、悲しくもやるせない事ばかりである。
様々な生い立ちで、芸妓になった者ばかりだが、逞しく美しく生き抜いていく。
私は、「水揚げ」という言葉の正確な意味を今まで知らなくて、自分の無知ぶりに恥ずかしくなった。
金沢の食べ物、言葉、しきたり、お祭りなどの描写が素晴らしく、金沢に行きたくなった。
唯川恵さんは、文章が上手いなあと感心した。
私の一推しは、トンボである。
Posted by ブクログ
昭和の始め、金沢の花街の芸妓トンボと朱鷺の物語り。連作短篇風に出来事を重ねて二人の成長と覚悟まで描く。女としてまた芸妓としての悲しみもあるが逞しく前を向く生命力に惚れ惚れした。特に置屋の女将時江の温かい人柄が素晴らしい。
Posted by ブクログ
舞台は金沢花街。置屋『梅ふく』で働く朱鷺やトンボを初め、登場人物を生き生きと活写。会話の殆どが金沢弁であるのも感情移入を容易にさせる。選択のない人生、花街で生きる彼女たちの痛みや哀しみが胸に応えた。
Posted by ブクログ
二人の芸妓の金沢の花街での体験話し。時は大正が過ぎ昭和に入って直ぐの時代、全部で7話。小生が子どもだった頃母から聞かされた種々の話しや京都の芸妓さんの話しなど多少知っている小生としてはかなりスムースに読み進められた。それぞれの芸妓の抱えている物悲しい事情が語られていて良かった!
Posted by ブクログ
2024/10/18リクエスト 1
金沢の花街で芸妓として売られた朱鷺と、捨て子だったトンボ。清楚で我慢強い朱鷺、見た目もハーフで華やかなトンボ。正反対の二人が花街で暮らし、家族愛、男女の愛、守るべきもの、など成長し悩み流れに飲まれながらもステキになっていく様子に爽やかさを感じた。
嫌な男も女も、いい男も女も様々。どの時代、との場所にもややこしい人間関係はついて回る。
このふたりが本当にステキなので、後日譚を読みたい。楽しい読書でした。
Posted by ブクログ
昭和初期、金沢の花街ひがしの芸妓朱鷺とトンボが主人公
美しい金沢の四季、独特な言葉に魅せられつつ、芸妓の抱える苦悩や移りゆく時代への不安などが描かれています
綺麗な物語でした
Posted by ブクログ
舞台は金沢、昭和になったあたりらしい。唯川氏の年代物の最新作…どうなんだろうとドキドキしたがこれまた秀逸。花街に生きる芸妓さんの苦悩を描ききっている。悶えるような苦しい中で、でも結局前に進んでいく強い女性たちが素敵だった。
Posted by ブクログ
2025年の読書1冊目
昭和元年頃の金沢の花街の芸妓の話。ということは今から100年前?花街で働く人たちの境遇は今とは全く違うだろうが、町の名前など今とほとんど変わっていないし、まるで昭和の後期頃と錯覚してしまうところもあった。言葉も昭和後期にお年寄りが話していた言葉に似ていた。注釈もなく、他の地方の人はわかるのかなと思ったが、金沢の雰囲気が感じられてよかった。
年中行事や食べ物など、金沢のガイドブックのようでもあった。
かんじんの物語の方はというと、星3つかな?
ともあれ、これを読んでついつい「金沢芸妓の舞」ツアーに2日連続でポチッと申し込んでしまったのだった。(さすがにお座敷遊びは敷居が高いので)
Posted by ブクログ
昭和初期の金沢の花街を舞台に、双子同様に育った2人の芸妓とその周りの人間模様。
四季のエピソードを織り交ぜながら淡々と進むが、女将時枝の体調不良から一気に佳境を迎える。
トンボと朱鷺のそれぞれが覚悟を決めるくだりは知らずに気持ちが熱くなり、「時枝はいつ覚悟を決めたのか」とのトンボの問いに対する朱鷺の答えは2人の繋がりの強さを表す、手練れの作者渾身のエピソードとなっている。
会話の金沢弁の優しい響きもいい。