あらすじ
うどんでプリン、海苔巻きバナナ、肉なし「そばすき焼き」にはんぺんサンドイッチ……。台所をあずかる女たちは、国破れても立ち止まってはいられなかった。明治から戦後二十年ほどまでの料理本約七百冊、婦人雑誌二千冊に登場するレシピを実際に作って食した著者が、その背後に潜む国家の政治性と“かあさん”たちが生み出すゆかいな創意工夫に迫る、実践的食文化史!
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Posted by ブクログ
戦中のすいとんとか、大根飯のようなものを集めた本かと思ったら、そうではなかった。明治に洋食が入ってきて、魚柄さんによれば、洋食を取り込んでから生まれた日本の和食文化は1950年代ごろに完成していたという。
すき焼き、サンドイッチ、ねぎま鍋など、そのひとつひとつの料理について、家庭料理の変遷を辿ったもの。魚柄さんが収集した膨大な当時の婦人雑誌から、当時のままのレシピなども載せられている。(文庫本なのでとても小さくなってしまって残念、こういう時は電子書籍がいいのかもしれない)さらにはカルピス、のようなものや、玉子チーズ、バナナの皮?おかしなスイーツまで。
ここにある料理は、すべて魚柄さんが実際に調理しているというのも驚きだ。
この本は、魚柄さんの「はじめに」と「あとがき」そして解説の湯澤規子さんの文章に泣かされる。本文は膨大な資料とそれに基づく検証記録になっているが、その原点がどこにあるのかを知らされて。
Posted by ブクログ
タイトルだけ見ると、太平洋戦前から戦後にわたる食糧事情の悪い(困窮していた)時期でも、大衆は食べることに関する工夫を欠かさなかったことを記しているようにも思える。
確かにそのような内容も多く、驚くものもあるが、それ以上に生鮮物の流通手段の変化につれて、それまでは一般には食べられなかったもの、好まれなかったものが大衆化すると同時に、人々の嗜好の移り変わりが描かれている部分が印象に残った。
特にマグロの食べ方の変化が興味深く、今では当たり前だと思われていることが、かつては非常識であったということが、案外身近にもあるということに気付かされる。