【感想・ネタバレ】足環をつけた鳥が教えてくれることのレビュー

あらすじ

「毎年来るツバメは同じツバメか?」「小鳥も案外長生きする」「スズメの数が減っている」――本書では100年にわたる「鳥類標識調査」によって明らかになってきた鳥の興味深い生態を紹介しています。鳥に足環などの標識をつけて放す鳥類標識調査からは、渡り鳥がどこから来てどこへ行くのか、鳥が何年生きるのか、身近な鳥の数が減っているといった様々なことがわかります。本書では、日本で唯一の鳥類研究所である「山階鳥類研究所」の研究員が、この鳥類標識調査で明らかになったことを解説しました。

「はじめに」では、絵本作家・鈴木まもるさんの描き下ろしイラストとともに、鳥類標識調査について解説しています。

■内容
はじめに ~私たちは、鳥のことを、どこまで知っているのだろう~
鳥類標識調査100周年に寄せて

1章 渡り鳥が世界をつなぐ
鳥の渡りってなんだろう/鳥の長距離移動チャンピオン/東京と福岡のユリカモメがどこか違う/ツバメの越冬地を求めて/ベニアジサシの越冬地の発見/アジサシ類は天気を呼んで渡る?/先端技術と標識調査/日本にいるハマシギは、どこからやって来るのか/足環で判明したツル類の生態/渡り鳥がつなぐ国際協力の輪

2章 鳥はどれくらい生きる?
毎年来るツバメは同じツバメか/長生きする鳥たち/小鳥も案外長生きする/蕪島に集まる3万羽のウミネコ/アマミヤマシギの奇妙な生活/絶滅の可能性を評価する

3章 鳥たちにせまる危機
激減するカシラダカに何が起きている?/スズメの数が減っている/干潟の鳥シギ・チドリ類に未来はあるか?/温暖化で変わる? 鳥たちの渡り/トキの野外個体群を追う/じつは2種だったアホウドリ/鳥類標識調査が生息地保全に貢献

4章 標識調査でわかる、あんなことこんなこと
雄か雌か? 成鳥か幼鳥か? ~性別や年齢と、標識調査~/多くの情報を秘めた足環つきの収蔵標本/ヤンバルクイナの発見/隠蔽種の存在を明らかにする/「そこにどんな鳥がいるか」を知るためには/人獣共通感染症と渡り鳥

鳥類標識調査について
鳥類標識調査100年の歴史/世界各国の鳥類標識調査/日本の鳥類標識調査/標識調査にかかわる法律の話/バンダーになるには/標識のついた鳥が発見されたとき

コラム
「幸福な王子」が教えてくれること/山岳バンディング/皇居の鳥たち/足環の回収記録が生き別れた親子をつないだ物語/鳥類標識調査への批判に応える/日本鳥類標識協会とは/標識調査と山階鳥類研究所

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

鳥の標識調査が始まって、100年になるという。
そんなに長い歴史があったのかとまず驚く。
口絵写真に続いて現れたのは、鈴木まもるさんの鳥の絵と「はじめに」という文章だった。絵本作家として知られているけれど、私には「鳥の巣研究家」としての鈴木まもるさんの方が身近だ。ここに持ってきたか、とまずニンマリする。
内容は、それぞれの研究者が報告をする形なので、どこから読んでも完結した短い内容になっている。しかし、中身はとても濃く、しかも一般の人にもわかりやすく書かれているので鳥に興味がある人、環境に関心がある人なら誰でも読むことができる。
1羽の鳥がどれだけ生きるのか、またどれだけの距離を飛び、どこで繁殖しているのか、鳥たちの人生、いや鳥生がドラマチックに浮かび上がってくる。私は学者ではないので、そこに感動する。

バンディングは、法律で許可された範囲で網を張って鳥をとらえ、足環など必要なものを装着したのち放鳥する。種の保存、絶滅の危機、環境の変化など、足輪をつけた鳥たちからもたらされる情報は、貴重で不可欠なものばかりだ。
そして、バンダーを養成する過程は最近「ダーウィンが来た!」で見たばかり。一見乱暴に見えても、熟練した技術を持つ人たちは、最小限のダメージにとどめて素早く足環を装着する。そして、ささやかなお礼にと、小鳥につくダニをとってやったりもする。(ダニは小鳥にとっては致命的になりうる)

地球環境が加速度的に温暖化に向かい、人の営みによっても脅かされていくなか、足環をつけた鳥たちがもたらす情報は、より重要なものになっていくに違いない。

0
2025年01月12日

Posted by ブクログ

共通テーマは「足環」のみで、専門の先生によって多様な鳥の知識がふんだんに盛り込まれたいい本でした。イラストに鈴木まもるを動員してくるのはさすがと感じた。ヤンバルクイナ発見時の回顧談と「日本のトキを野生絶滅させたのも自分たちで」は印象的でした。

0
2024年12月08日

Posted by ブクログ

100年に亘る標識調査で分かってきた、渡り鳥の飛ぶルートだったり寿命だったり生息環境の話。野鳥アトラスWEBというものを初めて知った。
鳥はヒトよりも環境や気候に向き合って暮らしているので、彼らを通じて気候変動の影響や防疫について知ることができるのだなぁ。その割に標識をつける人(バンダー)はほぼボランティア、しかもなるのがめちゃめちゃ大変と…よく続いてきたものだと思う。野鳥は好きだけど自分には無理だ。
シマアオジの保護の話も出てきたように、調査も環境問題対策も国際協力が不可欠。日本はシギやチドリを減少させているのに対策をなかなか取らないでいるけれど、間に合うのだろうか?

0
2025年01月10日

Posted by ブクログ

鳥について知りたい事、たくさんある。

・冬に東京に来ていたジョウビタキ、日本が温かくなると何処に行くの?
・温暖化で地球の気候が変わっているが、渡りの季節や生息地も変わっている?
・ジョウビタキは1日でどのくらいの距離を移動するの?
・去年も今年も姿を見せたジョウビタキ、同一個体の確率はどのくらい
・ジョウビタキは何年くらい生きるの?
・ジョウビタキの生息数は増えている?減っている?

このような情報を得る手段として足環で個体識別をしている。
沖縄にいた鳥がオーストラリアで見つかった。
去年巣作りしたツバメが今年も同じ巣に戻ってきた。
など、足環を付けた鳥を再確保(再確認)することでいろんなことが分かる。

日本では1924年から標識調査が行われており、今年で100年になるということで本書が作られたようです。

実際に調査を始めると多々困難にぶつかる。
「最近、すずめの数が減っている?」という疑問が生じても、
過去のすずめの数の信頼できるデータがない。
すずめは人家の近くにいるが、野鳥調査の場所は人家のそばではないことが多い。
など、調べたいことに特化した調査が必要になる。

私は台風が来るといつも「すずめたち、避難場所をみつけたかな」と心配する。
台風通過後にすずめたちの姿を確認するとホッとする。
渡り鳥と台風のレポートがあった。
台風の季節に渡りをする鳥はどうしているの?
答えは、台風を避けている。
どうやって察知しているのか不明だが、台風が通り過ぎてから渡りを開始している。

温暖化で変わる鳥たちの渡りのレポートもあった。
桜の開花時期も早まっているが、鳥の渡りの時期も変化している。
食べ物となる虫の発生時期も早まっているのも影響していると考えられている。

なぜか渡りの時期を変えない鳥もいるようだが、こうした種は(エサが不足するため?)生息数が減っているようだ。

性別や年齢を正しく判別するのも難しいらしい。
年齢は1年未満の幼鳥と、1年以上生きている成鳥の区別ができるくらいだそうだ。

オガサワラカワラヒワも登場した。
川上和人さんの「鳥類学は、あなたのお役に立てますか?」で主役となった鳥だ。
川上和人さんから血液サンプルのDNA鑑定の依頼があり、調べた結果106万年前に分岐した古い系統群だと分かったそうだ。

私も5年程前に足環を付けたすずめ(の死骸)を見つけたことがあるが、生息期間や生息地の貴重なデータになるので、
足環を付けた鳥を見つけたら「山階(やましな)鳥類研究所」まで連絡してください。

0
2024年11月03日

「学術・語学」ランキング