あらすじ
大正八年、帝国新報の記者・可能勝郎は、東京市郊外の世田谷村にやってきた。村一番の富豪である守泉家が、「なかむら座」を招いて『番町皿屋敷』を上演するのを取材するためだ。守泉邸は上空から見ると「む」のような形をしていて、通称「むの字屋敷」と呼ばれている。勝郎は「なかむら座」の俳優・静禰や、屋敷に滞在していた伊藤晴雨のモデル・カネなどにも話を聞きながら上演日を待つことに。しかし、深夜に勝郎が女性の死体を発見するものの現場を離れたわずかな間に消失、上演後の打ち上げの席では衆人環視下の殺人まで巻き起こる! 売り出し中の“探偵小僧”明智少年と共に推理を巡らす勝郎だったが……。レジェンド辻真先が、本格ミステリの楽しみを随所に鏤めて贈る、最新長編。
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大正時代の荏原郡世田谷村。荏原の方が世田谷より地域として広かったのにまず驚く。駒沢駅から歩いて1時間というから、今で言うと田園調布か上野毛あたり?もっと多摩川に近い描写があるが、地形も多摩川の流れも変わっている可能性がある。郷士の住宅「むの字屋敷」が舞台。名前の通り、増築を重ねたり、舞台を作ったりした結果、上から見ると「む」の字のような形の屋敷。何度も図面を見直しながら読んだ。本格推理としても整っている一方で、少年少女のやりとりが楽しい。面白かった。
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スーパー&ポテトシリーズの可能キリコの先祖やかの有名な明智少年が訪れた『むの字屋敷』で起きる連続殺人事件を捜査する本格ミステリーで、館×特殊設定のミステリー好きを擽る構成と大正時代の鮮明な情景描写や江戸川乱歩御大を彷彿とさせるストーリー展開など最後まで面白かった。改めてスーパー&ポテトシリーズや昭和三部作を読みたいと思った。
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序盤と中盤の「なんか事件が起こってるっぽいけどよく分からねぇ」からの、終盤の「え。あれってそういう意味だったの?!」の流れが秀逸で癖になりそう。明智小五郎が出てくるし、怪人二十面相も実は登場してるのがいい!!面白かったです。
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大正を舞台に明智小五郎とある人を絡めながら辻作品のキャラの先祖を含めて紡いだミステリは複雑ですがなかなか面白かった。
大正だからこその因果や因習を背景にした物語はいいし、90を超えた作家の作品とは思えない。
ほんわかとした語り口と事件自体の陰惨さは辻さんらしい。
2817冊
今年45冊目
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御歳92歳の辻翁の最新作。
大正年間の世田谷の館を舞台にした連続殺人事件。
若き日の明智小五郎や怪人二十面相も登場する。
叙述、密室、当時ならではの道具立て、名探偵、どんでん返し等々、時代の雰囲気とミステリーの要素満載の快作。
記述やアイディアの若々しさは年齢を全く感じさせない。
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辻真先さんっておいくつでしたっけ?自分らが子供の頃のアニメの脚本をやられていたような。
そういう大御所だけに、大正時代の描写がリアル。そこが最近のうすっぺらい推理物とは大違いですわね。
明智小五郎の探偵誕生譚ってことになるのかな。そういうのって著作権とかもういいのかしらね。
さて、本題ですが、「以心伝心」(テレパシー)とかが普通に出てきて、まあ大正だからいいかあと寛容な態度で読ませていただきました。怪しい奴は最初から予想ついたし、謎解きで初めて明かされることばかりですが、まあ、いいかあ。
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大正時代、奇妙奇天烈な「むの字屋敷」で起こった事件を追え #命みじかし恋せよ乙女 #少年明智小五郎
■あらすじ
大正時代、新聞記者の可能勝郎は富豪の屋敷に取材に来ていた。当主である余介が屋敷になかむら座を招いて「番町皿屋敷」を上演するためだ。
開演日まで関係者に取材を続けていた勝郎だったが、ある酔った宵、女性の死体を見かけてしまう。しかしドタバタの中、いつの間にか死体が消失してしまって…
■きっと読みたくなるレビュー
大正ロマンにしっとり浸れる作品。若干の艶っぽさがスパイスになって、独特の雰囲気に包まれますね。まるでお芝居を観てるかのような場面の移り変わりや台詞のやり取りで、大御所先生ならでは風格を感じられます。
時代小説を読むと、いつもその時代の文化や風俗だったり、人々の生活や職業に魅かれてしまう。身に着けているもの、食べ物や飲み物、住まいや街並み、移動手段など、どんなことでも新鮮で幻想的なんすよね。
特に歌、劇、絵画みたいな芸術に関しては、大きく現代とも変わることなく、現代とも距離が近いって感じちゃうんですよ。タイトルにもある「ゴンドラの唄」は大正時代の流行歌。今、聞いても耽美主義の世界を漂えます。
また登場人物がいいんすよ。イチ推しは滴、カネ、静禰の三人組。ちょっと特殊な奴らなんですが、屈託のないセリフが可愛くて。いい大人たちも太刀打ちできない様子に、つい微笑んじゃうんですよね。
また本作は、奇天烈な館ものでもあります。「むの字屋敷」ってなんなの?って思ってましたが、なるほどこういうことですか… むむむむむ。奇妙さだけでなく、しっかりと謎解きや物語にも組み込まれているところはさすがですね。
謎解きミステリーとしては、様々な事件が起こる上、人間関係や背景も込み入っているため大混乱。幻想的で愛らしい世界観なのに、かなり後半まで事件が巻き起こるんですよね。
しかし終盤、まさしくあっと驚く人物による、目から鱗の解決編が気持ち良すぎるんです! いやー、この切り口をぶちこんでくるのかぁ~。思わずミステリーファンとしてはニヤけてしまいました。
終章も明るい日本を感じさせてくれるし、ファンに向けたサービスも嬉しいですね。御年93歳の辻真先先生は、文芸作品はもちろん、アニメ脚本など多くの文化的な功績を残されている大先生。携わったアニメの一覧なんか見ると、もう涙がでてしまいます。まだまだ元気に、これからの人生を楽しんで欲しいです。
■ぜっさん推しポイント
いつの時代もひた向きに生きる若者たちに胸を打たれますね。天真爛漫な笑顔の裏に秘められた様々な想いが、何ともやるせなくって切なくなります。
「ゴンドラの唄」の歌詞をみて思う。
これからもどんどん時代は変わっていきます。周囲の価値観など影響されず、自分の意思で、好きなこと、正しく善いと思うことに突き進んで欲しいです。
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世田谷村一番の富豪・守泉家が招いた「むらかみ座」の取材にやってきた可能勝郎。守泉邸は上空から見ると「む」のような形をし、「むの字屋敷」と呼ばれていた。
深夜、勝郎が女性の死体を発見するが、僅かな間に消失、更に上演後の打ち上げで殺人事件が…。
今読んでいる昔の克郎のシリーズや瓜生慎のシリーズよりも、最近の作品の方がしっかりしている…。確か作者は90歳超えていた気がする…。明智小五郎や克郎とキリコの祖父の共演も楽しい。
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すごくすごく久しぶりの辻真先作品!
途中まで少々怠く感じたけれど、おまけに犯人はきっとこの人!と見当がついてしまったけど、それでも後半はぐいぐい引き込まれてしまった。
わかっていたのに、最後、登場人物たちのその後によかったねー!という気持ちになった。
しかし辻先生、おいくつなんだろう。そこが一番怖いかも。