あらすじ
動けなくなった家族は、誰が看るのですか? 自宅火災の跡から殺害された家族三人の遺体が出た。唯一生き残った長女は典型的なヤングケアラーだった。少子高齢化、認知症、貧困、格差、少年犯罪、教育――。日本が抱える問題は、すべて家族の問題につながっていく。いずれ誰もが直面する現実を描く問題作!
雑誌記者の笹山真由美は、若年性アルツハイマーを発症した父に付き添い病院を訪れた。彼女はその病院のICUで、頭に包帯が巻かれ、複数の管につながれた意識のない少女・美咲が流す涙を目撃する。美咲の家族は殺害され、自宅火災の焼け跡から遺体で発見されていた。事件を調べ始めた真由美は、美咲が典型的なヤングケアラーだったことを知る。重度の障害者の兄と認知症の祖母の面倒を、看護師の母にかわって一人で看ていた美咲が、衝動的に家族を殺して放火したと考える警察の見解に違和感を覚えた真由美が突き詰めた衝撃の真実とは……?
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Posted by ブクログ
重いけど、めちゃめちゃいい本。扱っているテーマもすごいし、自分にない価値観を知った。すごく考えさせられた。
看護師の母、認知症の祖母、寝たきりの兄の3人が殺害され、学生だった妹が家から飛び出したところで事故死、容疑者となる。
ヤングケアラーとして祖母・兄の介護に嫌気がさしたのではないかと妹が疑われるがーーというお話。
ヤングケアラーって嫌々やってるものだと思ってた。もちろんそういう人もいるだろけど、介護を当たり前のものとしてやってる子どもたちもいるのか、という衝撃。
もしそれが本当なら、それをやめさせるってかなり難しいし、無理やりやめさせたとして、それは本人のためになるのか?と思ってしまう。
奇しくも、私には介護が必要な祖母がいたし、生活するのにサポートが必要な知り合いもいる。
タイミング的に私はヤングケアラーにはならなかったけど、それに近いことは私の身近で起こっていたように思う。
自分が気づかないだけで、この本のようなことは案外普通に起こっているのかもしれないのがかなり衝撃だった。
人生において、自分の時間を自分のためだけに使える期間は、実はあまり長くないのかもしれない。
育児・介護が筆頭だと思うが、家族のために時間を使うのは、当たり前だけどすごく負荷のかかることだ。私は人間ができていないので、嫌だなと思ってしまう。
でも、嫌と思う選択肢すら持たない人がいる。子どもだったとしても。そう考えると、家族って宗教みたいだ。