あらすじ
堂々たる「敗者」たちの、知られざる物語。
三条大橋、養浩館、江戸城、横須賀造船所、碧血碑。
現代にも残る所縁の地に宿る、堂々たる「歴史の敗者」たちの、知られざる物語。
時代を超え、魂震わす傑作小説集。
「総司、三条大橋で京娘と恋をしてこい」
近藤勇の命を受けた沖田は医師の娘と逢瀬を重ねるも、任務の真の目的を前に恋と大義の間で揺れ動く(「七分咲き」)。
「されば、御免!」
福井藩主・松平慶永との初引見で、突如池に飛び込んだ藩士こそ橋本左内。夭折の志士が、養浩館に残した秘密とは(「蛟竜逝キテ」)。
「これは女子(おなご)の戦いであらしゃいます!」
政略結婚のため江戸城に入った和宮。大奥は京風と武家風で激しく対立するも、和宮自身は夫の徳川家茂、そして義母の天璋院篤姫に惹かれていく(「おいやさま」)。
「日本人が、私の期待に応えられるか否かは知らないがね」
立身出世の野望を胸に横須賀へ来た、若きフランス人技師ヴェルニー。一本のネジを後生大事に持ち歩く風変わりなサムライ・小栗上野介との友情の行方は(「セ・シ・ボン」)。
「赤神氏は、隠れた人生の機微を「敗者」の歴史から掘り起こす天才だ」榎木孝明氏(俳優)
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Posted by ブクログ
恥ずかしながら、碧血碑というものがあることを初めて知った。
歴史の敗者であるというだけで、葬られることもなく打ち捨てられた多くの遺体を大切に葬り碑まで立てた侠客がいたというだけでドラマになりそうだが、そこを敢えてエピローグとしてサラっと語っているところに味がある。
沖田総司、橋本佐内、和宮親子女王、フランソワ・レオンス・ヴェルニーという4人の物語。
歴史の敗者として退場した者もいれば、自身の運命と向き合い闘った者もいて、最後は日本の近代化に力を注いでくれた外国人の話で少し明るくなり、いろんな感情が湧いてくる読書となった。
歴史にイフがないのは前提として、もし橋本佐内や小栗上野介のような有能な人たちが志半ばで亡くなることなく、その能力を発揮することが出来ていたら、日本の近代化や明治維新はもっと違った形になっていたのだろう。
だが橋本佐内の志は多くの人たちに引き継がれ、福井藩が豊かになりつつあるように、小栗の意志もまたヴェルニーが引き継ぎ、ただ造船所を造るだけではなく、日本人が自分たちで引き継げるよう教育もした。
そうした人たちの繋がりを感じ取れて感慨深かった。
また和宮の話も、大河ドラマ「篤姫」を和宮の視点から読んだ感じで面白かった。
わがままな皇女が徳川と日本を救うために逞しく成長する姿が心地よかった。
久しぶりに赤神さんの作品を読んだが、やはりドラマチックで楽しい。