あらすじ
おしゃれにまつわるエッセイを48篇収録。こだわりの一着、憧れのスタイル、特別なよそいき……「好き」を装う楽しさが詰まった本。
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Posted by ブクログ
『おしゃれ』と聞くと、人目にアピールするためにおめかしするとか、盛るという状態を考えがちだけれど、このアンソロジーは話題が驚くほど多岐に渡っている。
そこには、作家たちの生き方そのものがあるように感じる。
【Ⅰ 毎日のおしゃれ】
・柳田國男の、民俗学者らしい「衣」に関する用語と歴史などが辞書のような見出しと説明文で構成されているのが面白い
・悲しいことがあっても、今日は新しい沓下(くつした)を穿いていることを思い出し、気持ちを宥める、田中冬二
・ネクタイに対する疑問を物申す、石原慎太郎。なんの必然性があるのか。衣類に必要なのは、生活のための合理性と生活の美化への装飾性なのだ!
・・・その、生活の美化への装飾性、の方に該当すると思うのだけれど?
【Ⅱ お気に入りの逸品】
女の人の腕時計は、指輪や首飾りより、何よりも美しく腕を美しく見せるという、室生犀星。そういえば、私も、時計屋の前を通るたびに腕時計をはめた北川景子の白い腕を、美しいなあと思っていたのだった。
レインコートを羽織るだけでもロマンチック、って森茉莉。美少年に似合うレインコートって、どんなのだろう?
【Ⅲ とっておきのよそいき】
・芥川賞の授賞式に着て行った、黒い勝負ドレスを語る村田沙耶香。微笑ましい、これからも応援したい。
・服装についての随筆の依頼が自分に来たことにまず驚く檀一雄。旅行中は、その国の服がいちばん風土に合う。
【Ⅳ こだわりの着こなし】
・着ていくと必ず大雨に見舞われる銘仙の着物があった太宰治。大雨に難儀する周りの人々の中で、「きっと私の着物のせいですごめんなさい」と心のうちで謝り、ひたすら肩身を狭くする。こういうところが「らしくて」可愛いと思えてしまう。
・「映画の中のシャツ」宇野亜喜良。名画語りがすてき。
【Ⅴ 夢に見たあのスタイル】
・一高の学生たちの夏帽子に憧れて、ついには買って、避暑地へ行ってかぶってみる。日光でのひと夏の出来事。萩原朔太郎の「夏帽子」は美しすぎる短編小説。
【Ⅵ 流行りを楽しむ】
・流行は10年で一巡りするという。深く考えずに10年前にあつらえた帯を締めて行ったら、友人にあら(流行を取り入れるのが)早いわねと言われた、岡本かの子。
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明治期の作家は、まだ和服で生活していた人も多い。
洋装を取り入れることに対する慎重な視点もある。
流行を取り入れたり、誰かに憧れて真似したいと思ったり、あるいは好みの反物(や洋服)を見つけた時に、そこに目をつけたセンスは良いのだが、自分に似合うのかよく考えてみたほうがいい・・・と言う意味のことを、複数の人たちが言っていた。
同感であり、肝に銘じたい。
服飾というものは、実はとても奥深いものだ。
Posted by ブクログ
古今東西、46人の作家(漫画家含む)の服を中心としたエッセイをまとめた書籍。
当然文体も異なるが、普段手に取ることのない作家の一編に触れることのできたのは収穫だ。
Posted by ブクログ
「おしゃれ」をテーマにしたアンソロジー。平凡社のアンソロジー「作家と××」シリーズの一冊。収録されている作家は芥川龍之介や菊池寛から、三島由紀夫や檀一雄といった戦後の作家、村上春樹や川上未映子、村田沙耶香といった現代文学の人、柳田国男や今和次郎、宇野亜喜良、会田誠といった文学以外の人や、長谷川町子や望月峯太郎のような漫画家まで幅広いく、収録されている作品は極短いエッセイの類いでちょっとした隙間時間に読み進めていける。軽めのアンソロジーとしてはすごく良いのではないかと思う。唯一、気になった点をあげるとすれば、出典の記載はあるが初出の情報が抜けてる点であろうか。ファッションの話なので、戦前なのか戦後なのか、戦後でも60年代なのか70年代なのか、その作品が何時書かれたものなのかというは(まぁ、作者の活動時期と内容から大体のところは見当が付くかもしれないけれど)重要なので、その情報が欠けているというのは気になった。
あと、選者が編集部ということか、収録作が多いためか、「解題」がないのも淋しい。選者による解題はアンソロジーを読む楽しみの一つだと思う。
収録作の中では、戦前の詩人である田中冬二の「新しい沓下」という詩が良い。
> 今日私は新しい沓下を穿いているのだと/その感情がわずかに悲しい心を/制してくれる
この新しい沓下の持つ特別な感じが好きだ。子供の頃、大晦日の夜に開けた正月に着るために買った晴れ着とまではいかないがまだ袖を通していない新しい服を一揃い枕的に畳んで眠りにつくあの時の高揚感を思い出す。
あと、久しぶりに読んで、森茉莉と川上未映子の文章の気持ち良さを再確認した。
Posted by ブクログ
「おしゃれ」を一くくりにせずに「毎日の…」とか、「こだわり…」とか6つの場面に分けて捉えたエッセイ集。書いている方も作家から詩人、画家、評論家とか幅広くて、明治時代まで遡るのもあるが、其々書いた方の矜持みたいなものを感じる事ができた。
巻末には著者の略歴や出典もあり、気負わず読めるので、家事の合間にピッタリだった。