【感想・ネタバレ】血腐れ(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

亡き夫に唇を触れられたと語り出した義妹(「魂疫」)。縁切り神社で行われる“儀式”(表題作)。忌まわしき伝承を持つ鐘が鳴るとき(「声失せ」)。原因不明の熱に苦しむ息子に付き添う私に近づいてきた女(「影祓え」)。身近な者の災難や死が切り裂いた日常。煉獄の扉を開くのは、無念を抱く冷たい死者か、あなたの傍らで熱を放つ家族か。禁忌を踏みこえた先に見える真相。戦慄のホラー・ミステリー短編集。(解説・杉江松恋)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

ツイッターで面白いと言われてたので、読んだ。面白かった。

世にも奇妙な物語のホラー枠でありそうな話ばかり。
オカルトとしてのルールがあり、それをどう見破るか利用するかの話で面白い。


「魂疫」たまやみ
呪われないようにすればどうすれば良いのか?
それを知らせるのが猫というのが面白い。

「血腐れ」ちぐされ
半分だけ効くというおまじない。
弟夫婦の予想を、こう思わせておいて結局は違うというミステリー具合で面白い。こういう偏見に気付かせてくれるミステリー好き。

「骨煤」ほねずす
介護問題というホラーと黒い骨というホラー。
最後はヒトコワオチの流れだけど、兄のほうは因果応報だなと思うので、ヒトコワではないと思った。典型的なカリフォルニアから来た娘の話。

「爪穢し」つめけがし
信用出来ない語り手。そういうことか~で面白かった。クレカ止められたのおかしいもんな。
妹は元同級生に恨みではなく執着(いじめは狂言)されて自殺。それが姉である主人公に移り、主人公は全国にばら蒔くことで回避。
呪いを不特定多数に多く薄めてばら蒔く解決は前から見たことあるが、やり方が面白いな。

「声失せ」こわうせ
彼女を失ったとあるがそこに繋がるのか。そこ以外にも前フリ欲しかったなと思う。彼女が内緒でバイトしてた?でも死んだのが倉庫だから既に知ってるよな。
鐘のほうにはオカルトが無くて動画は本物というのが面白い。

「影祓え」かげはらえ
ロジック詰め。見られたという自認で左右されるのが面白い。
付き添い入院の大変さも描かれているのが良い。

どれもミステリーとしての仕掛けもホラーとしての怖さも、そして現実にある怖さも描かれていて面白かった。

0
2025年06月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

夫婦、親子、兄弟、親戚…関係が近ければ近いほど、抱く感情も濃くなり複雑になる。そんな血縁から生まれる闇はもう魑魅魍魎の巣窟で、いつ誰が陥ってもおかしくない気にさせられる短編ホラー。
「骨煤」の親の介護を巡る兄弟間のやり取り、主人公のある意味自然にまかせた最後のブラックな感情はリアルすぎてゾッ。
イチオシは雪深い村の寺の忌まわしい伝承とミステリーの融合、予想外の結末が秀逸な「声失せ」。
「影祓え」の母子に降りかかる理不尽な災厄以上に怖く腹立たしいのは、肝心なことを言わず肝心な時に役に立たない父親の存在だな。

0
2025年01月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【収録作品】魂疫(タマヤミ)/血腐れ/骨煤(ホネズス)/爪穢し/声失せ/影祓え

超常現象や霊的な存在はあるが、構成としてはミステリで、腑に落ちる結末になっている。

0
2025年04月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 石に相手の血を捧げると縁切りが叶うという神社。姉は弟の行動にある疑惑を抱くーという表題作他、家族や家庭に潜む不穏さと闇(時に疎ましさ)を描き出したホラー・ミステリ全6編。

・一周忌を終えた夫が「枕元に立って何か訴えて唇に触れてくる」と語る義妹。だがこの義妹は色々難ありの人物の上、軽い認知障害に罹っていた(魂疫【たまえやみ】)。ラスト、本当に《鬼》から逃れられていたのか―。
・弟家族とキャンプに来た幸菜。弟はその朝早くに近くの縁切り神社へ行ったようだった。仕事で来れないという義妹に連絡が付かないことから、彼女の中に恐ろしい疑念が膨らむ(血腐れ)。弟夫婦の未来は何れにしても……。
・老いた父親を介護する弟と口だけは出す兄。弟は亡母から「地獄に落ちた者は遺骨が黒くなる」と聞かされてきた(骨煤【ほねすす】)。地獄は其処にあったということか。老親の介護をどうするかという問題は収録作の中で最も切実なリアリティがあるかもしれない。
・ある事件からアイドルを引退して引きこもりになった妹。彼女に頼まれネットで購入したネイルチップは注文したものと全く違う不気味なもので、返品しようにも出品者と連絡がつかず、捨ててもなぜか戻ってくるのだった(爪穢し)。仕事上のトラブルは解決しても……最も救いのない結末。
・オカルト系編集者の和久と社長でもある叔父は、祖父が住職を務める福島の寺に向かっていた。撞くと人が消える《神隠しの鐘》の取材だったが……(声失【こわう】せ)。神隠しの謂れの理由を合理的に解明しているのは面白い。各地の禁忌や伝承にも多分にこういう理由があったのかも。
・幼い息子の検査入院の付き添いで泊まった夜、真希はベッド脇に不気味な黒い影を見る。不安と疲労に苛まれる中、同じく息子が入院しているという中年女性里佳に声をかけられる(影祓え)。人怖と呪い、我が子に死の手が及ぶ恐怖―それらが入り混じる最もホラー度の高い一編。

 6編とも家族や近親者との関係が舞台となり、不意に訪れた死や災難が日常に作った裂け目。家族や血縁があるからこそ容易に断ち切れない関係が時に疎ましさや歪みを産む。『血腐れ』は収録作のタイトルだが、作中の人物の言葉にある「腐れ縁」のように血の繋がりによる腐れ―倦んだ関係というのは全作に共通しているようにも思えた。家族とは基本的に大切なものではあるけれど、近しいが故の煩わしさというのもまた、誰しも多少は身に覚えがあるものではないか。
 またどれも一人称で書かれているが、それを活かした「信頼できない語り手」の構成を取っているものもあって面白い。

 帯で謳っているほどの"イヤミス"とは感じないまでも、ホラー的な恐怖よりも「うわ、なんだかなぁ……」という"厭さ"が際立つ短編集、だった。

0
2025年03月25日

「小説」ランキング