あらすじ
この物語は、中年版『君たちはどう生きるか』です――金原ひとみ。45歳一人暮らし、労務課勤務のルーティン女・浜野文乃と、ホスクラ通いのイレギュラー編集者・平木直理。新たな代表作。
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Posted by ブクログ
まさかさんのライブでの姿からは想像できない普段の繊細さや言葉選びのセンスに驚いた。
二人が交わす会話のテンポと内容が素晴らしい。知性と遊び心があって、いつまでも聞いていられそうだった。主人公が子供とおじさんに対する嫌悪感の共通点を言語化する場面が個人的にすごく好きだった。
過去の出来事を機に、社会に対する自己を閉じてしまった主人公がだんだんと心を開いていく様、彼女の個性が垣間見得ていく様が、読んでいて面白かった。
ルーティーンを繰り返し、波風立たない生活を求めていくようになる人の思考回路の一端を知ることが出来てよかったなと思う。今の時代性を感じる作品。
まさかさんとの出会いで変わっていく様を見ていると、人から受けた痛みはやはり人との出会いでしか癒せないのかなぁと思った。今までの価値観の家族が崩れている現代において、新しい家族像、人と共にいる可能性を描いてくれている作品だと思った。
Posted by ブクログ
大好きな金原ひとみさんの作品。主人公の女性が型にはまった生活に安心を感じる性格できちきちしていていつも敬語。変わった人だと思っていたけどだんだんと事情がわかっていって現実味を帯びていく。感情的になる場面では、汚い言葉が出るのが本当の自分が見え隠れして面白い。
平木さん、まさかさんとの出会いで、ありのままの今の自分を肯定されてどんどんほぐれていく過程が見ていてほっこりする。まさかさんの本名には思わず笑ってしまった。2人のやりとりが長いのに面白くてもっと聞きたいと思わされる。
Posted by ブクログ
中年版「君たちはどう生きるか」
まさにその通り。
主人公は45歳、独身で事務職の浜野さん。
先の見えない行動や非日常の日々が苦手で、仕事以外は人と関わらず、日々ルーティン通りに生活している。
ある日、上司の命令で20代のパリピ編集者・平木直理(ひらきなおり)と出会う。
ルーティンと平凡からはかけ離れた平木さんとの関わりの中で、日常が少しずつ変化していく。
ありきたりな感想ではあるが、登場人物のキャラクターが本当に良い。
破天荒で突拍子もない平木さんだが、彼女の言葉は明るく、真っ直ぐで、「そっか、これでいいんだ」と思わせてくれる。
平木さんの紹介で出会ったロックバンド「チキンシンク」のボーカル・かさましまさか。
ファンキーな登場とは裏腹に、実は寡黙で冷静に自分を見つめられる人。
浜野さんとの距離の詰め方や、付き合ってからの会話の温度感が絶妙で心地よい。
特別大きな事件が起こるわけでもなく、
最後にどんでん返しが待ち受けているわけでもない。
あくまで大人の男女の日常ストーリー。
だからこそ気負いなくすっと読めて、そっと温かい言葉と笑いをくれる。
「渡り鳥が渡り鳥に出会って、ちょっと疲れたから死ぬまで一緒に飛ぶ」
同意するにはまだ私は未熟だけれど、
恋愛を超えた“大きな愛の形”として、とても素敵な言葉だと感じた。
Posted by ブクログ
オーディブルにて。
また好きな作家さんが増えた…!
決まった食事、同じような日常をなぞる私にとっては共感できた。
そして結婚・不妊などの話、全く同じ境遇ではないにしても、心が限界なときは思考までおかしくなることや、そこまでして求めていたものってそんなに価値があるものなんだっけ?ってなった瞬間に全てが揺らぐこと…とっても共感できた。
それを経ての今の自分なんだか、まさかさんと出会えた今があるのなら、その経験も間違いじゃなかったと思えてしまう良さがあった。
私もいつか同じように思えるのかな、思えたらいいな、と温かいような切ない気持ちになった。
ついつい自分と同じような性格の友達とばかり一緒になってしまうけれど、私も平木さんのような友達がほしいな、それもちょっと楽しいかもと思った。
ーーー死にたい人に出会って初めて、私は生きたい人なのだとわかった。
Posted by ブクログ
こちらの本の感想を見る機会が多くて、内容含めて気になっていましたが、なんせ「蛇にピアス」の作者である金原ひとみさんが書いたということで、若干尻込みしてしまいました( ´ー`)フゥー...
結婚→不妊治療→離婚の暗黒鬱々したところがあるぐらいで、あとは、ほっこりだった。
『自分には唯一無二性が無さすぎ、自分の人生には意味が無さすぎる、という事実の裏返しでもある。…まさかさんと蟹を食べることに異論はない。私はまさかさんと蟹を食べるだろう。何より蟹は美味しいし、何を差し置いても食べたいものの一つだからだ。』
着る服も食べるものもルーティン化して決めてしまえば、後は流されるように過ごすだけ。そうやって生きていく方が合理的だ、変化は嫌い、削ぎ落とした生活を送る浜野さんに、職場の後輩と、その御縁で新しく出会った人たちとがスパイスとなって変化をもたらす。もう1回読むなら、蟹も551豚まんも美味しそうな冬の時期がいいかなー(*´艸`*)
2025.8
Posted by ブクログ
文章はうまい。サクサク読める、入り込める。
けど、最後もの足りないと思うのは、自分の歳のせいか、、、。もはや老害か笑
悪く言うと、自意識過剰の自己中な主人公の久々恋愛のノロケって感じ
結婚、離婚を経て、人との関わりを持たなくなった主人公が、職場に友人が出来、そのツテで恋愛までして、人間関係取り戻したって話だけど。
たまたま、いい人達に出会えたってだけで、本人は何にも変わってない。
例えば、この主人公と同じく、結婚に失敗し、離婚して、人との関わりを持たなくなった人が、人生、死んだように生きている人が、この本を読んで、共感はするかもしれないが、自分も、前向きに生きていこうと思えるだろうか?
自分にも、いつか、優しい友人や恋人との出会いが訪れるから、それまで頑張ろうと思えるだろうか?
ここで終わるなら、延々と1人を貫く強さを描くか、優しい友人や恋人と出会ったが、また一悶着があり、少しは成長する自分、というところまで描いて欲しいと思う。