【感想・ネタバレ】破線のマリスのレビュー

あらすじ

首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑶子は、虚実の狭間を縫うモンタージュを駆使し、刺激的な画面を創りだす。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった! 事故か、他殺か、一本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワイダニット」。第43回江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリ。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

読中は熱くなりっぱなしでした。

なぜなら本書のテーマが自分の人生最大の関心事の1つだったから。

タイトルのマリスとは報道に関わる記者や編集者の悪意を意味している。

主人公の遠藤瑤子はテレビ局の編集者として映像を自分の主観に沿うように編集して刺激的な映像を作り出す。


小説にテーマを伴った小説があると思ってますが本書はそれです。

さらにいえばその中でも特にメッセージ性が強い部類だと思う。

なぜなら本書は読後感を大きく左右するラストにおいてまでも猛烈に主張しているから。

私は読後にメッセージごと顔面に張り手を受けたような印象を抱いたほど(まぁテーマが関心事ゆえってことが多分にあるかとは思うが)。

これほど正面からテーマを突きつけながらそれでいてストーリーも優れている(自分としては星四つくらい)のだからなんともいえない。

素晴らしい作品である。

作中では結局犯人は暴かれなかったが、それゆえにテーマがぶれなくて良かったと思う。


報道関係者にはマリスの除去に努めてもらいたいですね。

特に、自分達が人一人の人生を台無しに出来るほどの影響力を持っているという点は肝に銘じてもらいたいと切に思います。

そして情報を受け取る側の我々も報道を鵜呑みにするのではなく、常に疑ってかかることが必要ですね。

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2024年09月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映像編集を駆使して視聴者を煽る主人公。報道番組担当なのにどうなの、その行為?結果として真実があぶり出されたとしても…

と思っていたら案の定、社会的に“排除”されたターゲットから陰湿な復讐を受けるハメに。その描写にはじわじわとすり寄る恐ろしさがあって、なかなかにスリリング。

仕事に没頭しすぎて離婚してしまい、かつそのような状況下でストーキングにあう主人公の瑤子に、一瞬共感しそうになりました。辛い状況に追い打ちをかけられる様子がいたたまれなく思ってしまったのであります。

しかし、その要因を作ったのは瑤子本人であり、ストーキングしている麻生は瑤子に陥れられた被害者でもあります。かつ、昨今の傲慢で図に乗りすぎたマスゴミの姿が瑤子の行為とオーバーラップすると「自業自得じゃねーか」ってことで、非常に冷めた感覚を覚えながら活字を追っていました。

最終的に、映像編集を駆使して社会を動かそうとしていた瑤子を追いつめたのが、全く無垢で無作為に撮られた映像だった、という対比も良いと思いました。小細工なしに、説得力ある映像は世の中を動かす力がある、ということなのでしょうか。

結局、灰色の男が誰だったのかは分からず(読み落としてるかな?)、何ともスッキリしない読後感がなきにしもあらず。

けれど本作の主軸は謎を解き明かすミステリではなく、テレビ映像は必ずしも事実をありのまま映しているわけじゃないよ〜 垂れ流される情報を鵜呑みにしないで冷静に真偽の判断しましょうね、っていう問題定義にあるんじゃないかな、と思いました。エンタメとしてだけでなく、社会派ミステリとしても個人的にかなり楽しめました。

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2014年07月20日

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ネタバレ

以前途中まで読んだ時は、私立大学と郵政省の癒着問題が発覚したあたりで終わっていたので、お堅い社会派ミステリーなんだと思っていたらちょっと違った!驚いた。

メディアの偏った報道の怖さもさることながら
主人公や麻生がどんどん変わっていく様を見て、どんな人でも簡単に狂ってしまうのかなと思うと怖かった。(ジョーカーみたいだな)
人間が結局1番怖い。

そして日常を盗撮していたのがまさかあの人だったなんて…。なんて皮肉なんだろう。

個人がネットで発信できる今と比べると、どうしても時代背景は古く感じてしまいますが、これからも普遍的なテーマだと思います。

野沢さんって元々脚本家なのか。
「眠れる森」「その男、凶暴につき」あたりは元々見たいと思ってたし、今度見てみよう。

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2021年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

【江戸川乱歩賞受賞作品】。
首都テレビの報道番組『ナイン・トゥ・テン』の中で、高視聴率を保つ特集コーナー『事件検証』の映像編集を担う遠藤瑤子は、視聴者を引き込む映像を作り上げる有能な女性であると同時に、タブーすれすれの映像を平気で作るような女性。
そんな彼女に、ある日「春名」と名乗る郵政官僚から、汚職、ひいては、それに関する殺人をも示唆するような内部密告のビデオを手渡される…。

因みに、「破線」=テレビ画面を構成している525本の走査線、「マリス」=報道の送り手側の意図的な作為・悪意のこと。

麻生と瑤子の関係は、そうなるか!? と、結構、衝撃的でしたねー。
他にも、そうだったのねー、というような、全く予測出来なかった事実が色々と。
詰まる所、蛙の子は蛙であったという事でしょうか。<ゑ?
基本的に、推理小説じゃないので、犯人がはっきりとは分からないのが多少物足りない感じも致しますが。
マスコミの恐ろしさを考えさせられる作品。

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2017年01月13日

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ネタバレ

テレビ業界ミステリー?
主人公の女性の転落というか、狂っていく感じは読んでていたたまれなかった。
人の思惑でテレビでもなんでも見え方は変えられてしまうんだなってことですかね。

最後の撮影者のオチは、登場人物の残りから消去法で読めたけど、悲しいオチでした(O.o)

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2022年06月19日

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ネタバレ

冒頭から中盤まではわくわくするような展開で期待が高まったが、
主人公が暴走を始めた辺りからどんどん冷めてしまった。

ミステリーよりもメッセージを優先した結果かと。
面白かったけどちょっと残念。

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2020年10月20日

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ネタバレ

破線のマリス/野沢尚:第43回大賞受賞。1997年
マリスとはTVの送り手側の作為とか悪意。
映像技術者の瑤子は、バツイチ。息子は元夫がひきとった。世田谷の助教授殺人事件を、怪しくみえる妻が犯人のように見せる映像を番組で流す。これに関しては妻が自首。自分の感覚に自信を持つ瑤子。
弁護士が殺され、郵政省の春名から告発ビデオを渡される。取り調べの後の警察署前で2秒の笑顔を見せた麻生が犯人だと思う。瑤子の映像をきっかけに、家族も離れ、仕事も左遷に。謝れと瑤子につきまとう麻生。隠し撮りされたビデオも届き、瑤子の精神は不安定となる。盛り上がりー。
とうとう麻生を殺してしまうわけだが。盗撮ビデオは違うんだよな。
悪意ばかりで、読後感はよくないが、スルリとサスペンスはある。推理小説ではないけれど。弁護士殺人の犯人わかんないし。そこはいいのか?

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2018年11月03日

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ネタバレ

報道によって人生が狂わされた男と、彼の人生を狂わせた女の話とでも言えばいいか。
マスコミ報道の恐ろしさ。
報道する側は、もしかしたら自身の影響力を過少に評価しているのかもしれない。
そしてまた、優先すべき順位を誤っているのかもしれない。
実際に、報道によって人生を狂わされた人もいるかもしれず、小説の中だけでの話ではないように思う。
ミステリーとしては、犯人は読めたし、途中緊迫の部分が長すぎたように思う。
報道に対する問題提起という意味では素晴らしいが、途中読むのに少し疲れてしまった。

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2016年11月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

TV業界を舞台にした江戸川乱歩賞受賞作。TV業界の裏側を題材にしている斬新さと、ぐいぐい読ませる筆力は感じるものの、ミステリーとしてのプロットはいまいち。主人公の女性映像編集者の考え方や行動に共感もできず。。。結局のところ汚職や殺人事件の真相は明らかにされず、なんともすっきりしない作品でした。

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2015年12月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「ふたたびの恋」がとても気に入って、の流れでの野沢作品。
冒頭からスリリングで、要所要所非常に端的な切り込んだ表現は映像的だななんてのは穿った見方かも。

実際近くにいたら嫌な感じの主人公だが、この気持ちも分らなくも無くて、驕った自分にツケが廻ってくる感じは不愉快でもあり快感でもある。

最後の最後、あの一行はさすが。

でもそもそもの事件については、ちょっとあまいかな。

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2014年08月06日

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