あらすじ
東京・本所で、弓道、剣道、茶道を伝える〈坂東巴流〉。貧乏流派を継ぐのを厭い京都に出奔した過去を持つ嫡男・友衛遊馬を取り巻く人々も、様々な想いを抱えながら、ままならない毎日を送っていて――。佐保が出会った呉服屋に隠された「秘密」、翠と哲哉の恋模様、カンナと幸麿の娘・希の小学校サバイバル術、三十路を迎えた遊馬の日々。豊かな日本文化に育まれた人間関係の妙と粋に心が温かく満たされる珠玉の人情譚七編。
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Posted by ブクログ
再びこうしてまた会えるとは思ってもみなかった。
連載当初から同じ年を重ねて、新しい出会いもあれば、離れていってしまうひといれば、子育てに奔走しているひともいるし、働くようになったものもいる。そんな彼らを見るのはなんだかちょと照れくさいような、それでいて、変わらずにいてくれたことにどこか安心する。
何かあってもなくても、時間は流れ、ひとはその歩みを止めることはできない。自分以上の何者にもなれないし、自分以上のことは誰もできない。
躓く日もあるし、じっと動けないでとどまらないといけない日もある。そんなただ抗うことのできない流れに身を任せて歩んでいくより他ないこの日常の中で、また巡り合えたことは、ほんとうに、有難いことなんだと思う。
時間を隔ててめぐり合っても、出会った当初のことがまざまざ思い出される。振り返るときはあっという間で、自分がこんなところまで歩いてきてしまったことを想わずにはいられない。この次出会うことはもうないかもしれない。それでもまた会ってみたい、そんな風に思わずにはいられない