【感想・ネタバレ】明治の技術官僚 近代日本をつくった長州五傑のレビュー

あらすじ

電子版は本文中の写真の一部をカラー写真に差し替えて掲載。
幕末、先進技術を習得すべくイギリスに留学した若き長州藩士たちがいた。伊藤博文、井上馨、山尾庸三、井上勝、遠藤謹助の五人である。
出発点を同じくしながら、やがて有力政治家となった伊藤・井上馨と、官僚人生を全うした他の三人。
その運命を分けたものは何だったのか。
高度な専門知識により工業・鉄道・造幣の分野で活躍した山尾・井上勝・遠藤の足跡を軸に、近代国家形成期に技術官僚が果たした役割を明らかにする。

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Posted by ブクログ

「はしがき」の一行目から2017年12月に改修された東京駅前広場に戻って来た井上勝像についてか始まる本書は、長州五傑の中でも特に“明治の技術官僚”となった井上勝、山尾庸三、そして遠藤謹助にスポットを当てながらも、共に密航し帰国後政治家となっていった伊藤博文と井上馨との分岐点も含めた日本の官僚と政治家の分化を年代と共に追っている。明治初期の目まぐるしく変わる官職名などに翻弄されるが、それもまた幕末から明治・近代化への過渡期の姿であろうと思う。
鉄道という特定のジャンルや、特定人物に特化してであればそこそこ情報が手に入りやすい昨今にあり、筆者が日本の急速な近代化に関しての興味からの長州五傑が皆所属したことのある工部省という存在の研究に至り、技術者としての専門性と政治性の分岐点などを踏まえた近代化の基礎の展開についてが大変分かりやすくて良かった。

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2018年10月08日

Posted by ブクログ

新書の中ではかなり専門性が高く、予備知識がかなり必要とされる本だろう。伊藤博文、井上馨、山尾庸三、井上勝、遠藤謹助という幕末から明治にかけて活躍した技術官僚の生き様を追う作品。
まず本書でフォーカスされるのは伊藤・井上馨と他3人の違いである。前者2名が技術官僚に留まらずその能力を政治家に昇華させた原因としては何があるのか?また後者3人は技術官僚として政治とどのように関わっていったのかを詳細に分析している。技術官僚と政治の関わりについては、現代においても次官などのトップに技術系が就くことが少ない理由も示唆されており興味深い。
また政治家になれなかった3人も決して自らの立場に安穏としていたわけではなく、自らの目指すもののために専門性を高めていたこともよく分かる。
この本を読むと、立身出世のみが生き方ではないと言うことが本質的に理解できる気がする(まぁ後者3名も当時としては相当に出世してはいるのだが)
自分のやりたいことを突き詰めると言うのは大事と改めて感じた。

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2024年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

幕末期に英国に密航、のちに新政府のなかで活躍するいわゆる「長州五傑」(伊藤博文、井上馨、山尾庸三、井上勝、遠藤謹助)を通じてみた維新期の官僚・政治家論。とくに官僚類型として「事務官僚」「技術官僚」を措定して、後者の技術官僚という枠組みで長州五傑を論じているのは、タイトル通りである。

海外の先進知識を身に付けて帰国した彼らは「技術官僚」としてキャリアをスタートさせるが、それぞれまったく別の道を歩んだ。とくに政治家的資質を早くから発揮し、法制官僚・政治家へと転身していくのが伊藤。その点、井上は同じく政治家を指向しながらも最終的には首相にはなれなかった。

かたや工部省を中心に活躍した山尾。鉄道の父・井上勝は典型的な「技術官僚」としてその活躍の場を得る。遠藤謹助は大蔵省の造幣部門で官僚人生をまっとうするが、多分一般にはもっとも知られていない。しかし、個人的にはもっとも興味があった(ほとんど知られていないので)。

近代日本の官僚が試験によって登用されていく制度ができあがっていく頃に彼ら長州五傑もその役割を終えるのだが、官僚と政治家の関係性のバランス自体はその後も変化していく。とくに政党が大きな役割をもつようになって以降、日本の官僚はやはり独自の変化をしていくと思う。政党と官僚の議論に繋がっていくと面白いのではないだろうか。

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2021年02月03日

Posted by ブクログ

幕末に長州から英国に留学した長州五傑(伊藤博文、井上馨、山尾庸三、井上勝、遠藤謹助)の生涯について、明治の技術革新に焦点を当てて述べている。調査が詳細で、どちらかといえば政治家の方向に向かった伊藤博文や井上馨とその他の対比が面白い。参考になった。
「「公儀」とは、朝廷と幕府が一体となって統治された国内政治体制のこと」p22
「(井上勝と山尾)帰朝時期が送れたことは政治的にはマイナスであったが、専門性という観点では極めて大きな意味を持ったのである。長州藩と新政府で、その貴重な専門性を取り合う形となり、結局新政府が彼らを獲得し、政府内で重用されていくこととなる。まさに専門性が彼らの地位を押し上げたのである」p51
「慶応4年(1868)5月には兵庫県が設置されて、伊藤博文は同県知事に就任した」p64
「工部省の創設からの4年間は、長い官僚人生の中でもっとも山尾が輝いていた時期といえる」p137
「(明治6年(1873)琉球漂流民殺害事件による台湾出兵)大隈重信は当然に台湾領有を視野に駐屯を続け、場合により清国と開戦に及ぶべきとの強硬な意見を主張したのに対して、伊藤は当初の目的どおり報復完了により速やかに撤兵すべきとの意見をぶつけ、鋭く対立した」p154

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2019年05月05日

Posted by ブクログ

読み物として、単純に楽しめる。
内容的にも、「明治150年」や『西郷どん』のタイミングを除いても、しっかり丹念に事実を一つ一つ追っていて、専門を異にする当方にとっても、非常に勉強になった。

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2018年06月17日

Posted by ブクログ

結局、政治家に転身「できなかった」ことが強調されているように感じます。一方で、人の生き方という読み方をすると、興味深いものがあります。4人の足跡を、より詳しく知りたくなりました。

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2022年05月24日

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