あらすじ
弟の訃報が届いたのは朝食後すぐのことだった。車で何度も轢かれて殺されたのだという。保安官のヴィクターは、弟とは憎しみ合った末に疎遠になり、12年近く会っておらず、悲しみは湧かなかった。だが唯一の肉親となった弟の10歳の娘から、真相を調べてほしいと頼まれる。ヴィクターは捜査中の少女殺人事件に取り組みながら、弟の死の謎へも踏み込んでいくが……。まっすぐで聡明な姪との交流と真実を追う旅路が、孤独な日常を送るヴィクターの灰色の人生を、切なくも鮮やかに彩っていく。実力派作家が贈る、一人の男の再生を描くミステリ。/解説=三橋曉
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Posted by ブクログ
イギリスの作家、R・J・エロリーの邦訳2作目。一作目はかなり以前に集英社文庫から。
十数年も昔に喧嘩別れした弟が、何度も車に轢かれて殺された。妻にも先立たれ、無味乾燥の日々を過ごすヴィクターは、弟の葬儀で初めて弟の元妻、そして姪の存在を知る。姪から弟の死の真相を探ってほしいと頼まれるが、自分の郡区域で少女の死体が発見され。。。
孤独な男が、弟の死の真相を探りながら自分を見つめ直し、再生していく。ありがちではあるが、非常に良い作品。
特に筆致が素晴らしすぎる。
後で振り返りたくなる味わい深い文章。それでいて読みやすいため、厚さの割にすぐに読めてしまう。
終わり方が若干強引かもしれないが、個人的には今年どころか、今まで読んだ作品の中でもかなりの上位にくるほど好みな作品。大収穫でした。
Posted by ブクログ
アメリカ南東部、1992年を舞台に保安官が殺人事件を捜査する。
分厚いですが展開が早くて読みやすいです。
会話が多くやり取りがウィットに富んでいてずっと読んでられる。
主人公の1人視点で、これまでの人生で起きたことのせいか、他人と距離を置いて生きており、終盤まで心の中ではウジウジしてる感じがちょくちょくあって可笑しい。
殺人事件が2つ同時進行し、少女の殺人事件を調べつつ、弟の方は管轄外だし家族だから捜査は出来ないがそこに弟の娘が出てきて主人公に涙ながらに頼み、断れずにちょくちょく調べていくともう片方の事件と繋がっていて…?
92年の設定もあり、今の便利なツールがひとつも無いから移動に次ぐ移動と聞き込みをひたすら行う感じがいいです。渋い!
この小説を読んで一番良いなと思ったのは会話で、事件に関わってる人と会話しても内容が何かを仄めかしたり、示唆したりが多いです。
それの理由は後々わかるようになってる。
ラストの展開はビヨンドへ突き進むとんでもない血と暴力の描写がきて、このままハッピーエンドになるわけないと思ったらハッピーでした。
こういう海外小説でもハッピーエンドものって久しぶりで、この物語ならこの終わりが良いです。
Posted by ブクログ
こういう一歩一歩踏み締めて行く感じの物語は好き。
R・J・エロリー。邦訳では10数年前に『静かなる天使の叫び』があるのみとのことだが、聞いたことあるようなないような、読んだことあるようなないような。。
主人公ヴィクターのもとにある日、弟の訃報が届く。
アメリカ、ヴァージニア州、同じ州内のそう遠くない郡で保安官同士だった。
保安官になったのは弟の方が先で、追うような形で自身も保安官の職に就いた。
だが、その弟とは激しい仲違いの末、この10年近く言葉を交わすことすらなかった。
訃報にも、驚きはするものの悲しみや憤りは全く浮かんで来ない。
発見された場所、執拗に轢き殺された形跡から事件性のある死。知らなかった結婚と姪の存在。姪曰く、父は誰かに殺されたのだ、警察は当てにならないので真相を追ってほしい。
全く知らなかった弟の一面と対峙し、戸惑いながらもどこかやっぱり恨み節が先行し身が入らない感じが、淡白ではあるがローテンションな落ち着きを醸し出し、好きな語り口。
かたや自分の管轄する郡内の湖で発見された若い女性の遺体。薬物中毒の形跡と結紮痕が残る。
調べを進めて行くうちに州内の他の郡でも同様の若い女性が被害者となっている事件があるとの情報が矢継ぎ早に複数届く。
弟の事件から逃避するかのように一連の事件に力を注ぎ始めるが、いつしか弟の事件との繋がりが。。。
一見関係ない事件が繋がっているという、ありがちな偶然性には目をつぶるとして、事務所の受付係バーバラと真剣な内容を飄々と交わすやりとりや他郡の保安官達との熱い協力関係の構築の過程に、保安官の生き様の正しさを感じる気持ちの良い展開。
一章がとても短く構成されていてページ数の割にはさくさく進む感じもいい。
牽引力の割には、弟と何があったの?に対する書き込みの少なさや原題『the last highway』が暗示するという結末の強引さ(解説より)が自分的にはマイナス要素だったが、『静かなる天使の叫び』も読んでみたくなる(再読なのか?)ような好きな作風の作品。
Posted by ブクログ
・あらすじ
アメリカ ジョージア州が舞台。
ジョージア州ユニオン郡で保安官をしているヴィクター。
20年以上絶縁状態の弟が車に何度も轢かれて殺されたという報せを受ける。
デイド郡の保安官をしていた弟は何かの事件に巻き込まれたのか?
また同時期に薬漬けにされ縛られ殺害された10代女性の死体が複数発見される。
類似性から同一犯である事が判明し、群を超えた捜査を取りまとめることになったヴィクター。
二つの事件を捜査していく内にジョージア州内での陰謀が発覚していく。
・感想
600ページほどあったけど展開はゆっくりめ。
登場人物たちも直接的で決定的な情報は言わず(脅されてたり捜査を邪魔するために)、煙に巻くようなセリフが多かったから読者の自分もちょっとイライラした。
ヴィクターは人付き合いしてこなかったからジョージア州での陰謀について知らずに生きていけてたのかな?
ちょいちょい関係者に「おいおいまじかよ、知らないのかよ」みたいに世間知らずな感じで反応されてるのが面白かった。
最後の決着はわりと好みだった。
そして南部の人とのつながりの強さはやはり個人的には苦手だなーとアメリカ南部が舞台の作品を読むたびに思ったり。
登場人物が30人くらいいたし、舞台も3州7群に渡って展開されるのでお手製の地図に人物などを書き込んで相関図を整理する必要があった。