あらすじ
小説家の夫に題材にされ赤裸々に書かれることで奪われてきた妻の琉生は、ある日植物の種を飲んで発芽、やがて家も街ものみ込む森と化す──英訳され欧米でも話題の、夫婦の犠牲と呪いに立ち向かった傑作!
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Posted by ブクログ
作家の妻が発芽し、森になるところから始まる、幻想文学のようで、真正面から現実を突きつけた作品。
編集者ふたり、作家の不倫相手、作家、作家の妻…それぞれの、女性への呪い、男性への呪いをぐるぐるにまとわりつけていたが、森で気づき、あふれていく。
彩瀬まるさん作品の、登場人物の価値観や凝り固まったものが、ふとほぐれる瞬間が大好きなんですが、『森があふれる』では、特に引き継いだ編集者・白崎の夫との会話がすばらしかった。
主観による気付きに、対面した相手の表面だけでないものが作用した瞬間の化学反応…!
Posted by ブクログ
絵画を鑑賞したあとのような読後感。
主人公埜渡徹也をとりまく人物の視点で物語が進んでいく。
埜渡徹也は出版界ではおしどり夫婦として知られていたり、各登場人物からも第一印象として穏やかな印象を持たれているため、自分もずっとそのような柔和な雰囲気を持つ男性をイメージしていた。しかし後半の埜渡の視点での「結局のところ、女というのは錘なのだ。」という文章に驚いた。結局、埜渡も女性を下に見る白崎の夫や、家庭のことを妻に任せっきりにするような瀬木口と同じようなイヤな男性だったのだ。