【感想・ネタバレ】哀しいカフェのバラードのレビュー

あらすじ

さびれた南部の町で暮らすアミーリアは、言い寄る男に見向きもせず、独身で日用品店を営んでいる。ある日彼女のもとに背中の曲がった小汚い男が現われた。町中が噂するなか、どういうわけか彼女はこの小男に惚れこみ、同居してカフェを始める。そこにアミーリアの元夫が刑務所を出て帰還。奇妙な三角関係の行方は――。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

1917年にアメリカ南部に生まれ、23歳で小説家デビューした天才少女、アルコール依存症などで50歳で亡くなられた著者の1951年出版の作品。

村上春樹さんによる訳者あとがきで使われていた「異様性」という言葉がまさにピッタリな、いろんな異様性を背負う登場人物。

山本容子さんの銅版画がさらに印象強く人物像を浮かび上がらせる。

人間の、なめらかじゃない部分、なだらかじゃない部分、が強調されるような、特質。

見た目だけじゃなくて、個性的な性質。

ミス・アミーリアと呼ばれる、カフェ、の店主であり、それ以上にこの物語の中心となっている、アミリア・エヴァンズ。

「せむし」と称される、カズン・ライオン。登場時から不吉不穏。

_自分と世の中のすべての事柄との間に、生き生きとした結びつきを即座に打ち立てられる本能だ。

かつてミス・アミーリアが結婚した、マーヴィン・メイシー、初めから、この男がこの物語で問題を起こすことが記されている。

といいながらも、彼は後半まで実際には登場しない。

でも、彼の不在が彼が忘れ去られていることを全く意味せず、口にされることなく主人公やその他の人々、そしてその町の記憶のなかに強く残っている。

_…カフェの陽気な賑わいにとっての不吉な通奏低音としてそこにあった

読者にとってもこの通奏低音が初めから流されている。

村上春樹さんの訳者あとがきでは、同性愛の関係が語られているとも読み取られている。

小説を介して、一般の言葉で語られないものを描く。

それとは対照的にも、この物語の始まりと終わりに、囚人労働者の歓びある唄声が一瞬流される。

上手くいっているときがオチではない物語を語ること。

なんだろう、結局人は死ぬから?それでも生まれて死ぬまでの間に、

カフェでの賑わいのように、思い返すと人生の一瞬のようでいて実際に5年ぐらい平穏に続いていたりする、かけがえのない時間があって、

結局人と人はすべてを分かり合うことはできないし、いつか別れることになることも多いけれども、

だからといって知り合わなければよかった、というわけではない、なにか分かち合える時間と場所の重みがあったりする。

バラードという一つの物語の奏で方、かなー。

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2025年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

哀しいカフェのバラード

著者:カーソン・マッカラーズ
訳者:村上春樹
銅版画:山本容子
発行:2024年9月25日
新潮社


村上春樹が翻訳をして、山本容子が銅版画を描いている。まあ、これだけでも売れそう。1951年に書かれた名作らしいけど、村上春樹の翻訳ってどうなんだろう。これまで、レイモンド・チャンドラー以外であまり面白いと感じたものはなかった。今回も、うーん・・・って感じ。

長身で骨格と筋肉は男性並、腕力も強い女性、ひどい内斜視のアミーリアが主人公。彼女は父親から町のメインストリート(といってもわずか100メートル)にある建物を引き継いだ。元々は飼料や肥料、粉や嗅ぎ煙草などを販売する雑貨屋だったが、彼女はそこにカフェを開いた。また、3キロ離れた沼地に、郡で一番美味しいお酒をつくる醸造所を持っていて、自分で酒を造っている。最初はその建物で販売のみをしていたが、ある時、酒を買いにきた町の男たちに無料でつまみを出し、それまで許していなかった建物内での飲酒を許した。その日をきっかけに、そこはカフェになった。

彼女は19歳の時、ある男に好きになられた。その男は、町で一番の悪で、機械修理工をする22歳、マーヴィン・メイシー。アミーリアの前では、何も言えなくなっておとなしい。2年間、告白できなかったが、ついに結婚をすることになった。町の人たちは、なぜ彼女がそんな男と結婚などしたのか理解が出来なかった。

新婚生活に入ったが、彼女は初夜を許さなかった。夜になると寝室から降りてきてオフィスで仕事を始める。マーヴィンはプライドを傷つけられる。そして、最後はアミーリアに殴り飛ばされ、追い出される。結婚生活はわずか10日間だった。彼はその後、何軒かで銀行強盗をはたらき、人を殺して刑務所に。

アミーリアのもとには、ある日、小さなせむしの男が現れた。話を聞くと、アミーリアの母親は、その男ライモンの母親と腹違いの姉妹になるという(ライモンの母親が姉)。つまり、カズン・ライモンというわけである。カズン・ライモンはミス・アミーリアの家に住み着いた。そして、小さな体で人気者になり、彼の希望によって店には自動ピアノが設置された。

カフェは賑わった。ミス・アミーリアはカズン・ライモンを愛していた。しかし、彼女にとって不吉な情報が耳に入ってきた。マーヴィンが仮出所したという。彼は町に戻り、子共の頃に世話になった里親の家に勝手に上がり込む。そして、カフェにもやってきて、ミス・アミーリアと睨み合いつつ話すことなく、暫くすると帰って行くが、やがてなぜだかアミーリアの家(カフェの建物の2階)に住み着く。寝室が2つあり、一つはカズン・ライモン、もう一つはマーヴィンが使用。ミス・アミーリアは今のソファで寝なければいけなくなったが、体が大きいのではみ出してしまう。

カズン・ライモンは、マーヴィンの虜になり、彼の後を常について回った。奇妙な三角関係のスタート。

やがて、対決の日を迎える。アミーリアとマーヴィンが殴り合って対決する日だった。町の人たちが、そして遠方から車に乗った人々が、カフェに集まった。お互いに強烈なパンチが入ったところからスタート。両者、ふらつく。そして、殴り合いが進むと、レスリングに。この町では決着はレスリングでつかる。どうやらアミーリアが勝ちそうな雰囲気になった。マーヴィンの首をしめている。このままでは・・・というところで、カウンターの上に乗って見ていた小さなせむし男のライモンが、信じられないような距離を飛んでそこに覆い被さって助太刀をする。形勢は逆転し、マーヴィンの勝ち。

マーヴィンは店中を破壊し、奪い、去って行った。そして、カズン・ライモンも去って行った。カフェは再開することなく、ミス・アミーリアは外から板を打ち付けさせた。近くの店もなくなり、すっかりうらぶれた町となった。その建物は、時々2階の窓があいて、性別不明の内斜視の人間が外を覗く。

この小説で、主要な3人に会話がほとんどない。一体、この3人に何があったのか、何が起きたのか、町の人々同様に、我々読者にも分からないことばかり。最後の訳者あとがきを読んでも、同じようなことが書かれているが、村上春樹氏は欠落した人間ばかりだが、そこにあるのは愛で、愛が絡んだ展開なんだという。マーヴィンとカズン・ライアンには同性愛的要素もあるのだろうという。そして、「せむし」という表現についても、古典だからと使用に理解を求める記述もあった。



ミス・アミーリア・エヴァンズ:カフェの経営者
ライモン・ウイリス:カズン・ライモン、繁盛の功労者、せむし男
ファニー・ジェサップ:せむし男の母
マーサー:ファニーと腹違いの妹、アミーリアの母?

スタンピー・マクフェイル:赤ら顔の職工人
ミセス・マクフェイル:鼻にイボのあるお節介ばあさん
レイニー家の双子:
ヘンリー・メイシー:恥ずかしがり屋で臆病、
マーリー・ライアン:アミーリアがせむし男を殺したという噂の張本人、「三日マラリア」
ヘンリー・フォード・クリンプ:
ロッサー・クライン:

レイナー・スミス:頭のおかしな隠者

ジェフ:黒人の料理人、

モリス・ファインスタイン:ユダヤ人、引っ越した、なよなよした男の喩えに、

<19歳の時代>
マーヴィン・メイシー:機械修理工、邪悪だったが22歳の時にアミーリアを愛した
ヘンリー・メイシー:その弟
ミス・メアリ・ヘイル:彼ら兄弟を子供の頃に引き取った善人

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2024年11月29日

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