【感想・ネタバレ】極限団地―一九六一 東京ハウス―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

古きよき昭和の生活を体験してみませんか? 謝礼500万円をお支払いいたします――。リアリティショーの出演者公募で選ばれた二組の家族と番組スタッフは築60年の広大な団地に集結した。質素ながらも夢と希望にあふれる暮らし……のはずが、待っていたのは悲惨な環境だった。不倫、失踪、そして忌まわしい過去。押し寄せる惨劇に呆然必至の長編ミステリ!『一九六一 東京ハウス』改題。

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Posted by ブクログ

真梨幸子『極限団地 一九六一 東京ハウス』新潮文庫。

『一九六一 東京ハウス』を改題、文庫化。

お得意のイヤミスかと思えば、イヤミスの香りもする捻りに捻られた驚愕のミステリーだった。

本作に描かれる昭和30年代は、勢いのある時代だった。この当時、関東などの都会ではアパートやマンションみたいな巨大な集合団地に住むというのが一つのステータスだったが、地方では団地というとマッチ箱みたいな同じ造りの平屋の一戸建ての集合団地を指していたように思う。


2020年、テレビ番組で1961年、昭和36年の集合団地を舞台にしたリアリティーショーの企画が持ち上がる。出演者公募で選ばれた2組の家族が静岡にある取壊し予定の築60年の集合団地で3ヶ月間、昭和時代の生活すれば500万円が貰えるという夢のような企画であった。

出演者に選ばれたヤマダ家とスズキ家は、番組を面白くしようとする番組スタッフの策略やヤラセにより、悲劇と惨劇の中に巻き込まれていく。

古い家電を与えられ、テレビも無い生活に苦労するヤマダ家に対して、昭和36年当時の最新鋭の家電や家具などが揃えられ、優雅に暮らすスズキ家。番組を面白くしようとする番組スタッフはスズキ家の元ヤンキーの奥さんにヤマダ家の主人を誘惑するよう唆し、ヤマダ家の奥さんにはスズキ家の自称流行作家というパチプロの主人を誘惑するよう唆す。そんな中、ヤマダ家の小学5年生の長女が失踪し、団地内で変り果てた姿で発見される。

果たして、誰が女児を殺害したのか。疑いの目は過去に逮捕歴のあるスズキ家の主人に向けられるが、彼にはアリバイがあった。

そして、今回のリアリティーショーの舞台となった1961年にも小学6年生の女児が殺害され、容疑者の1人も殺害されていたことが明らかになる。

まるで60年前の事件をなぞるかのように容疑者の1人であったスズキ家の主人が変死する。次第に明らかになる現代と60年前に起きた事件の真相。


〜蛇足〜

昭和30年代半ばといえば、高度経済成長期の真っ只中で、今のように働き方改革だのと五月蝿いことを言われられることもなく、父親は夜遅くまで残業し、働けば働くほど収入が増えたようだ。当時、台所とトイレが共用の長屋に暮らしていた我が家は、バイパス道路の工事で立ち退きとなり、郊外の新興団地に新築建売りの一戸建てを購入することになった。

当時は空前の一戸建てブームで、希望しても、一戸建ては購入出来ず、くじ引きによる抽選だった。区画毎に抽選は行なわれ、なかなかくじの番号は呼ばれなかった。最後の区画となり、諦めて帰ろうとしたところ、くじの番号を呼ばれたということらしい。父親は昔からくじ運が良く、最後の最後に当たりを引き当てることがかなりあったらしい。

そんな運の良さは息子の自分にも遺伝しているようだ。自分も29歳の時に新築建売りの一戸建てを購入しようと思った。会社に歩いて通える、かなり土地代の安い新しい団地で4期に渡り90軒を分譲するということで、抽選だった。会社を休み、3期の抽選に参加したが全てハズレ。最後の4期目の抽選で27倍という倍率の中、当たりを引いたのだ。

本体価格750円
★★★★★

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2024年09月12日

Posted by ブクログ

何やら不吉な感じの表紙に惹かれて購入。

テレビの『リアリティショー』とは、整形とかダイエットの密着、アイドルオーディションからデビューまで、大家族の日常、無人島生活、警察24時とか…演出の無いドキュメンタリーのことである。

この小説はテレビ局の特別番組として、1961年(昭和36年)の団地暮らしを体験するというリアリティショーを製作することになり、出演者は2組の家族で、3ヶ月を団地で生活すると各500万円の謝礼がもらえるとのこと。このお金で新たな家族の幸せを掴もうと、すぐに応募者は決まり、不自由な暮らしを2組の家族は始めるが…実は番組を面白くさせるためのテレビ曲の思惑があった。そして負の感情が爆発すると人は優しさを失い、精神が壊れてしまう…また、このリアリティショーは団地で60年前に実際に起きた殺人事件を再現しており、新たな真相が…。 

1961年は東京オリンピック(1964)を控え、劇的に生活環境が変わり、『3種の神器』であるテレビ、洗濯機、冷蔵庫などが家庭に普及し、高度成長期真っ只中だった。ちなみに僕は1962年生まれだが、団地も庶民には憧れの住まいで抽選で入居が決まるような人気ぶりだったと聞く。子供の頃は団地住まいの友達が羨ましくて、放課後意味もなく団地の階段を登り降りしたり『ドロケー(泥棒と警察)』して遊んだりしていたなあ。近所との付き合いも普通にあり、作りすぎたカレーや肉じゃがをあげたり、晩御飯をご馳走になるとか普通にあったなあ。

現代の家庭はテレビが複数あり、電子レンジでの調理、スマホを使ったIoTの活用まで当たり前であるから、昭和30年代の生活なんて不便で仕方ないだろう。

表紙のイメージからはもっと『おどろどろしい』『怨霊』とか怖いものの話かなあと期待したので、ちょっと結末は個人的には拍子抜けでした。真梨幸子さんにしてはイマイチか。

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2025年03月02日

Posted by ブクログ

面白い!登場人物が意外と多いのと、複雑なストーリー・伏線なので一気読み推奨。自分は時間を空けてしまったので誰が誰だか後半よくわからなくなってしまった(私が悪いけども)

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2025年02月25日

Posted by ブクログ

マンガのような展開でドンドン読み進められました。

話が二転三転する展開、会話中心でするする読めます。

2時間ドラマや映画にすると、本よりも驚きが見えやすくて面白そうだなと。

筆者の作品の中では死んだりするけど、ポップなストーリーでした。

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

結末は予想外。
途中、しょうもないB級だったかと思うけどそこから意外な展開になった。
読後の感覚はイヤミスならではかな 笑

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2024年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1961年という時代を団地で完全再現し、昭和の生活をリアリティショーに出演し、二組の家族が体験するという·····それが様々な惨劇に見舞われ、忌まわしい過去に繋がるという。不気味な雰囲気で展開がコロコロ変わって何が何だか、これぞイヤミス!

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2024年10月06日

Posted by ブクログ

面白いストーリーなのに、二転三転を意識しすぎているせいのか、最後に詰め込みすぎている
そのせいで積み上げたストーリーが希薄に感じてしまいその点が残念。

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2025年08月24日

Posted by ブクログ

相変わらず文体が読みやすかった。
話が二転三転するところも良かったが、結末はさすがにご都合主義すぎたかな、という感想。
フィクションと思えば、作中にあったように、これも1つのエンターテイメントか。
つまり何?と頭がこんがらがってしまうところがあったが、面白かった。
同じ募集要項で集められたはずなのに、いざ生活を始めると浮き彫りになる2家族の貧富の差。
貧富の差とは、人間を最も醜い姿に至らしめるものだと思う。
羨ましい形があったところで、手に入れたい物があったところで、ならそこに近づくにはどうすれば良いか、と実直に努力を積み重ねる人は少ない。
勿論少ない、というだけで存在はする。
しかし現実は、ただ何もせず自分の境遇に嘆くばかりで、妬み嫉み僻むことしかしない人間が多い。
昨今問題となっている「無敵の人」などその代表例と言っても過言ではない。
実に人間臭く、醜悪だ。
この作品は途中から時効となった殺人事件へ話の軸が飛び、最初の「一九六一 東京ハウス」という番組からは離れて帰結してしまったが、もう少し番組を軸にしてリアルな人間模様を見たかった。

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2025年05月17日

Posted by ブクログ

やまだ家とすずき家の二組の家族が公募で選ばれ出演するリアリティショー。
色々な伏線回収の末、それにつながる結末。
度々読み返しました。

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2025年04月27日

Posted by ブクログ

リアリティショーで築60年の団地に住むことになった2組の家族。会話中心なので読みやすくエンターテイメントを読んでいる感覚。設定はおもしろいと思ったけど後半は後付け感が否めない。

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2025年01月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

イヤミスという言葉がいつからあり、誰が最初だったのか知りませんが、私の中ではやっぱり「元祖イヤミスの女王」といえばこの人です。

当時こんなにもみんながこぞって入居したがった団地なのに、トイレットペーパー騒動をはじめとしてなんだかよろしくないイメージもついて回る。阪本順治監督の『団地』(2015)を観たときも、藤山直美と岸部一徳を取り巻く環境を少し恐ろしく感じたものでした。

どんな暮らしであれ、晒される状況は怖い。そしてなんとか視聴率を取ろうとして煽る偽りのリアリティショーも怖い。この表紙の不気味さそのまんまの中身です。

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2024年09月26日

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