あらすじ
ロンドンの集合住宅に住む女性モリーのもとへ、娘のように親しくするエラから電話がかかってくる。駆けつけると、エラのそばには死体が転がっていた。見知らぬ男に襲われ、身を守るために殺してしまったのだという。警察の介入を望まず、死体を隠すふたり。しかしその後、モリーは複数の矛盾点からエラの「正当防衛」に疑問を抱く……冒頭で事件が描かれたのち、過去へ遡る章と未来へ進む章が交互に置かれ、物語はたくらみに満ちた「始まり」と、すべてが暴かれる「終わり」に向けて疾走する。英国ミステリ界の俊英が放つ、衝撃と慟哭の傑作。/解説=三橋曉
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Posted by ブクログ
最初から死体があるタイプのミステリー。主人公とおぼしき女性(エラ)が正当防衛で人を殺し、その親しい友だち(モリー)が呼び出され、死体隠匿を手伝うことになる(ここまで作品紹介にある内容)…そして、モリーには死体について、エラと死体について疑問が残る。
なので、何も悪くないのに死体隠匿を手伝ったことで共犯者になって死体が見つかることに神経をとがらせながら、疑問を抱えていくモリーもある意味主人公である。読み進むにつれてモリーの側についていった。
犯人は誰とかいう正統派ミステリーではないので、どういう心構えで読んでいけばいいのかわからず戸惑った。それが500ページ超えであるというのは気鬱でもあった。現在の話と過去の話が並行して、なんでそんな書かれ方をしているのか最後のほうまでわからなかった。特に過去の話は、どんどん遡っていき、それぞれの話をうまくつなげてとらえられるのが難しかった。
しかし、エラの過去、モリーの過去、エラとモリーの関係性などひとつひとつ興味深く、モリーの現在の不安に一緒になって心配する。モリーの疑問や不安がどのように解決していくのかを知るのが楽しみになった。
最期が壮絶。エラに関してはまったく同情しないが、モリーがそんなのってあんまりではなかろうかという感想。まあでもこれがHow It Ends、終着点だなと腑に落ちたというのはあった。
少し難しかったけど読み終わってみるとおもしろかった。
Posted by ブクログ
創元社様先読みキャンペーンにて読ませていただきました。社会運動に取り組む2人の女性の前に死体が。過去と現在が交錯しつつ、徐々に2人の姿があぶり出されていきます。ラストの展開に驚かされたあと、更に登場するスリリングな場面にのめり込めました。新たに注目する作家さんの登場に喜ばずにいられません。イギリスで起きている問題とそれに対する社会運動のリアルも知ることができました。こうした切り口の作品は初めてで、いまを知ることのできるミステリの醍醐味も味わいました。
Posted by ブクログ
2人の視点で物語が進むが、先入観からエラメインの話だと思ってしまった。でも、殺人事件を介した2人の女性の関係性の話で、信頼、信頼の揺らぎ、裏切られた時の反応、とても悲しい話だと思った。
未来に向かって時系列通りに進むモリーの視点では、エラに対して少しずつ疑念が生じていく過程が丁寧に描かれていく。時間を遡るエラの視点では、第一印象で感じたエラの印象と違和感の背景が徐々にわかっていく。なんかいびつさを感じる人との関係性とか章を重ねるごとに少しずつ違和感が大きくなって納得に繋がっていく。話の構成、進め方がすごいと思った。
この作家さん、今の所他の話はシリーズものっぽいから読むかどうか悩み中だけど、単発でなにか出たらまた読んでみたいと思った。
Posted by ブクログ
ロンドンの社会問題を背景に、社会運動家のモリーとエラが抱え込む殺人トラブル。
モリーの視点で進むストーリーに対して、エラの視点のストーリーはそもそもの「発端」に向けて過去へと遡る。
話が進む(遡る)につれて若き活動家と思われていたエラの謎めいた生活が徐々に明らかに…という異色の構造をもつ作品。
人間関係が複雑で、これ、誰だっけ?ということも多々ありながらも後半核心に迫ってくるあたりからは一気に読めた。
若くて少々浅はか、かつ小狡いエラと、自分の生きる意義であった活動に対して自分の体力、気力の衰えを自覚し、孤独と心細さに哀しむモリーの対比が何とも。
最後まで自分のことを与し易い相手と舐めてかかっていたエラに対して
モリーのトドメの反撃がお見事。
Posted by ブクログ
同月に出た『極夜の灰』なんかより楽しめました。出だしから嫌な女達(活動家ね)が出てきて、憂鬱になったが辛抱強く読んでいると最後に衝撃が・・・。これがなければ無星でしたよ。左翼や弱者のためにと信じて活動しているような人間が苦手な人には勧めません。
Posted by ブクログ
二人の視点で過去と未来を交互にえがく、死体を隠した二人の女性はどんな終わりを迎えるのか… #終着点
■あらすじ
エラは取り壊し予定が近づくマンションの一室で男の死体を発見した。友人のモリーがその部屋を訪れると、相談して死体をマンションのエレベーターシャフトに隠すことにした。死体はじきに見つかってしまうのだが、果たして彼女たちはどのような終着点を迎えるのだろうか…
■きっと読みたくなるレビュー
サスペンスフルでドエンタメな展開かと思いきや、思った以上にじっくり読ませる社会派小説。心情描写がきめ細やか表現されたミステリーで高品質な文芸作品でもあります。
本作でメインの謎は、死体で発見される男の正体と殺された理由。これが読んでも読んでもさっぱりわからんのよ。というのもこの作品、少し特徴的にストーリーが展開されるんです。
モリーの視点では、男の死体を発見してから、それ以降の物語が語られる。一方エラの視点では、男の死体を発見してから、それ以前の時間をさかのぼる形で物語が展開されるんです。この未来と過去に向かう視点が交互に綴られるという、なんとも凝った構成なんですよね。
しかも結構後半まで読んでも、真相がよくわからない。いや真相どころか、手がかりすらフワフワしていて、この物語終着するの? って感じなんですが、これが深淵を覗いた結果、想像できなかったラストを迎えるんすよ… もちろん詳しくは言えないので是非読んでみて下さい。
この主人公のエラとモリーですが、二人ともかなり闇まで心情描写や社会的背景が語れます。しかも豊潤な表現力でじわじわ読み手に浸透してくるんですよ。でも決して熱く痺れるという情熱的な世界観でなく、クールで冷静沈着。語り口としては凄く淡々としてるんすよね。大人な男女関係もけっこうあるんですが圧倒的に無味乾燥。愛情よりも欲しか感じない品のなさが、むしろ味わい深かいんです。
そして本作、イギリスの社会的暗部が垣間見えるところも興味深かったですね。かなり鋭角な構成だったので、まさかこんなにも社会派ミステリーとは思ってもみなかった。
イギリスの政治や経済社会の背景、それに対する世間の反発。違う環境における「ひとり」と「ひとり」の女性がどういった意識で今を生きているのか。読み終わってみると、いかに本作が重力のある小説であったか理解できます。
楽しませる工夫をしつつも、重みのある力強い作品でしたね、面白かった!
■ぜっさん推しポイント
やはりエラとモリーの関係性、人間性が一番の読みどころです。読んでいけばすぐわかるんですが、二人がどういう人間なのかってところが一番のミステリーなんですよね。
序盤は二人とも有り体なキャラかなーと思ってるんですが、読んでるとなんかズレてくるんですよ。決して分かりやすくないのも特徴で、違和感が増えてくるような感覚なの。このゾワゾワした感触が不思議だったな~
うま味たっぷりのミステリーが好きな方に、ぜひチャレンジしてほしい一冊でした。
Posted by ブクログ
試み自体は評価できる。
ただ、意外性はあまり感じられなかった。詳細が次第にわかってきたものの、想定の範囲内というか……。
イギリスものは好きだが、この手の倒叙(っぽい)ものはあまり好きではないということが実感できた。
Posted by ブクログ
とある集合住宅の一室で、一人の男性の死体を前に向かい合う二人の女性。
なぜ、何があったのか?
そこから、若いエラの視点では過去へと話が遡り、年上のモリーの視点では、未来へと話が進んでいきます。
凝った構成で、緊密な展開。
二人は、社会運動家。
集合住宅の取り壊しによる立ち退きに抗議して、住民に協力しています。
高層ビルが既に目の前で建築中という状態なので、諦めて出ていった人も増えてきました。
若いエラは、成り行きで反対運動のシンボルのようになっていたのですが…
モリーは、長年様々な運動に携わってきましたが、年齢的な衰えを感じ、悩んでもいます。
この件で知り合ったエラには、力になりたい感情を抱くのですが?
パワフルで魅力がある、若い女性はどこへ向かうのか。
イギリスの社会運動の現実にも触れる、辛口な内容。
誰にでもオススメというのではないけれど~
読みごたえはありました☆
Posted by ブクログ
「見知らぬ男性から襲われたので正当防衛で殺してしまった」と主張する女性が、仲間の女性と結託して死体を隠匿し、そこから現在進行の章と過去に遡る章とが交互に語られ、後味の悪い結末に辿り着く。
話が過去に遡っていくという構成なのは面白いし、そうでないと「被害者の男性は誰なのか」という謎について早々に見当がつく可能性があるからということも理解できる。
好感を持てたり感情移入ができる登場人物がいなかったので、「読みにくいサスペンス」という印象だった。
Posted by ブクログ
1人の男性の死体を前にして、2人の女性が対峙する。そこから片方は未来へと、片方は過去に遡って語られる。男性は一体誰なのか。次々と出てくる人物たちにも詳しい説明はされず、2人の女性は常に不安定で猜疑心の塊。特にエラは言っていることが出まかせで危なかっしく信用できない。2人を全く好きになれず、一体何が言いたいのか?どこへ行きつくのかと、読み進めるのが少々しんどかった。矛盾だらけの活動家たち、男性優位を振りかざした警察の権力、どちらも気分が悪かったが、生きづらい女性たちを描いた、辛口シスターフッドの話だったんだな、と最後はいろいろ終わってホッとした。