あらすじ
人文学の論文執筆には、基礎となる習得必須の知識と技術がある。しかし、それを現在の大学教育はうまくカリキュラム化できていない。どんな条件を満たせば論文は成立したことになるのか、どの段階でどの程度の達成が要求されるのか、そしてそのためにはどのようなトレーニングが必要なのか。そもそも、なんのために人文学の論文は書かれるのか。期末レポートからトップジャーナルまで、「独学で書く」ためのすべてを網羅する。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
大学の卒論以来やってきていなかった論文と向き合う必要が出たため手にとった。
論文の基本が全く分かっていなかったことを思い知りつつ、読み解き方、論文を論文たらしめるものが何か、を教えてくれた一冊。
これから論文を書いていくが、おそらく何度も読み直すことになると思う。読んで良かった。
Posted by ブクログ
流行りの本なので、読もうとと思っていたがなかなか読めずにいた。読んでよかった。
この本から学んだのはアーギュメントの概念、パラグラフの概念で、それが今まで受けてきた説明とは異なった。
これまでは私はパラグラフライティングを学ぶ立場でも教える立場でもあるのだが、AREA, OREOという構成で教えていたし、学習者としても学んでいた。しかし、このアプローチだと互いに意味的にマッチしないことがある。それぞれ独立したものとして、書き手が書いてしまい、トピックは関連したものの、どこか理由が噛み合わない。一貫性に問題があるライティングになりがちだった。
しかし、この考えを知っておくことで、一貫した英文をそれなりに書くことができるのではないかと思っている。機会があれば高学年で実施したい。
なお、私はこの書籍を探究の時間で紹介した。アーギュメントの考えは論文講読で必要な考えだと思う。
Posted by ブクログ
研究者ではなく、論文を書く予定のない自分のような人間でも大変面白く読めた。
先に論文集『ナラティヴの被害学』の方を読んだので、その種明かしをしてもらった感じ。聞き慣れない「アーギュメント」が最重要なキーワードだったのか。
・論文に問いは必須ではない、アーギュメント(主張)こそが大事。あとはその論証。
・掲載誌のパラグラフを解析して研究すべし。
・結論はアーギュメントを超越してよい。
・論文が書けた後どうする?人文学の究極の目的は暴力の否定である。
Posted by ブクログ
原理編、実践編でおなかいたいぃ…と思ってたら、第9章で思いもよらずうるッときた。「人文学の究極目的は暴力の否定である」と書き切れる本がこの世に何冊あるのか。抱きしめたい。
Posted by ブクログ
この本自体は、出始めの頃にTwitterで話題に上がっていたのを見て、ずっと気になっていた。
そして、そこから少し経ったときアウトライナーの使い方という動画を発見し観てみると、わかりやすく、喋り方も好きで見入ってしまった。
詳しく調べてみるとこの方が『まったく新しい アカデミック・ライティングの教科書』を書かれている方だとわかり、ついに手を伸ばした。
自分は理系の学生であるため、人文系の論文がどういうことを目指しているのかというところを知れてとても面白かった。
さらに、自分の論文を書くために必要な考え方をたくさん学ぶことができた。
この本の存在が、そのままこの本に書いてあることの裏付けになっているのがかっこいい。
Posted by ブクログ
論文を書くような大きな仕事は、そのレンジを把握できないため、中々一歩を踏み出すことができない。だが本書はその縁取りを露わにし、我々の背中を押してくれる。
この構造化の方法は様々なものに応用できる。国語の現代文読解にしても、物語を作るにしてもである。もちろん一辺倒の方法だけを信じ切ってやっていく危険性はあるが、ある視野を手に入れて物語を観察することと、その視野を相対化して再評価することを忘れてはならない。
Posted by ブクログ
まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書。阿部幸大先生の著書。アカデミック・ライティングは難しい。アカデミック・ライティングは奥が深い。頭が良くて成績の良い学生でもアカデミック・ライティングを身につけていないことが多い。アカデミック・ライティングを身につけるだけで評価が上がることだって多い。アカデミック・ライティングを学べる良書。
Posted by ブクログ
具体的に論文やレポートの書き方を教えてくれ、さらに、人文学とはなんのためにあり、研究とはなんのためにするものなのかまで語りかけてくる熱い内容。今年の研究発表は、この本を適宜参照しつつ取り組んでみようと思います。
Posted by ブクログ
人文系の論文やレポートを書く人のための、アカデミック・ライティングの教科書。ちょっとした演習を途中にはさみながら、読んでもらえる論文を書くコツを示している。若者(?)には読みやすい文体で、スラスラ読むことができた。
それだけでなく、人文学の研究と世界、研究と自己とのつながりについても考察を促すよう述べており、論文執筆のモチベーション強化(あるいは維持)を勧めている。こちらの方もこの本の価値を高めているように思う。
Posted by ブクログ
すごい。教本なのに面白かった。
アカデミックライティングの教本を他に読んだことがないため比較はできないが、非常にわかりやすく丁寧で論文執筆へのハードルが下がったように感じる。演習編には解説も含まれているため取り組みやすく、パラグラフ内の一文一文がどのような役割を持っているのかを考える作業はとても楽しい。
個人的には9章・10章の内要に感銘を受けた。研究の存在意義、自分はなぜ研究をするのか、それらの答えを持つことは研究を行う者として大切なことであり支えともなるんでしょうな。
Posted by ブクログ
まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書
著:阿部幸大
アカデミック・ライティングとは、論文を書くための方法論である
また、論文とはなにかを、何度も深堀を繰り返し、ブラシュアップする
その本質を明らかにするための長い旅のような書である
<アーギュメントをつくる>
■ルール1:論文は、アーギュメントをもたなくてはならない
定義:アーギュメント:論文の核となる主張内容を一文で表したテーゼである
定義:テーゼ:論証が必要な主張である
「論証を要求する」を満たすためのシンプルな方法論とは、アーギュメントを、「この論文は~を示す」という構文で書くことである
■ルール2:アーギュメントは、論証を要求するテーゼでなくてはならない
■ルール2´:アーギュメントは、反論可能なテーゼでなくてはならない
定義:アーギュメントを鍛える。それは、「AがBをVする」という形式の文に落とし込むことである
これを他動詞モデルとよぶ
・論文とは、あなた個人の主張を提出し、それを論証する責任を負う
読者は、あなたのアーギュメントにかならずしも反論しないが、ともかく、そのアーギュメントが十分に論証されたと考えるまでは、その意見を受け入れることはない
・論文とは、アーギュメントを論証する文章である
<アカデミックな価値をつくる>
・アーギュメントの価値の内実を正確に言語化する必要がある
■ルール3:アーギュメントはアカデミックな価値を持たなくてはならない
・論文とは、アーギュメントを提出し、それが正しいことを論証する文章である
・論文には問いが必要である。
第1:その答えがアーギュメントと呼べる主張になっていること
第2:そのアーギュメントにアカデミックな価値がないかぎり、論文は論文として成立しない
・だれも話していないトピックについて、イキナリアーギュメントを提出してもダメである
・他人の意見を引用しないかぎり、自分のアーギュメントにアカデミックの価値があるということを示すことが構造的に不可能である
・論文はつねに、一種の反論として書かれる
■ルール4:アカデミックな価値は引用と批判によってつくられる
<パラグラフをつくる>
・論文には、イントロ、本文、結論とうい3種のセクションがある
・パラグラフは論文執筆においてもっとも重要な単位である
・論文は飛躍せずして、飛躍しなければならない
飛躍をともなうアイデアでなくてはならないが、その飛躍は論理によって解消されなくてはならない
定義:パラグラフの重要な点
1)一つのパラグラフは1つのトピックについて書く
2)パラグラフは冒頭のトピック・センテンスとそれを支えるリポート・センテンスからなる
・トピック・センテンスとは、小さなテーゼである
定義:トピック・センテンスにおかれるテーゼを、パラグラフ・テーゼ、と呼ぶ
■ルール5:パラグラフは冒頭にパラグラフ・テーゼを持たなければならない
・飛躍のないもの、それは、ファクトと、ロジックである
・パラグラフ・テーゼをつくるさい、メモに書かれているファクトをロジカルに組み合わせれば論証できそうなテーゼを捻り出せばよい
・パラグラフとは、パラグラフ・テーゼを事実と論理によって論証する単位である
<パラグラフを解析する>
・執筆力よりも読解力のほうが高い。ようは、書けないやつは、よめてもいない
・わたしたちは、書いたそばから、それを読者として読み、出来不出来をジャッジして、修正しながら、書き進めていく
・自分で良く書けているとおもった文章を実力者に批判される、といった経験を積むことが極めて重要になる
・論文を、書くまえに、もっと分析的な読解力を身につける必要がある
定義:プラクティカルなリーディングの方法論、テクニックの総体を、アカデミック・リーディングと呼ぶ
・初学者の文章は、
1)パラグラフの平均的な長さが短く
2)パラグラフの総数が多い
・パラグラフが短いということは、そのパラグラフで提示する、パラグラフ・テーゼの論証が不十分であることを示唆している
・段落が多いということは、ひとつの論文で提示する、パラグラフ・テーゼの数が多すぎるということを示唆している
・このためには、もっと長いパラグラフを書ける必要がある
・ハイヨのパラグラフ解析の手法は、センテンスを抽象度に応じて1から5までのレベルで分類する
レベル1とは、完全に純粋なデータ、エビデンスであり、抽象度ゼロのファクトだ
レベル5とは、もっとも抽象的で、一般的で、理論的な言明である
・抽象度によるパラグラフ解析は、どのレベルの記述にどのくらい字数を割いているかを、数値化、可視化する作業にほかならない
<長いパラグラフをつくる>
・プロの査読者は論文を評価するとき、冒頭を読むだけで採否をほとんど決定している
・ここでの困難は、遭遇した情報を記録して文章に盛り込むという一連のプロセスにある
細部を積み重ねてゆくことでこそ、一文一文のもつ情報量が増える。
文章全体の重厚さは増し、あなたの文章は、そのトピックに精通している専門家のそれへと接近していく
それはつまり、読者の信用を生むということにほかならない
・トピックについて、メモをとっている過程で、いままで、スルーしていたがパラグラフに盛り込める可能性のありそうなデータを片っ端からメモする
・レベル4の記述は、ファクト・観察・解釈からレベル5のテーゼへの接続、つまり、具体から抽象への接続の役割を果たす
文章がファクトの羅列ではなく、筆者の思考のプロセスであるという印象をうみだす
・実際に、パラグラフを執筆していて、もう一文必要な気がするが、なかなか出てこない、というときは、たいてい、レベル4の記述で迷っているケースである
・当該パラグラフの論証が十全になされたかどうかという読書の印象を、その一文は大きく左右することになる
・調べものをしながら、どのようなメモをとっているのか、どういった細部について調べたのかなども、参考になるかもしれない
・パラグラフを書けるかどうかが、論文を書けるかどうかを左右する
<先行研究を引用する>
・論文はかならず、引用を必要とする。先行研究への言及は構造的に必要不可欠なのだ
・読むことと、引用するすることには距離がある。読んだからといって、引用できるわけではない
・論文を読む、とは、まずなによりも、アーギュメントを発見することにほかならない
アカデミックな文章においては、内容を読むだけではなく、テーゼを発見しなければならない
・そのためにどうするか
まず、アブストラクト(要旨)がついていたら、それを精読してほしい
アブストラクトがついていなければ、第1に確認するのは、イントロダクションであり、第2に確認するのは、コンクルージョン(結論)である
・アーギュメントがなんたるかを正確に理解していなければ、そもそも、アーギュメントに該当する箇所を読んでも、それがアーギュメントであると判断することができない
・アーギュメントを見つけたら、自分の言葉で、パラフレーズし、それを書き記せ。それは、どういう論文だったか、という問いに、一文で答えを出すための読解方法だからだ
・先行研究をみずからの議論に組み込むという目的の達成にあたっては、本文を通読する必要などまったくない
・研究書を手に入れたら、最初に読まなくてはならないのは、裏表紙である、裏表紙には推薦文と、著書自身がかいたアブストがある。ここから、書籍全体のアーギュメントを抽出しよう
<イントロダクションにすべてを書く>
・論文はイントロダクションがすべてである。
1)イントロダクションにはその論文でやることのすべてを書かなくてはならない
2)査読者はイントロを読んだ時点でその論文の評価をほぼ決定してしまうので、イントロですべてきまってしまう
・イントロがダメならその論文はダメだといえる。
・イントロの3点セット
アーギュメント
アカデミックな価値
シノプシス(第1節で、Aを述べる、第2節で、Bを述べる、……)
・シノプシスは、イントロの最後に置かれる。シノプシスに1パラグラフを書くことを推奨する
・アーキュメントを詳述するパラグラフを1つ用意する
アーギュメント・パラグラフでやることは2つ
1)アーキュメントの真意を伝えるために必要かつ十分な周辺情報や文脈を盛り込む
2)抽象度や視点を変えながら、アーギュメントを何度か、パラフレーズする
・アーギュメント・パラグラフと、アブストは、ほとんど同じものである
・イントロダクション冒頭についてのポイントは親切さである
過剰なくらいていねいな説明を盛り込み、親切な導入を書く
それは、この論文は面白そうだと思ってもらうこと 親切な冒頭のアプローチは、大きな見取り図からのズームインである
・冒頭のもうひとつのアプローチ、意外な冒頭は、驚きだ。読者の意表をつくことでその心をつかむ。そのアプローチは、細部からはじまってズームアウトしていく
・イントロは、冒頭部分、先行研究パラグラフ、アーギュメント・パラグラフ、シノプシス・パラグラフの4つの要素からなる
<結論する>
・コンクルージョン(結論)の重要度は、イントロや本文よりも低い
・結論とは、議論の要約ではない
要約:議論の全体を圧縮したもの
結論:総和の外縁を閉じることで議論を終わらせること
・コンクルージョンはイントロのアーギュメントよりも高い位置にある
・コンクルージョンでは、その論文内で、論証が不可能かつ不必要な大アーギュメントによって、イントロのアーギューメントを超える
・結論ではあなたの議論の応用可能性に言及せよ。
目次
はじめに
原理編
第1章 アーギュメントをつくる
第2章 アカデミックな価値をつくる
第3章 パラグラフをつくる
実践編
第4章 パラグラフを解析する
第5章 長いパラグラフをつくる
第6章 先行研究を引用する
第7章 イントロダクションにすべてを書く
第8章 結論する
発展編
第9章 研究と世界をつなぐ
第10章 研究と人生をつなぐ
演習編
あとがき
ISBN:9784334103804
出版社:光文社
判型:A5
ページ数:176ページ
定価:1800円(本体)
2024年07月30日初版第1刷発行
2025年01月20日初版第8刷発行
Posted by ブクログ
恥ずかしながら50代も半ばを過ぎてから大学院で学ぶべく、入学は許可されたものの、来春から途方にくれないかソワソワしていたところに日経新聞に紹介されて急いで手に取った。著書の中で参照されている「論文の教室」を支えに取り組もうとした甘い考えが早めに打ち砕かれて良かった一方、本書は一度では消化しきれなかった為、繰り返し精読をしたい。
Posted by ブクログ
一部でもてはやされていたミステリ方面は一切ピンときませんでしたが、論文を書くにあたって必要な構造の部分を明快に紐解いていて、「人文学の研究の目標は世の中を良くすること」という話も大変よかったです。ちょっと論文書きたくなりますね。
Posted by ブクログ
私は大学院に通っている。前期課程(修士課程)の1年生なので、修論を2026年の1月頃までに書き終わって提出し、アクセプトされれば修士号を取得できることになる。
大学院生とは言っても若くはない。大学を出た後、企業に長年勤め、引退した後で勉強し直そうと思って大学院に入学したのである。
修士論文を書くことは簡単な話ではない。論文のテーマを決め、リサーチクエスチョンを決め、先行研究を調べ、整理する。研究室の教授の指導を受けながらではあるが、それは手取り足取りというわけでもなく、ある程度、自分でやり方を考えながら進めていくしかない。
これまで身を置いていた会社の中でも、何かを主張することはもちろんあったが、企業の中で何かを主張するために資料を作成することと、アカデミックな論文を書くことには大きな違いがあり、修士論文を書くことは、これまでの経験とは、かなり異なったチャレンジである(もちろん、これまでの経験が生きることも多いが)。
本書は、その「論文の書き方」を、かなり実践的に解説したものである。
【引用】
おそらく本書を手に取る人は、レポートや論文の書き方がわからなくて困っている人、あるいはすでに何本かは書いてきたものの、よくわからない点や改善したいと感じている点も多く、これからもっと良いものを書きたい、そう願っている人が多いはずだ。本書ではその悩みを解決するために必要となる条件を、徹底的に要素分解し、極限までプラクティカルに解説する。
【引用おわり】
筆者が「極限までプラクティカルに」と言っているだけあって、論文作成をどのように進めていけば良いのか、実際にどのように書いて行けば良いのか、について、なるほど、と思えるような指摘が山盛りで、とても役に立つ本だった。
それは、確かに役に立ったのであるが、しかし、この本で最も印象的だったのは、「第10章 研究と人生をつなぐ」の部分であった。
【引用】
自分はなにを「言いたい」のか、どんなことを主張する研究者として生きてゆきたいのか。(中略)ほかならぬあなた自身が「自分はこの研究をやっていて正解なのだ」という手応えをもって研究を継続してゆくために、ぜひ向き合うべき問いなのだ。
【引用終わり】
要するに、「自分は何のために研究を行っているのか」「自分の人生にとって、研究するとはどういう意味を持つのか」ということを問うことは(も)重要だよ、ということである。
自分自身のことを考えると、会社を引退した私の年齢になってから、「研究者になる」道を目指すことは現実的ではなく、私が大学院で勉強している、研究しているのは、単純に「そうしたい」からというだけが理由である。人事管理関係の研究室に所属し、これから1年強かけて、人事管理関係の修士論文を書いていくことになる。どのようなテーマを選択するのかはだいたい決めているが、そのテーマの問いを発することは、自分自身にとって、どういう意味があるのか、ということを考えることは、あなたの人生にとっても無駄なことではないよ(というか、実際問題重要なことだよ)ということを教えてもらった気がする。
Posted by ブクログ
アカデミアってこんなことを習っているんだ
(いや習わないから皆困っていてこ本が出て話題なんだ)
独学者としてはほぼ手に入らない情報が安価に手に入れられる素晴らしい世
Posted by ブクログ
学生時代、ゼミの先生からもらった、たった一言のアドバイスをもとに、四苦八苦しながら書いた卒論。その時、自力で試行錯誤した方法がここにあった。
たった一言、とはいえ、先生のアドバイスはなかなか的を射ていたのだと、数十年経ってあらためて感じた。ちなみに先生は、その後京大へ移り、教授になられた。
「書けないやつは読めてもいない」というのは本質で、書くためにはまず精緻な読み方を体得しなくてはならない。それにはなかなかの時間を要するが、逆にそこをしっかりやれば、その後の書く作業は、飛躍的に上達する。
本書ではその具体的なやり方がドリル形式で解説されるのだが、例文として著者がつくった「アンパンマン」を題材にした文章がなかなか面白かった。
現在は論文執筆とはまったく関係ない生活だが、機会があればまた書いてみたいなぁ、と思ってみたりした。
Posted by ブクログ
まずは基本や型の習得、反復をしよう。テンプレを全活用することで、ひとまず「楽に」論文を書くことができる。でもその先に、「自分のやり方で」書けるようになってほしいーー。
実によくわかる方法論だ。文章を書くにあたって、(ある程度までは)センスも何も必要ない。テクニックにすぎない。だったら、まずは合理的に最短距離でテクニックを習得しよう。ようは「やり方」だ。
でも、そこで終わってはいけない。大事なのは、ここから。型を習得し、自分のものにできた先に、本当の自由がある。
だけで終わらないところが本書のすごいところ。手に入れた「自由」は何のために使うのか。その答えが実に素晴らしい。同感。というか、まったく同じことを考えていた。プロセスも、結論もほぼ同じ。思いを形にしてくれた気分。いい本に出合えた。
本書の内容を、こんな感じに言い換えられるかな。
本質にいきなり到達しようとはせず、まずは形式をうまく活用しとけ。いつしか本質が見えてくる。そして、見えてきた本質は「世のため」に使え。
Posted by ブクログ
書名にまったく偽りがない小気味の良い教科書。精神論やふわっとした語り方で、結局どうすれば良いかわからないということがなく、きちんと実行すべきハウツーがていねいに語られている。余計な配慮とか言い訳が一切ないので、読んでいて純粋に気持ちが良かった。
論文に限らずまとまった文章を書く人なら一読しておいて損はないと思う。
Posted by ブクログ
論文と聞くと、きちんと書いた経験がないということもあり、かなり苦手意識を持っていたが、反証可能なアーギュメントをパラグラフライティングを用いて論証することである、という筆者の主張はビジネスの場でも通用する内容で非常に分かりやすかった。また、アーギュメントの作り込みや論文の読み方に関する演習、具体的にどの程度の引用をすれば良いかなどの指示もあり、論文に関するモヤモヤは取り払われた。
Posted by ブクログ
すごく読まれていると以前から見聞きしていてすごく興味があったので買ってみた。
私の頭では一度では理解できなかった。
というか、書かれていることを実践に落とし込んで初めて意義がある本だと思う。
8章まで読むとアンパンマンを深く知ることができるのがまた面白いところ。
Posted by ブクログ
初学者が独力で学術論文を書く方法を指南する本。
ただし人文学系のレポート、論文を念頭に置いている。
書くまでに必要な作業は以下のような感じ。
(なお、以下はメモを作って、先行文献や資料を集めて詠み込んで…という作業は行ったり来たりするのだろうから、単線的な「手順」というのはふさわしくない)
1 論証が必要な命題である「アーギュメント」を作る
2 アーギュメントを鍛える
3 メモからパラグラフを起こす
4 先行研究のフォーマットを研究し、パラグラフ解析をする
5 抽象度を調整し、必要な情報を組み合わせて論証する「長いパラグラフ」を書く
6 先行研究を批判的に引用し、自分のアーギュメントのアカデミックな価値を示す
7 研究の応用可能性を説く結論、イントロを書く
*イントロにはアーギュメント、先行文献の批判的な引用を通して示すアーギュメントのアカデミックな価値、論のプロセスを示す「シノプシス」を含める
「まったく新しい」と銘打つだけのことはあって、これまでの類書にはない、明快な印象を受ける。
例えば、参考文献はどれくらい読むべきかについて、ジャーナル程度のサイズの論文なら、30~40本、と示してある。
論文投稿を目指すなら、徹底的に狙う媒体に載っている論文のフォーマットを研究すべきという。
できればその媒体に複数の論文を載せている著者のもの、なるべく新しいもの、フォーマットを厳格に守る傾向が強い若手研究者のものを選べ、とアドバイスは具体的だ。
パラグラフ解析は、自分でもやってみたいと思った。(まあ、やってみるときっと、これってどう考えたらいいの?と困惑することは目に見えているが。)
ただ、ひとたび本を置くと(出た、自分のいつものパターン!)、いや、初学者(本書の対象には講義で課されたレポートを書く大学生も含まれている)にとって、アーギュメントの価値を判断できないんじゃないかとか、そもそもアーギュメントを作れないんだって、とか言いたくなってくる。
そこはやはり大学の講義で繰り返しトレーニングして体得するところなんじゃないかなあ。
Posted by ブクログ
論文とはどう書くのが正解なのか。
人文社会科学系の研究の手法を明確にしてくれる好著。
仮説にこだわりすぎなくてよいのは少しホッとする。
こういう考え方もアリなのね。というかスタンダードなのね。
アーギュメントの価値については特に印象に残った。
アーギュメントはアカデミックな価値を持たなくてはならないということ。当たり前なんだけど、はっきり言いますね。アーギュメントにアカデミックな価値がないかぎり、論文として成立しないというところも、サクッと本質に切り込んでいて気持ちいい…
だから、論文とは、アーギュメントを提出し、それが正しいことを論証するもの。
アンパンマンで例文が書かれているのが、今時(朝ドラね)でなんかちょうどよい笑
パラグラフの分量にまで言及してて、親切。
これなら書ける、という人多いのでは。突き放してなくて(つまり偉そうでなくて、手を差し伸べてるところが)とてもいい。千葉雅也が推薦するのも納得です。
Posted by ブクログ
文系の論文の型が気になっていたことと、話題だったので手に取ってみた。
内容は平易ではないが、興味深かったり、目から鱗の記述が多く、新しいという書名を体現していると感じられた。
難しすぎると感じたら、後ろの9章から読んでみるといいかもしれない。
Posted by ブクログ
●「論文はアーギュメント(主張)をもたなくてはならない」、そういうことさえ知らなかった自分にとって、普通にためになる内容だった。また、勉強となる内容というだけでなく、読ませる文章で面白く読めた。
Posted by ブクログ
コンサルの仕事の中での論理構築に役立つかと思ったが、論文を書くわけではないので途中で読むのを止めた。「アーギュメント」という言葉を使っているが、MBAで出てきた「イシュー」と同義と捉えられるし、1パラグラフ1メッセージは1スライド1メッセージだろうし、通じるところはやはり多々あった。
Posted by ブクログ
単なる参考文献や章立ての方法ではなく、実際の文章の書き方である。結構売れている本である。アーギュメント(意見)を中心にしてどのように書けばいいのか、ということや査読論文の方略まで書いている。大学院生に最適である。文系向けということであるが、教育学部でも役立つであろう。ただし、レイアウトの形式が非常に読みにくく、古色蒼然であり、国文学部の論文の書き方の本のようである。理系のためのアカデミックライティングの2色刷りの本と比較すると雲泥の差である。そのために、文学部以外の学生として、教育学や社会学に関連する学生は敬遠してしまうかもしれない。