あらすじ
ことばは社会の見方や価値観をゆるがす一方で、社会もまたことばの使われ方に影響を与えている。新しいことばのインパクトとそれに対する抵抗や躊躇、こんがらがった関係を事例とともにのぞきこみながら、私たちがもつ隠れた意識を明らかにし、変化をうながす。 【内容のほんの一例】ことばが社会を変化させるメカニズム/ことばが変わることにはどの社会でも強い抵抗がある/「伝統」や「習慣」をカラッと転換させるカタカナ語/「男になる、男にする」と「女になる、女にする」/なんでも略す日本人と「意味の漂白」/「ご主人・奥さま」?「夫さん・妻さん」?/――ひとの配偶者の呼び方がむずかしいのはなぜ?/「正しい日本語を話したい」と考えてしまう私たち/既存の価値観がすべてではない
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Posted by ブクログ
中村桃子先生に人生を変えられた身として楽しく読んだ。営業職で「他人のパートナーを何と呼ぶか」は問題になる機会が多く、本文にあった通り「パートナーの方」だと顧客側に怪訝な顔をされることもままある。私自身は己を「奥様」と呼ばれることにも夫を「主人」と呼ぶことにも全く抵抗がないが、家父長制に由来することばすぎるので忌避感を覚える人もいるだろうというのは自然なこととして納得できる。正解はない、豊かな選択肢から選ぶことができるのだから使い手で変えていける、というのは、まあ、それはそうであるが、「セクハラ」のような物事を形容する言葉や「女子」のようなある種のエンパワメントを含む言葉と違って「他人の配偶者」というできる限り失礼のないように対応したい相手への呼称を選ぶというのは確かに日本人的感覚だと難しいと思う。ちなみに私は「ご家族様」で解釈の余地を持たせるか、「ご配偶者様」とするかしている。
Posted by ブクログ
中村桃子先生の社会言語学の本。
タイトルは「社会が変わればことばが変わる」ではなく『ことばが変われば社会が変わる』
全体的にとても良く練られた構成で、章末には振り返りと次に考えることが示されていて非常に読みやすい。計算され尽くしている印象。
内容はジェンダー関係の問題とことばの関係を様々な視点から読み解いて行くような進み方。前半は特にジェンダー関係のことば問題が多くを占めていて、ことばの本なのを忘れてしまいそうなほど。
考えての上だと思うけれど、たまに著者本人の個人的な感情がポロっと書いてあったりして親しみやすい。
言語学も社会学も言葉が…単語が難しい。でもこの本は、新しい概念は出てくる前に説明があるので安心して読めます。
生活の中でのことばの問題に感心がある方には是非ともオススメしたい一冊です。
Posted by ブクログ
P.5
言語が社会を構築する
P.9
言語学変化→社会言語学的変化
言語が変化することで社会がどう変わる?
P.34
セクハラの意味を変える報道。セクハラは女性の責任、というものと、セクハラは大したことでない、というもの。
P.41
女性社員を女の子と呼ぶことは、女性は子どものように半人前だという考え方を共有させる。
P.42
イケメン、は男性の客体化。
P.49
買春は、買う人の問題にした。児童買春児童ポルノ禁止法の成立へ。
P.51
男になる、は性交経験と能力や可能性の証明。
女になる、は性交経験や初潮等などのみ。
P.66
セクシュアリティは両脚ではなく、両耳の間にある。
P.91
女子は自分を喜ばせる新しい女性像
間言説性による社会の構造変化
P.95
防災女子の会→あっ、
P.100
行動する保守、公の場で他者を攻撃することと、伝統的女性観を女子という言葉でラッピングする。
P.107
新自由主義の説明。民営化や規制緩和により労働者の権利や福祉が弱まる。その結果、社会的連帯よりも自己責任な個人主義が優位になり競争が常態化する。競争によって高まる不安は、伝統的な家族や国家、女らしさや男らしさの復権を唱える保守的言説に結びつく。
P.109
女子力の問題。個人間の競争が強調され、連帯が難しくなる。女性の生きづらさが個人の問題となり、社会システムの問題として議論できなくなる。
P.110
ミュゼプラチナム、女子に、ちからを。
P.128
名前を剥ぎ取られる経験。
フランスでもあったなぁ。アフき、など。
P.192
名前、呼び名を決めてもらいたい。
P.198
伊丹市のガイドラインではご主人、奥さんを刊行物で使わないらしい。
P.203
社会にパートナーの呼び名が複数あるのが良いのではないか?という中村桃子さんの考え。
自認〇〇、地雷系、飯テロ、麻薬卵、〇〇難民、は意味が漂白されているからok?
訴えることで社会が変わるというメカニズムをフーコーが言っていることが面白い。
"配慮"によって主語が生まれる。思いやりとか、リーズナルアジャストメント。合理的調整を使っているかも。
帰宅難民、脳死で(何も考えずにやる)、とか。コミュ障って違和感?
人権武器。
ネットの隆盛?→TVだと制限がかかっていた。
queerとか。悪い意味がいい意味になったり、取り戻したり。
変態、やばい、いいとか。
パートナーを呼ぶ、丁寧な言い方は?
Posted by ブクログ
本作品で帯にもあり、気になっていたのが他人の配偶者をどう呼ぶかという問題です。
「ご主人・奥さま」?「夫さん・妻さん」?――ひとの配偶者の呼び方がむずかしいのはなぜ?
この問題は第六章にて検証されていますが、全てがどんなパートナー関係を思い浮かべているかで大きく変わってくるということです。なかなか一筋縄ではいかない問題であることが、今回もはっきりしました。
そのほかにもことばが変わることにはどの社会でも強い抵抗があること。「伝統」や「習慣」をカラッと転換させるカタカナ語の力。
「男になる、男にする」と「女になる、女にする」の使い方の深い意味。
日本人は意外に真面目で「正しい日本語を話したい」と考えてしまうこと。既存の価値観がすべてではないことなどが興味深い内容でした。
久しぶりに教養新書を読んで、小説とは違う感覚を楽しみました。
Posted by ブクログ
女、女子、女の子、女性の違いは?
他人の妻や夫をなんと呼ぶ?夫さん妻さん?ご主人?奥様?社会と言葉の関係について述べた本。
「ことばを変えることは、物事を理解する別の視点をもたらすという形で間接的に社会変化をもたらす」
という考えを根底に、さまざまな具体例をあげて展開される。
明治時代から昭和初期まで最も頻繁に使われていたのは「夫」であり、「主人」が一般に使われるようになり国語辞典に「妻からの呼称」と掲載されるようになったのは、戦後以降だということは知らなかった。
夫ー働き手、妻ー専業主婦 のモデルが一般化したのは戦後以降にもかかわらず日本人の多くはこの家族形態が伝統的なものであると勘違いして社会の仕組みを作ってきた「近代の伝統化」に通じるものがある。
Posted by ブクログ
ことばが社会に影響を及ぼし、時には社会を変えていくことについて「セクハラ」とか事例を挙げながらわかりやすく紹介・解説してくれている。何気なく使っていることばの裏にいろんな社会の状況が反映されているもんだ。
ジェンダー的な視点をかなり濃くしながら書かれていてそういうものは自分の好物のはずなんだけど、だいぶ斜め読みをしてしまった。
一番面白くて「そうか!」と思ったのは、パートナーの呼び名のこと。「ご主人」はナンセンスと思いながら自分が他人にその人のパートナーのことを言うとき「だんなさん」「奥さま」と言ってしまうんだけど、同じようになぜか「だんなさん」とか「ご主人」とか言ってしまう傾向が広く見られる。それはなぜかというと「夫」や「妻」はややへりくだり感があり、家父長制的な色合いのないうまい言い方がないんだよね。日本語においては丁寧な言い方ほど家父長制的なものと結びついてしまうということもあり。自分としては「お連れ合い」あたりかなと思うんだけど、何か舌が回りづらい感じがしてあまり口にしたことないしね。