【感想・ネタバレ】新たな明日 助太刀稼業(三)のレビュー

あらすじ

若武者の冒険ストーリー、ついに完結!

剣術修行と助太刀稼業によって商人たちの機微を知った若武者・嘉一郎。
度重なる女武芸者らとの出会いや、毛利家の若様・助八郎の新しい姿を見るうち、
これからの生き方を模索する。
そんな時、江戸の分限者の娘たちが拐かされ、佃沖の異人船に捕らわれているとの知らせが――

嘉一郎が勇気を持って選んだ道とは?
壮快な冒険のストーリーがついに完結!

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Posted by ブクログ

なんとも気分の良い終わり方だろう。
嘉一郎のさっぱりとした潔さ。
助八郎の登場機会が減るにつれて、清々としていた気持ちがもの寂しさへと変わっていく。
助太刀稼業の有望さと展開に期待を胸に読み進めていくと…実に良い話だった。

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2025年04月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

佐伯泰英「助太刀家業(三) 新たな明日」(2025年1月文庫本書き下ろし)
江戸に来て3年目に入り26歳になった神石嘉一郎は、「助太刀稼業」で稼ぎながら、白井亨の剣術道場「味噌蔵道場(白井道場)」で師範方として稽古する日々を送っていた。
朝稽古を終えた後、めし屋で掛取り屋のお銀と知り合い、”白井道場の師範方というのは大きな肩書きになる”と言われた。江戸では白井亨の剣術家としての評判は多大な名声であることを初めて知った嘉一郎だが、その白井亨と嘉一郎の剣術の強さは五分か嘉一郎の方が上回っていることを白井は知っていた。

めし屋で朝餉を食べ損なった嘉一郎は「備前屋」で昼餉を世話になり、その後新しい助太刀稼業の仕事を請け負うことになる。「備前屋」の主の十右衛門のお供で品川宿の入会地にある「貴船社」へのお供で、その貴船社の破壊坊主5人は元は「備前屋」の取り立て屋だったが、取り立てた87両2分を「備前屋」に渡さないらしい。嘉一郎の請け負った仕事はその取り立て屋から取り立てることだった。
嘉一郎は破壊坊主の内4人はあっという間に倒し、大長刀を操る僧兵頭の闇主御坊こと黒雲涅槃坊と息詰まる対決を繰り返すが、躱しの技も見切られたかと思った時、闇主御坊の脳天に痛みが走り、闇主御坊の意識は途絶えていた。

87両2分を取り立てた十右衛門と嘉一郎が「備前屋」に戻ると、店の前で國蔵とみわが3人の侍に言いがかりをつけられていた。嘉一郎は刀を抜いた3人を素手であっという間に片付けると口の聞けないみわが何か言いたそうにしていていつもと違う感じがしていたが、嘉一郎はそれが何かはわからなかった。のちにそれはみわの嘉一郎への特別な想いだと知ることになるのだが。

白井道場で白井亨と嘉一郎が立ち合い稽古をしているとおんな武芸者の新免花月(21〜22歳)が道場にやって来て嘉一郎との勝負を望んだ。白井はまず門弟との立ち合いをと返答し相手に同じ女剣士の木幡花を指名し、花月はこれを了承する。木幡花は嘉一郎にことごとく敗北した大坂三宅道場の高弟7人衆の1人で、それ以降嘉一郎を師匠のように慕って今は江戸の白井道場で稽古を積み、白井亨もも嘉一郎も木幡花には一目置いていたが、二人の女武芸者の対決は結局は相打ち引き分けに終わった。
その後嘉一郎は二人同時に相手をし、結局1対2でも二人共嘉一郎には全く歯が立たず、二人の女武芸者の前に大きな壁が立ち塞がった日になった。

木幡花と新免花月は白井道場の女門弟となった。可憐で美しい花月がその強さを知らない篠竹道場の門弟達で直参旗本の跡継ぎ(新庄欽一郎)から言い寄られて迷惑していたのを、嘉一郎の助言で白井道場で立ち合い稽古に引っ張り出して、花月はあっという間に欽一郎を気絶させてしまう。

かと思えばある時キム・リーと名乗る異国ベトナムからの女武芸者が白井道場に入門を願い出て来た。武術は国の一族に課せられる使命だと言う。剣術を覚えたのは清国でのことらしいが一族を守るための剣術は実戦を積んで、その強さは見てすぐにわかるレベルであった。
白井亨は対戦相手に花月を指名し、立ち合い稽古をするが、見事な立ち合いに道場の門下生が全て稽古を中断して見入っていた。しかし明らかに花月が劣勢となり、花月は自ら竹刀を引いた。

その翌日、白井道場の表に一人の旅の途中と思われる武士が佇んでいた。もう忘れかけていたあの下野江睦だ。毛利助八郎に持ち出された毛利家の家宝の刀を追いかけて、名だたる白井道場に助八郎が門弟となっているかも知れないと思ってのことだった。その姿は痩せこけて身なりも汚くその苦労が滲み出ていた。
下野江はまだ家宝の刀が偽物だったということは知らなかったが、刀剣商を訪ね歩く内に何となくそうではないかと勘づいていたみたいだった。嘉一郎に取り入って住まいや食をたかろうとしていたが、嘉一郎は先に手を打ちあきらめさせる。
嘉一郎との会話で偽物だとわかった上はもう探す意味はなくなったのだが、国元へ帰っても歓迎されるはずもなくこれからどうするのかを聞く前に下野江は嘉一郎の前から姿を消す。

すると姿を消した日に今度は毛利助八郎が嘉一郎の前に現れる。助八郎はもう以前の助八郎ではなかった。下野江がもう助八郎を追うことがなくなったことを知っても淡々としていた。武家でもなく毛利家のお控え様でもない新しい生き方を見つけたようだった。
そして助八郎もあっさり去ってしまう。

ということで下野江睦も毛利助八郎も嘉一郎への関わりはこれで終わってしまうのだが、いやはや第一巻での関わりは何だったのだろうか。二人の存在は何だったんだろう。
それにしても嘉一郎のこの二人への立ち振舞いとその他への立ち振舞いの違いは何だろう。どちらが本当の神石嘉一郎なのか。武芸者としても人格者としても26歳の若者には見えない、博識な45歳くらいに見えてしまう神石嘉一郎なのに、下野江や助八郎と絡むと間抜けな馬鹿正直な男のように簡単に騙されてしまう。不思議だ。よくわからない。

次の嘉一郎の助太刀稼業の「備前屋」の取立て相手は真言宗の寺「阿遮院」で取立て金額は833両2分。難儀なのは阿遮院を取り仕切る妙信なる尼で、陰の主として君臨していた。そして妙信は女相撲の大関を張る巨漢でもあった。得意技の張り手で顎を砕かれた男の相撲取りが幾人もおり、廃人となり二度と相撲が取れなくなったと言う。
妙信を目の前にして嘉一郎は初めて恐怖を覚え、武芸者としての自信と誇りも失いかけていた。しかし平静を取り戻した嘉一郎は妙信の張り手を躱しの術で躱し、生涯初めて張り手を空打ちした妙信は潔く833両2分の金子を返し、嘉一郎の仕事は終わる。

そして神石嘉一郎の物語の最後を締めくくるのは、嘉一郎とみわの話だ。みわは「備前屋」の本店の娘で、押し込み強盗に身内を全て殺され一人生き残ったが、恐怖で言葉を失っていた。それが嘉一郎と接していく内に言葉を取り戻し、嘉一郎に心を寄せていくようになる。幾度となくみわの窮地を救ってきた嘉一郎に心が惹かれていくのは自然なことなのだが、あまりにも急展開で嘉一郎の心の葛藤もなく、波平行安を海の中へ放り捨て、みわと二人で生きて行く道を選び、助太刀稼業が終わる。
「刀を使わずに世の中を動かす」という考えに至った嘉一郎という風に締めているのだが、あまりにも早急な終わり方で何かしっくりこないのは私だけでしょうか。

第一巻で琵琶湖沿いの「山波結城道場」の娘(藍16歳)や息子(小太郎10歳)と必ず戻って来ると約束したのではなかったのか。
毛利助八郎や下野江睦との別れはこんな簡単な別れでいいのか。
助太刀稼業の取立て金額21,884両の5分の嘉一郎の取り分1092両は「備前屋」に預けたままなのか。まだ終わってない話はいっぱいある。無理矢理終わらせなくてもいいのでは。

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2025年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 毛利助八郎が殆ど出て来ず、神石嘉一郎とのコミカルなやり取りが減ったのが残念だった他、拍子抜けだったり、あまりにも唐突な展開が目立つ完結巻で、やや不満は残る。

 しかしながら、嘉一郎と共に世間について学べたような気がするし、三部作を通しての満足度はかなり高かった。登場人物たちの成長や変化、人間模様が発展していく様が読み応え抜群だったし、時代小説の面白さがぎゅぎゅっと凝縮された三部作だったと思う。

 ――「鞘に刀を納めたまま、この世を平穏に保つ。それが刀の眼に見えない真の力(以下略)」。本当にその通りだと思う。
 争いが続く世界故に、心に響いた。

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2025年03月22日

Posted by ブクログ

嘉一郎の物語も第3巻でハッピーエンド。一応すべてに結末は見せた感じですが、ちょっとあっさり終わったなぁ、という感じ。佐伯先生、まだまだ頑張って書いてくださいね。

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2025年01月21日

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