【感想・ネタバレ】マーリ・アルメイダの七つの月 上のレビュー

あらすじ

戦場カメラマンのマーリ・アルメイダは、冥界の受付で目が覚めた。現世に留まる猶予は七つの月が沈むまで。スリランカ内戦の狂騒を魔術的に駆け抜ける、圧巻のブッカー賞受賞作。

あなたはこの物語で、人間の悲劇的な愚かさと、目も眩むような愛を目撃することになる。
──西加奈子

最高にグルーヴィーな語りのリズム。主人公マーリ(の幽霊)と一緒に知られざるスリランカの闇を突っ切った。
──佐藤究

全ての諍いは死者たちの呪いから始まる。時にフィクションは現実の暴力に無力だ。が、この悪夢の旅はどうだ、シュールな笑いで飄々と死体の間をすり抜けて行く。これはすぐ間近に迫る我々の明日の物語だ。
──幾原邦彦

強烈なエネルギー、悲しいユーモア、胸が張り裂けるような感情。そして、歴史が人々へしたことへの燃えるような怒り。
──「ガーディアン」紙

「この世界の狂気をどう説明できる?」
1990年、内戦下のスリランカ・コロンボ。
戦場カメラマンにしてギャンブラー、皮肉屋で放埒なゲイであるマーリ・アルメイダは、目を覚ますと冥界のカウンターにいた。自分が死んだ記憶はないが、ここに来る前に内戦を終わらせるための重要な写真を撮ったことは覚えている。与えられた七夜の猶予のうちに、自分を殺した犯人を捜し、内戦を終結に導くことはできるのか?
復讐を誓う青年革命家、爆破テロの犠牲になった博士、魂を飲み込む邪神、錯綜する陰謀……。死者も生者も入り乱れた地の混沌を駆け抜ける、狂乱のゴースト・ストーリー。

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Posted by ブクログ

マーリ・アルメイダ。
戦場カメラマンにして、ギャンブラー、そしてヤリチン。
物語の舞台は、1990年のスリランカ、内戦真っ只中のコロンボだが、その様子は全て死者であるマーリの目線から語られる。
マーリは、気づくと冥界のカウンターにいた。周りは死者で渋滞。戦争の被害者である彼らは、死者になってもくだらない手続きのために列に並んでいた。そして42階で〈耳の検査〉を受けて〈光〉に行くよう案内される、、、
しかし、途中不思議な雰囲気の若者の霊と会い、生者の世界に干渉するための力があることを告げられる。残された時間は月が7回昇るまで。腐敗した政府の闇を暴き内戦を終わらせようと、スクープ写真を残してきた友や恋人に託すことにする。マーリの地獄めぐりがはじまる。



平和で、夢があって、未来のことを楽しく想像できるような世界にいる人間からはとても生まれようのない言葉が次々に出てくる。戦争はきっと情報過多なのだろう。一人の人間に処理できる以上の情報が際限なく脳に押し込まれる。殺人、拷問、死体の処理。そういうものが生活に染み込んでいる人たちの、突き刺すような言葉が、痛み以上に不思議な魅力をもって紡がれる。作品の中の好きな文章を何度も声に出して読んだ。
逼迫した状況でも、どこか自分を客観視したような一人称の語り口は独特で、物語全体にブラックミュージックのような抗いがたい原始的なリズムを刻んでいる。

そしてストーリーは、死者の移動手段である"風"のように、ユーモアをたっぷり含んでどんどん進んでいく。どこをとってもとにかく面白い。こんなに厳しい時代を、完璧に物語にしたことは、いまだに続くスリランカの混迷に何かしらの一石を投じてくれることと思う。

2022年、満場一致でブッカー賞受賞を果たしたという本作、下巻もとても楽しみ。

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2024年02月17日

Posted by ブクログ

全く知らなかったスリランカの厳しい内情を知ることができた。
民族や思想による複雑な紛争が物語の背景だ。作者の意図も設定も素晴らしいのだが、なじみのない名称が多く、イメージを持ち続けて物語を進むのが私には難しかった。
下巻まであることを思うと、辛くなり上巻7割のところで本を閉じた。

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2024年07月07日

Posted by ブクログ

内戦下のスリランカで、戦場カメラマンのマーリ・アルメイダに起きた奇想天外な物語。
冒頭、彼は冥界の受付にいる。そこで告げられたのは「7つの月が与えられる」だった。死者に残された時間は月が7回上るまで、つまり7日間。その間にマーリは自分の死の真相を突き止め、やり残した使命を完了させることを決意する。
第1章はマーリ及び読者に死後の世界のルールやら時代背景やらを説明するため長く読みにくい。スリランカなんてまったく未知の国で、なんの知識もないから尚更だ。
第2章からいよいよ物語が動き出し面白くなってくる。

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2024年03月09日

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