あらすじ
謎の「ナノヘルツ重力波」は、宇宙誕生の痕跡なのか!?
2023年、世界に衝撃を与えた国際研究チーム「ナノグラフ」の報告。
それはある重力波の存在を捉えたというものでした。
発見された重力波は、ナノヘルツ(ナノ=10のマイナス9乗)、つまり数年もの非常に長い周期の、超長波長の重力波でした。
この観測プロジェクトで使われた手法は「パルサー・タイミング法」というものです。
電波星ともいわれる「パルサー」から送られてくる電波を観測することで、宇宙の空間の歪みを検出するという手法が、この「パルサー・タイミング法」です。
では、このナノヘルツ(超長波長の)重力波はどこで生まれたのか?
・宇宙のはじまり、ビッグバンより前に起きたとされる「インフレーション」によって空間が引き延ばされたさいの痕跡「原始背景重力波」。
・銀河の中心「活動銀河核」に存在する太陽質量の数万倍といわれる「超巨大なブラックホール」が合体した。
といった候補が考えられています。
これまで謎とされていた「宇宙のはじまりの姿」。
その痕跡を見ることが人類にとって現実のものとなりはじめました。
本書では、その背景にある宇宙論を、重力とは何か? アインシュタイン方程式とは? そして宇宙のはじまりはどのように考えられてるのか?
ひとつずつ段階を踏みながら解説し、「ナノグラフ」によって行われた「パルサー」を用いた宇宙空間の精密観測「パルサータイミング法」と今後の観測計画。そして15年以上にもわたる「パルサー・タイミング・アレイ」による観測の結果から、この謎の超長波長の重力波「ナノヘルツ重力波」の正体に迫っていきます。
宇宙の誕生に迫る宇宙論と観測の最前線をていねいに解説します!
序章 ナノヘルツ重力波の衝撃
謎の重力波とパルサー・タイミング・アレイ
1章 重力とはなにか……空間そして時間の歪み
コラムメジャーリーグ投手の放つ重力波
2章 重力波望遠鏡……宇宙を見る新しい目
3章 連星パルサーの謎……電波天文学と中性子星
コラム 重力波に縦波成分は存在するのか?
4章 宇宙誕生の痕跡とは……インフレーション理論と原始背景重力波
5章 巨大ブラックホールの謎……宇宙の歴史を探る
コラム 「特異点定理」の数理
6章 超波長重力波を捉えるには……パルサータイミング法と宇宙の謎
7章 もう一つの重力波観測……位置天文学で見える宇宙
8章 宇宙のはじまりを見る……超長波重力波の正体と未来の宇宙観測
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Posted by ブクログ
最後はパルサータイミング法など重力波測定方法が書かれている。この辺りはイメージしづらく難しく思えた。それまでは、わかりやすく、文言の説明も補足があり読みやすかった。宇宙背景放射の言葉の意味を知ることが出来たのは良かった。
Posted by ブクログ
宇宙の創成期に関して、インフレーションがあり、その後ビッグバンがあったという説が有力視されている。ビッグバンに対してはマイクロ波背景放射が観測され、その現象への理論的裏付けがされてきた。インフレーションに対する理論的現象として、ナノヘルツ重力波の存在が浮上している。ナノヘルツという極小振動数は、1周期振動するのに約30年もかかるという途方もない現象で、これは約30光年という超長波長になるらしい。マイクロ派背景放射は、除去できないノイズから発見されたように、その時の観測で明らかにできたが、ナノヘルツ重力派は最低でも1周期分の数十年の観測データがないと発見できない。この気が遠くなるような世界への挑みの歴史が紐解かれている。宇宙にハマると人生が決まってしまう恐ろしさみたいなものを感じた。
Posted by ブクログ
『三体』三部作を読み終えて、宇宙に関する諸々の言葉、特に「重力波」の意味を知りたくなって、購入したブルーバックス。発刊されたばかりとあって最新の宇宙論が披露されている。が、この良くない頭ではやっぱり理解しがたい。
天体や元素や量子なんかの物理現象が数学的にこのように説明できるから、宇宙の姿はこうなっているはずだ、で、その証拠を実証する観測技術を開発して発見しました、の積み重ねが宇宙論なんだなと初めて理解した。でもそれって、観測結果をモデルに沿ってなぞったシミュレーション結果が現実そのものなんです、って言われてるみたいで、しっくりこない。モデルという一面から見れば間違ってはいないが、モデルはしょせんある方向から現実を単純化したものに過ぎないはずだから。でも、物理ってそういう学問なんだよな・・・