あらすじ
--半導体業界「キーマン中のキーマン」が提言する「日本再生戦略」。日本経済がしくじり体質から脱却し、復活するかどうかは「最先端半導体」にかかっている!--
世界ではいま、半導体がかつてないほど〝熱い〟。
1つは、新型コロナウイルス感染症によって半導体の製造と供給が一時大きく滞り、世界経済に大きな影響を与えたこと。もう1つは、半導体をめぐる米中関係の緊張の高まりだ。
いま世界中のあちこちで、半導体「国産化」の動きが起きている。
私はJSRに1981年に入社した。JSRは、半導体のシリコンウェーハに塗布するフォトレジストで世界トップクラスのシェアを持つ。40年超にわたって半導体業界を現場の視点からつぶさに見てきたつもりだ。そうした経験から、「最先端半導体の開発と製造を日本国内で再び行うべきだ」と考えている。
いまや世界を牛耳るGAFAMは大きく成長し、その後、AIが次の波になると見るや、素早く自社のサービスに取り入れることでさらなる強大なパワーを手にしてきた。それによってGAFAMが本拠地を置く米国が、世界の覇権を握ってきた。
それを支えたのは「コンピューテーション(計算基盤)」であり、もっといえば、基盤となる半導体にほかならない。すなわち、半導体は企業の力の元であり、国の力を支える基幹産業なのだ。半導体の復活なくして、日本の未来が明るくなることはない。
ここにきて「日の丸半導体、復活か」と思われる動きが相次いでいる。TSMCによる熊本新工場の建設、先端半導体の国産化に向けた新会社Rapidus(ラピダス)の設立――。
ただ、こうした「半導体の喧騒」を冷めた目で見ている人も多い。
「失われた30年の間に、技術力も技術者もなくなった。工場だけ建てたところで、そう簡単につくれるはずがない」
こういった批判の声は、一理ある意見もあるが、それでも日本は国産化へまっしぐらに突き進むべきだという私の考えはいささかも揺るがない。なぜなら、そこには勝算があるからだ。(「はじめに」より抜粋)
【この本でわかること】
□なぜ半導体が注目されるようになったのか
□背景にある世界を巻き込む事情とは何か
□その中にあって、日本はどう進むべきか
□半導体開発競争の先にある未来のテクノロジーとは何か
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
単なる未来予測本ではなく、半導体産業の歴史、半導体の技術上・社会上・国家安全保障上の意義が語られている。現在の半導体産業の技術上のボトルネックや課題、それに対するラピダスの可能性など、著者の半導体に対する熱い想いが語られて、とても興味を惹かれる内容だった。
トランジスタのGAA構造化、ブレインレスロボットや量子コンピュータ、それによる核融合発電などの次世代テクノロジーだけではなく、ジョブズが実践していた「将来の進化を先取りする」ビジネス上の考え方など、とても勉強になった。
Posted by ブクログ
ラピダスについて学ぶためにこの本を読みました。
読んでみて感じたのは、2ナノ半導体の有益性そのものよりも、日本が抱える課題について多く語られていたということです。
また、終盤では多くのベンチャー企業も紹介されており、業界全体の広がりを感じました。
この本を通して、これから半導体業界がさらに成長していくことを実感し、日本の半導体企業を信じて応援したいと思いました。
Posted by ブクログ
仕事の勉強兼ねて。
難しいしそもそもド文系脳の自分にはどうやっても完全には理解できないが、それでも立場も経験も凄くある上の方とは思えない噛み砕いた分かりやすい説明で半導体業界の概要や潮流、日本の課題はよく分かった。
オススメ。
Posted by ブクログ
半導体の開発の歴史、現在の先端半導体戦争、今後の量子技術やAIの進化まで、半導体を巡る環境を幅広い視点でわかりやすく解説してくれる一冊。
半導体は今や戦略物資というのはそのとおりだと思った。デジタル自給率という指標の考え方が興味深い。
量子技術の応用先として、木材の高度利用、合成バイオ燃料、タンパク質繊維のアパレル利用などが登場してくるあたりに、著者の化学技術屋さんらしさを感じた。
Posted by ブクログ
実際に半導体ビジネスに長年身を置いた小柴氏による書籍であり具体的な話も多くわかりやすい内容。
特にラピダスとは何たるかという観点であまり認識が深くなかった点の理解が進んだ。
後半の核融合ビジネスの話も興味深い。
Posted by ブクログ
ラピダスの成否については自身も色々思うところがあって、日本の半導体関連産業の中でも競合と戦えている素材とか装置に力をいれれば?
と思っていたが誤りだった。安全保障の観点ではデバイスを自国で作れないのは大きな問題だし、国内でのファブの増加が結果的には素材や装置メーカーの発展に繋がる。結局のところ、「うまく行くかいかないか」ではなく「やるしか無い」が正しい。著者の意見に賛同。
後半は最近の技術動向についての記述が多かったが、学びも多かった。AIや量子コンピュータは素人に生えたうぶ毛程度の知見はあるが、バイオ周りは全くわからんので半導体の技術発展とバイオ周りの話をもう少し結びつけられるように勉強したい。
Posted by ブクログ
半導体と量子コンピュータ
日本でも最先端の半導体の開発を自前で行う必要がある。
アメリカと中国の半導体摩擦にあるように、半導体の覇権争いは戦争にも発展しかねないものだなと実感。
日本のデジタル赤字の増加や、国家戦略を考えると、自前のクラウドを持つ必要もあるとのこと。
量子コンピュータの発展は、物流、素材など様々な面で人の生活を劇的に変える。
科学の加速的な進歩は、どわなに優位に立つ国家も、一瞬で、その立場を入れ替える可能性があると思うと、面白い世の中でもあり、怖い世の中でもある気がしました。
Posted by ブクログ
2024年48冊目。満足度★★★★☆
著者は半導体関連企業のJSRの前会長
私は半導体産業の未来には、全く懸念がないが一段とクリアになった
元経営者らしく、単なる半導体のテクノロジーだけの書に終わっていないのが良い
Posted by ブクログ
非常にわかりやすかったです。技術経営の真髄を見ました。やはり、技術に錨を下ろして、マーケットを技術者ではなく、投資家やマーケッターとして観る。この力が今後より必要になってくる。
特に、通信5Gは海外パーツと特許で占拠されている現状で、少しトランプゲームの大貧民のカード9「革命」が必要だとおもう。これらの半導体と量子の基盤が整備できるまで、通信環境を少し鎖国したらどうだろうか。
Posted by ブクログ
著者が如何に日本の競争力を高めたいという熱い想いを持っているかが伝わった。半導体がその為に必要不可欠なのは分かったが、産業構造等を説明した本では無い。