あらすじ
日系米国人作家による話題の歴史ミステリー!
1944年、シカゴ。父母とともにカリフォルニア州の強制収容所を出てシカゴに着いた日系二世のアキ・イトウは、一足先に収容所を出てシカゴで新生活を始めていた姉ローズが前日にクラーク・アンド・ディヴィジョン駅で列車に轢かれて死んだと知らされる。警察の自殺説に疑問を感じたアキは、真相を求めて自ら調査を始めるが…。
2021年NYTベストミステリー選出、2022年メアリー・ヒギンズ・クラーク賞受賞、同年マキャヴィティ賞最優秀歴史ミステリー小説賞受賞。
戦時中の日系人たちの境遇にスポットを当て知られざる歴史を掘り起こした、日系米国人の著者渾身の歴史ミステリー、待望の新シリーズ第1弾。
(底本 2024年6月発売作品)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
舞台の歴史的背景は真珠湾攻撃から2カ月後の1942年2月19日、ルーズヴェルト大統領の大統領令により日本人の血が16分の1以上入っている日系アメリカ人約12万人(うち3分の2は生まれながらの米国民)が強制的に西海岸から収容所に移住させられた戦時下である。国家反逆罪やスパイ活動から守るという名目だったが、ホワイトハウスの「事実調査」部門の主任エージェントのカーティス B. マンソンにより、「反米活動が広まる危険があることを示す証拠は見つからず日系アメリカ人の忠誠心を証明する大量の資料が提出されていた。」にもかかわらず大統領令は発令された。同じ敵国のドイツやイタリア移民には調査も強制収容は適用されなかった為、明らかな人種差別と偏見に基く措置だった。
主人公のアキ・イトウ一家はこれによりシエラネバダ山脈の麓のマンザナー戦争収容所(Manzanar War Relocation Center)に入れられる。翌年9月収容所からの移動を許可された姉のローズはシカゴに向かう。その後残された家族もローズに合流すべく収容所を出る。シカゴに到着すると、家族はローズがクラーク・アンド・ディビジョン駅に入ってきた地下鉄に轢かれて亡くなった事を知らされる。物語はここから事故も自殺も信じないアキによる真相の究明への執念と、故郷のカリフォルニアを離れた土地で生き抜く家族の苦労が詳細に描かれる。戦時中の日本人移民の置かれた境遇の史実と、アキのロマンスとローズの死の真相を探るミステリーを組み合わせた興味尽きない一冊でした。
「母は故郷のことを思い出すたびにクロウということばを口にした。英語にすると“苦難”——suffering になるのだろうけれど、sufferingという ことばは、なんだか表面をさっとひとすくいしただけに聞こえる。クロウは、もっと奥深くまでえぐられた状態をあらわすことばだ。 咽喉の奥から絞り出されるうめき声や骨の髄まで 貫くほどの痛みまでをもあらわす。」
kurou, which could be translated to “suffering.” But the English word seemed to skim the surface, whereas kurou went deeper. It referred to a guttural moaning, a piercing pain throughout your bones.