【感想・ネタバレ】三四郎(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性里見美禰子に出会い、彼女に強く惹かれてゆく……。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて『それから』『門』に続く三部作の序曲をなす作品である。(解説・柄谷行人)

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Posted by ブクログ

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物語としては出来事が無さすぎるが、それがリアルでいい。何も進展していかない感じも、実際にはよくあることなんだろうな。問題を持ってきたり引っ掻き回すのは与次郎くらい。
それにしても美禰子は、三四郎の気持ちを分かった上であのような態度を取っていたと私は感じる。女性特有の承認欲求というか、本命から本質的に手を繋いでもらえないさみしさを、他の男からの好意を仕向けて埋めようとしたんだろうな。完全な思わせぶりと呼ばれる行為。無意識の偽善者だと称されているけど、これは違う。完全に意識的な犯行だ。三四郎があまり積極的でない人間だから、何を起こすこともないし、自分も大事なことは起こさないようにコントロールできるし、だったら永遠に本命にもバレずさみしさを埋められる、ずる賢い相手の性質まで読んだ上での犯行。

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2025年05月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

惹きつけられ、何故か夢中で読んだ作品だった。本の前から動けなくなる。
三四郎の失恋が切ない。上手く言語化できないが、心が動く作品。

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2024年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

構成がしっかりしてて楽しかったです。
一通り読み終わり、付箋箇所を中心に読み返しただけでも、色んな伏線があったことに気付けて面白いです。

読んだ方はお分かりの通り、美禰子のああいった行動で三四郎の恋は悲しい結末を辿るわけですが、150p付近ではこの結末の予見めいたことを与次郎が言っていて、要約すると「女はみんな乱暴、それはイブセンに出てくる人物のようだ」「しかし、腹の中がイブセンのようであって、表立って自由な行動はとらない」「どんな社会だって陥欠のない社会はない」とあります。
自由な行動ゆえに三四郎の心を惑わす天真爛漫な美禰子が、社会の慣習に逆行することなく結婚の話をすんなり受け容れ、三四郎の心を切り裂くストーリーを予見しているかのようです。
そしてまた、この予見を与次郎が話すことによって、終盤語られる与次郎への広田先生評「親切に加え要領がいいが、終局にいくとめちゃめちゃになる」につながっている所が趣があります。

こういった視点で見ると無駄がなく手堅い構成は他にもいくつか散見され、気づいていない箇所も沢山あるんだろうなと思いました。

また個人的好きなのは漱石の"三四郎"という人物の描き方です。感情的な言動/行動をする人物として表立っては書かれていないと思うんですが、様々な出来事を通してコロコロと心情が変わるところをみると、どこにでもいる若い青年/青く田舎ものの九州男児の感があって可愛い所があります。

例えば、東京に来たての時は故郷からの母の手紙を疎ましく読んでいたのに、東京がつまらなくなったあるときには嬉しそうに母の手紙を読んでいる。こういった、人物の心の変遷をいちいち説明せずに、行動や言動を通して上手く感じさせる、あるいは匂わせるところにも漱石の凄さが詰まっているなと感じます。

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2023年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初めて美禰子に会った時の「何を見ているんです」「当てて御覧なさい」が沼の入口を感じさせる、いい女感。
三四郎の「ただ、あなたに会いたいから行ったのです。」いつの時代もストレートな言葉は刺さるね。
見かけただけの女に運命を感じてる広田先生よい。
可能性を感じさせられるとやめられないですね。

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2025年11月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

夏目漱石の青春小説。坊っちゃんとは反対の構図(都会から田舎、田舎から都会)で描かれる、学生時代の話。

三四郎と周りを取り囲む人々(世間に駆けて騒がしい与次郎、少し浮世離れした先生たち、三四郎が恋をする女性)が、三四郎の視点で描かれる。
俗世間と精神世界、その中での恋愛感情を、明治の雰囲気と共に「一種の感じ」を持たせてくれる本。

好きなフレーズ
「今の思想界にいてその動揺の激しい有様を目撃しながら、考えのあるものが知らん顔をしていられるものか。実際今日の文権は全く吾々青年の手にあるんだから、一言でも半句でと進んで言えるだけ言わなけりゃ損じゃないか。〜進んで自分からこの機運を拵えあげなくちや、生きてる甲斐はない。〜新しい我々の所謂文学は、人生そのものの大反射だ。文学の新規運は日本全社会の活動に影響しなければならない。また現にしつつある。彼らが昼寝をして夢を見ている間に、何時か影響しつつある。恐ろしいものだ。」(与次郎)

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2024年05月31日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ストレイシープ…
人が何をしたのかとか、状況の描写がとても多く、心情の動きみたいなものについて触れられてる部分が少なく、解説を見て当時夏目漱石はそういう書き方をしてたんだと納得。三四郎が美穪子をどうして好きになったのかとかそういう描写はなく、ただ人と人と話したこと、周りがどんな状況であったか、三四郎がどう反応したかとかが淡々と、詳しく書いてある。
三四郎は東京帝国大学に上京までして勉学に励むのに何事も受け身でもったいないなぁと思ってしまった。かと思えば、口数も少なくて自分の意見を言語化することも苦手なようだし、度胸もないし、自分のそんな性格をわかって最初上京した時に不安になったのかなと。
彼に学問を究められるか?その後が気になるなぁ。

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2024年09月12日

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