あらすじ
『言語の本質』(中公新書)で
「新書大賞2024」大賞を受賞した
今井むつみ氏の書き下ろし最新刊!
間違っているのは、
「言い方」ではなく「心の読み方」
ビジネスで 学校で 家庭で ……
「うまく伝わらない」という悩みの多くは、
「言い方を工夫しましょう」「言い換えてみましょう」
「わかってもらえるまで何度も繰り返し説明しましょう」では解決しません。
人は、自分の都合がいいように、いかようにも誤解する生き物です。
では、都合よく誤解されないためにどうするか?
自分の考えを“正しく伝える”方法は?
「伝えること」「わかり合うこと」を真面目に考え、
実践したい人のための1冊です。
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Posted by ブクログ
今年度は10名弱のメンバーと一緒に仕事していましたが、私にとっても初めてのことや、確信をもって正しいと思える判断がなかなか出来ない仕事が多く、
指示や意図をうまく伝えられていない実感があったので、久しぶりにコミュニケーション系の本を読みました。
学びがいくつもあり、良かったです。
以下、印象に残ったところ。
・日頃ひとまとめに「コミュニケーション」と呼んでいるものが、実は様々な認知の力(言語を理解する力、文脈を把握する力、記憶する力、思い出す力、想像する力など)に支えられている(P3)
・知識や思考枠組み=スキーマ。個々人によって異なるスキーマが、コミュニケーションのバックグラウンドで機能することにより、100%互いに意志疎通ができることはない。
・スキーマは、外国語学習でもよく分かる。「着る」と「wear」は完全一致しない(P34)
・記憶するには、丸暗記より、「理解」というプロセスを経た方がスムーズであり記憶しやすい(P84)
・議論が噛み合わないとき。手を変え品を変え丁寧に説明するのではなく、相手がどういう視点からその意見を言っているのかを読み取り、それぞれの懸念を払拭すること(P111)
・「神聖な価値観」の危険性。「熟慮して出した結論だと見せかけて、実は厄介な細々とした因数分解をする手間を省いて自分の価値観から自動的に結論を持ってきただけで、証拠を吟味するなどの思考はほとんどまったくといっていいほどしていない」(P141
)
・「信念バイアス」に気付くには。価値観ではなく、結論に焦点を当てること。価値観を重視するが故におかしな結論になっていないか?(P144)
・「連携しておいてください」?「AチームとBチームで今週中に話をし、なんらかの結論を出しておいてください」(P160)
・相対主義の罠。すべての問題において、「それぞれ違っていて、それぞれいい」という立場が行きすぎると、重要な判断ができなくなってしまう。「多様性の中でどれが合理的か」と考えることを放棄してしまうことにもなる(P162)
・直感による意志決定「システム1」と、時間をかけて熟慮する「システム2」(P180)
・数字に疎すぎる人。数字という抽象と、お金や時間という具体がうまく紐付けられていないのかも。(P223)
・ビッグデータは抽象のおかげ。もし抽象化せず、一つ一つを個別の存在として捉えていたならば、新しい出会いのたびに膨大なデータを思い出して、目の前のものと対照するといった作業をしないと正しく認識できない(P226)
・我々はコミュニケーションにおいて、常に相手の意図に気を配っている。それにより、最初から何もかもを説明されなくても、やり取りを通じて相手の目的を理解できる。ただし、目的がすり変わってしまうと問題を起こす。意図や目的ではなく、人の気持ちへの配慮を優先してしまうと、忖度として問題行動を引き起こしてしまう。(P244)
・分析力がない人はただ失敗して凹むだけで、失敗を重ねることになる(P256)
・やらかしの報告が来たら、ポジティブに振る舞う。なぜなら、相手はやらかし報告の時点でネガティブな感情を抱えている。ネガティブな感情があると、相手の些細な行動もネガティブに脚色され記憶に残ってしまう(P280)
・「達人の直観」を育てるのに必要なのは、長時間に及ぶ「真剣で工夫を凝らした訓練」。システム2による集中した訓練を長期間行うことで、精度の高いシステム1思考ができるようになる(P294)
Posted by ブクログ
非常に分かりやすくて読みごたえがあった。
なんでこの本を読もうかと思ったかというと、
タイトルの通り「なんで伝わらないの?」って出来事が
身近で起こるようになってきて、その理由を知りたかったから。
でもこの本を読むと、伝わらないというのは奥が深く、
数字を見せれば伝わるわけでもなければ、
手を替え品を替えやっても伝わらないときもある。
それぞれが生きてきた道によって常識や思い込みがあり、
また覚えていたことでも記憶がすり替わることなんかもあって、
正常な伝わり方をしないことは多々あるということが分かる。
これは何も、相手にだけ当てはまることではなく、
誰しも当てはまる話である。(もちろん自分にも)
「自分は話せばわかる人間だ」というのはそれ自体が思い込みであり、
私に対して周りの人が既に「こいつ何回言ってもわかんねーな」と思っている可能性もある。
じゃあどうすれば伝わるのか、というのが一番肝心なのだが、
これが本当に難しくて、
私がこの本から読み取ったのは「自分だけの力では不可能」ということだ。
自分が相手に分かってもらいたいとどんなに手を尽くしても、
相手が自分の常識や知識を疑うこともせず、
相手の立場を慮ることもなく、
そもそも理解しようとしていなければ話はどこまでも平行線なのだ。
出来ることは、今後自分が変なバイアスまみれにならないようにするだけ。
もうそういう奴は捨て置いて私だけ高みに行かせていただきます、
くらいの精神力を持たないと今後しんどいかもしれない笑
解決策がない、と思った点で星3つにしたが、
本来であれば学びが多く星4つつけていたと思う。
現在の悩みが解決しなかった…という落胆で星を下げて申し訳ない。
今このタイトルにあるような悩みに直面していない人でも、
一度は読んでみてほしい本なのは間違いない。
Posted by ブクログ
なんというか、いろいろとショックでした。
先ずもって、『話せばわかる』は幻想、と、私の思い込みを一刀両断(泣)。
氏によると、(完全なる不可知論とまではいいませんが)人間は違った「スキーマ」(思考システムのようなもの)を持っており、そもそもが話をしても伝わっているのかどうは分からない、と。違う色メガネをそれぞれかけて同じものについて語るようなイメージでしょうか。
例えば、外国語というのはまさに全く異なったスキーマであり、当然日本人は外国人と素では会話はできない。あるいは世代間ギャップなんて言いますが、同じ日本人でも話がかみ合わない。あるいは男子と女子でも話がかみ合わないことがある。これらはすべて「スキーマ」の違い、ということができる。
・・・
もう、粗々に結論をまとめると、コミュニケーションにおいて必勝法はなく、手探りで工夫と努力を重ねるしかない、と。
スキーマがキーなので、相手の立場(スキーマ)に配慮して話す、また相手にも我々(ないしカウンターパート)の立場(スキーマ)に立って話してもらう、とのことでした。
なお、外国で働いたことのある方の経験談として、間違えようのない明確・明白なマニュアル(やチェックシート・手順書)を用意する、というのがありました(移民が多くて多様なレベルの方が職場にいらっしゃったら確かにそうですね)。まあそうですけど。。。
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でまあ、これを読んで、仕事そっちのけで自分のプライベートで頭くらくら。
うちは国際結婚、家庭内言語は日本語です。
まあ、家内の日本語はうまくないし、外国在住でどんどん劣化していきます。うすうす分かってはいましたが、一生理解しあえないかもしれない、というのを専門家から言われ改めてガーン、と。
多分風邪だろうなと、ごまかしながら頑張ってきたけど、熱を測ったらやっぱり風邪だった。それが分かったらもう頑張る気が失せた、みたいな。
ただ、これは言語もさることながら、個々人でスキーマが違うというのだから、正確には言語の違いによらないはず。言語の違いは一番分かりやすい例ですがね。
家内とは知り合ってもう30年も経とうというのに、やっぱり日々ぶつかることがあり、これが今後一生続くと思うと、昔流にいうとorz。
逆に、未だにこじれた母親との関係も、スキーマの違いに私は全く配慮しなかったと考えればこれもまた納得。
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あと、絶賛くすぶり中の部下。
彼女とは、これまで禅問答のような会話ばっかりして、結果として結構イジメてしまいました。
私も同じ局面を経験し苦しかったのですが、その苦しみの先に「悟り」ではないですが、やっぱり経験と思考・試行を経て分かったものをメンターに与えて貰えたと今でも感じるのです。私も彼女には「悟」ってほしい。故の、考えてほしいがための禅問答。
でも、本作のミスコニュニケーションへの回答の一例は「明白なマニュアル」。
そうかあ…。
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先ずもって、そういうものを作る手間。めんどくさ、と、ため息がとまりません。
また、部下さんの考えないで指示に従えばOKというメンタリティが気に食わないのですが、これだと一生彼女の成長が見込めません。
スキーマの違いを克服するために、敢えて成長を促さない(けど意味が通じる)やりかたをするべきなのか。
確かにそれも考えていました。もっとプロセスを細分化して、明確な手順を設定し、考えなくてもミスしない。そういう方法。
ただ、これだと「何故手順が変わったか」「イレギュラー事項の意味合いは?」みたいなものに極端に弱くなります。そしてきっと、仕事は断然詰まらなくなると想像しています。
それとも、言われたことをやるだけの詰まらない立場に追い込み、奮起を促すとか?
もう、どうすればいいんだよー。
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とういことで、認知心理学ついての今井氏の著作でした。
科学的知見の最前線の内容を当然のごとく提示されたのですが、救いを求めていた私は、その結論に失望を隠せませんでした。
同じような不可知論的な議論をウイトゲンシュタインやフッサールがやっていたと思いますが、哲学者は「分かり合える」希望・理論を捨てていないようにも見えました。科学は厳然としておりますね。とほほ。
あと、家族なら、それでも頑張って分かり合いたい。会社だけの関係でどこまで力を尽くすべきか、悩ましいところです。