あらすじ
ある医大が入試の採点過程で女子の点数を意図的に下げている――衝撃的な「噂」を耳にした新聞記者の檜葉菊乃は独自の調査を始め、理事の神林晴海に目をつける。巧みに追及を躱す神林だが、突破口はそこしかないと考え、檜葉は何度も攻め立てる。男性優位の社会で、共に無数の理不尽に直面してきた二人。それでも敵対せざるをえない彼女たちの闘いの行方は……。話題作、問題作を絶えず放つ著者が挑む、社会にはびこる差別の根源。
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Posted by ブクログ
2024/11/19予約 24
内密に行われていた医大受験の女子、多浪生の減点を記者の檜葉菊乃が追う。最終的な取材対象である大学理事の神林晴海も、女性差別の多い世界で生き抜いてきただけあり言質が取れない。ただふたりとも(特に仕事で)性差別されてきた為、思うところは同じ。他にも研修医制度や体力的な男女差など問題山積み。怒りや虚しさと共に、越えられない性差があることも現実で。差別は許されない。公平とはなんだろう、どうすればより良い方向に向かうのだろうか。考えることの多い読書でした。
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フィクションと書いてあるが、実際にあった医学部の話を思い出した。正しくない事が行われていると分かっていても、それを公にする怖さを乗り越えるのは大変だ。
公益通報をする人もどれだけの葛藤があるんだろうと、最近のニュースの事も考えた。
Posted by ブクログ
数年前に発覚した東京医大の女性受験生減点問題をモデルにした小説。主人公の女性新聞記者と女性大学理事それぞれの葛藤と二人の対決、二人を取り巻く古い価値観との対決、スピーディーな展開に一気読み。価値観やハラスメントについて考えさせられる一方でエンタテインメントとしても素晴らしい作品。「奈落で踊れ」然り、実際に起こった事件を題材にした小説が凄く上手い。
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読み応えのある内容だった。新聞記者の菊乃、医大の理事の晴海、それぞれ新聞社、医大で女性としての生きづらさを感じている。お互いにその苦労をわかっている。しかし、女子を差別する不正入試問題を介してふたりは対立せざるを得ない。
差別はいけないと不正を暴こうとする新聞社の内部では女性蔑視が横行していたり、医大では女子学生に対するセクハラを揉み消そうとしたり、男性に媚びて、上手くたちまわり今の地位を得た女性がいたり。
そういった事も細やかにストーリーに盛り込まれていて、フィクションであるが、考えさせられた。
-人間どこまで行っても差別がある。それを受け入れるのと、なんとかしようとするのは別。なんとか折り合いをつけるしかない。
というところが印象に残った。
最後は納得のラストだった。
Posted by ブクログ
最初から最後まで面白かった!
新聞記者の檜葉と、病院理事の神林。
2人の女性は、社会の中で女性を守りたい、差別をなくしたい…そういった根本の思いは一緒なのに、お互いの立場の違いで闘わないといけなくて。
その対決がどういう形で終わるのか、最後まで目が離せませんでした。
実際の日本社会にもありそうなストーリーが、余計に物語にのめり込ませてくれて、読み応えがありました〜!
Posted by ブクログ
パワハラ、セクハラ、アカハラ、ジェンダーギャップにルッキズム…社会に蔓延る差別が天こ盛りの物語。未だ自己をアップデート出来ず、他者を傷つけ、不正を正当化する人間がぞろぞろ登場。立場の弱い者が一方的に我慢を強いられる描写に憤る。が、檜葉菊乃と神林晴海は強かった。二人はポリコレ意識が高い。我欲を捨て、信念を貫く二人の姿に刺激を受けた。
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まだ記憶に新しい、医学部を目指す女子学生と多浪生に対する一律減点の不正入試。
自分は男女雇用機会均等法はできたけれど、まだまだ企業も社員の理解も浅い頃に新人だった世代。
均等法は名ばかりで、結婚や出産で退職(産休ですら公務員以外は肩身が狭かった。)するのが珍しくなかったし、退職しないウザい既婚女性は均等法の名の下に遠くへ転勤の辞令を出して退職に追い込むこともあったり。
物語にもあるように、マスコミとか一流大手企業とかもフツーにやってたな。
ごく一部の頑張った女性たちが裁判とか起こしてやっと今少しマシになってきた。
医師の世界で女性は使いにくいとか男性の方が体力も力もあるし働けるという現実はわからなくもない。
そうじゃなくて《女性だと働き続けるのが難しい状態》を考えないと。医療の世界だけじゃないけれど。
〜「でもさあ、きれいな娘にきれいだって言うのがよくないなんて、それって、なんかおかしくねえか」
〜中略
俺達はハゲだデブだってよく言われる」〜中略
ところが女の場合はけなすどころか、褒めることすらダメってのはどうなんだ?女だってイケメンのアイドルグループを『推し』とか言って消費してるわけだろう?」
うんうん。それは自分も以前から感じてた。なんか色々面倒な世の中だね。
何を《対決》してるんだろう、みんな。
みんなが納得できる社会が理想だけど、まだまだ課題は山積みだ。
おもしろかった!
Posted by ブクログ
主人公の檜葉菊乃さん(ヒバキクノ)の読みが難しくてちょっとひっかかってしまった。
でも、コレって実際にあった話なのかな?と、読み始めたら止まらなくなった。
出来る新聞記者の女とこれまた出来る医大の女理事とのバチバチのやりとりが面白い。
2人とも私とは全然違うタイプだけれど、女性ならずとも、弱い立場、下の立場に見られたことのある人ならば、誰しもが感情移入して読めるストーリー。
令和になってもまだまだ古い体質の日本社会の中で、涙をぐっとこらえ、強く賢く生き抜く女性2人に拍手を送りたくなる。
Posted by ブクログ
医大の入試採点過程で、女子と浪人生の点数を意図的に下げている
そこを狙う新聞社
新聞記者の菊乃と、医大の理事晴美
記者と医大の対決というより、この2人の同世代の女性同士の対決のようにも感じ取れる
途中まで、女性の自分は胸糞悪い気分になるくらい、出てくる男性陣のハラスメントの数々
著者はまるで女性かと思うくらい、女性の経験した事柄や感情をうまく表している
対決の結果としては、スッキリとする書き方ではなかったものの、現実社会において実際の不正入試にスポットを当ててあるところは興味深く読めました。
Posted by ブクログ
東京医科大学など中堅私立医大の女子、多浪差別をモチーフにした話
特大スクープを狙う中年女性記者と大学を守ろうとする事務局出身の女性理事の対決
女性差別とは、そもそも差別とは、という難しいテーマにも過度に深入りしすぎず結論も出さず、程よい距離感で書かれており、最終的にハッピーエンド感があってよかった
もちろん相当盛られているのだろうけど、実話?
Posted by ブクログ
かなり前から読みたいリストには入ってたが、なかなか機会がないまま、先月本屋で見つけ購入。月村了衛さんの本はずいぶん前に“土漠の花”を読んで以来。しかし全く違うタッチの本。
“女性差別”については最近あちこちで話題に上がってる場面を見る、それこそドラマでも。
本のタイトルから二人の女性の“対決”を中心に進められて行くのかなぁと思いながら読んでましたが、二人は最初の第一印象からお互いどこか理解し合える存在やんと感じながら読んでると結局最後は“同志”になってた。
小山内先生が語りかけるスマホ動画を神林晴美が見入るシーンは泣けた、涙が出てしまった。
こういう世直しストーリーはほんとに痛快!
“対決”っていうタイトルは、二人の女性、檜葉と神林との“対決”ではなく、“世の中の全女性”と“社会”との対決っていうのが真の意味での“対決”なんだろうなぁ。
Posted by ブクログ
女性差別に対する怒りと憤り。
様々な感情が腹の中をぐるぐる巡り、読み進めるのには体力が必要な一冊だった。
統和医科大学は入試の採点過程で女子の点数を意図的に下げている。
それを知った日邦新聞社会部の檜葉菊乃は調査を始めた。
そう、これは数年前実際にあった事件をもとにした小説。
信じられない差別に驚くが、読んでいくとその理由も見えてくる。
ハードな医療現場には、やはり体力のある男性の存在は大きいだろう。
少しでも多くの男性医師がほしい。
成程、確かにそうかもしれない。
しかし公平であるべき入試でのこれは許されない。
何も知らないで受験する女子学生たちが可哀想。
統和医科大学の理事・神林晴海は、医学部への進学には挫折したが、医大の事務局へ22歳で就職。
事務局員の理事就任、しかも女性という前例のない人事。
その神林晴海を追求する日邦新聞社会部・檜葉菊乃は43歳シングルマザー。
こちらも男性社会の中で戦っている。
二人とも本当に頭の切れる優秀な人物で、対決する度にどちらも相手の方が一枚上手だと感じ、次回策を練る。
バチバチの攻防戦は読み応え抜群。
作中に
〝人間である限り、差別はなくならない〟
という言葉が出てくるが、私もそれが現実だろうと思う。
難しい問題…
Posted by ブクログ
月村作品を初めて味わった
10年ぐらい前だろうか、新聞を賑わしたことを題材にした作品
自分の生き方を考える機会になった人はたくさんいるだろ
女性も力付けられた人は相当いるのではないかと思う
Posted by ブクログ
裏口入学のスキャンダルに揺れる私立医大で、
以前から女性受験者の得点を一律下げて合否を
判定していたという証言を得た女性新聞記者の
檜葉。
裏取りを進める彼女が数ある取材対象者の中から
絞り込んだのは、同大学の女性理事である神林。
檜葉は神林から証言を得ようと接触をするが…。
男性優位の社会で、別々の場所で苦労を重ねた
二人が目指すものは同じなれど、立場の違い
から攻守入れ替わりつつ重ねる舌戦が見所
でした。
ハラスメント防止が認知されて久しいですが、
未だに旧態依然で組織に蔓延っている実態を
思い知らされると共に、「ならばどうするか」を
考えさせられます。
また、登場人物達も俯瞰してみれる読者から
すれば一見アウトに思える人も、話が
進んでいけば簡単に断罪はできるものでは
ないと思えます。今作が一筋縄ではいかない
テーマを扱っている証左ではないかと思います。
Posted by ブクログ
ちょっとというかかなり衝撃を受けた。
不正入試問題を題材にしているけどそれにも増して差別(特に女性差別)に対する内容が凄かったし、これでもかと描写していて興味深かった。
中盤くらいまで読み終えて、これいつの時代の話なのって思ってしまうほどの女性差別。
個人的には組織に属した仕事をしているわけではないので普段そういったことを感じることが少ないのはある意味恵まれていると考えて良いのか、それとも無知として恥じるべきなのか。
SDGsやコンプライアンスなどを声高に叫んでいる大企業なんかの方がむしろ蔓延っているのではと邪推してしまうところもあったりして結構考えさせられた。
檜葉と神林のやり取りはまさに表題通りだが、バチバチにやりあったなかでお互いを認め合い戦友のようになっていく過程は読み応え十分で心に響いてきたゼーッ!!
Posted by ブクログ
医大の裏口入学を追っていた新聞記者の檜葉菊乃は女性への差別不正入試というネタを拾う。しかし、証拠は何もない。誰か証言してもらえる人は?菊乃は異色の理事、神林晴海に目をつける。同じ女性差別という社会の闇と戦い続けてきた2人の女性の対決を描く。菊乃は医大を目指す娘のために何としても、この不正を暴きたいと願う。
医大と新聞社、どちらも男社会。その中でのしあがるのは並大抵ではない。お互いの戦いに思いを馳せる2人の独白は、今もガラスの天井に苦しむ女性たちの胸につきささる。どうしてその場で嫌だと言えなかったんだろう、どうして迎合したり忖度したりしてしまったんだろう。何度も登場する言葉は多分、働く人には誰にもある後悔、自己嫌悪。
過去の社会問題に材を取り描かれた作品で、結論は何となく見えているのだが、読み応えあるものとなっている。
新聞社の仲間の家庭の状況で若い人たちの悩みや後悔がさりげなく描かれ、医局制度がなくなった事による医学会で起きている変化など外からはなかなか見えてこない現状がわかった。
働き方改革はまだまだこれからと思う。誰かだけや大企業だけが得をする仕組みは社会を疲弊させるだけ。
Posted by ブクログ
社会問題になった事件、考えさせられることが多く、唸りながら読ませてもらった。
今の時代制限が多く生きづらくなった・・・、
と、嘆く一方で、
差別や蔑視などの旧態依然の体質にも呆れてしまう。
今作は、ドラマ化しそうな予感あり。
Posted by ブクログ
差別と区別はたいてい明確で、今作では実際あった社会問題を双方の視点からほこたての要領で攻防させ、人物像含めとても読み応えのある作品として受け取った。しかしながらグラデーション的にいくつも議題が提供されており、線引きは難しいが結局は当人同士の関係性でしかない上にコミュニケーション不足に起因することが主じゃないかと。個々人の関係を他人が論じるのは是非もなし。ただ現代人がどんどん声が大きくなるの、ちょっとしんどいとは思ってます。
Posted by ブクログ
医学部入試で女子である事を理由に減点していた事件が、確かにあった。公になったのも裏口入学からだったような?出てくる女性たちは、それぞれに男女差別を経験として語ることで物語が展開しています。
Posted by ブクログ
この人の作品だからページをめくるのを止められないのはいつも通りだけど、そろそろ機龍警察の続編を読みたいという気持ちと、2018年に発覚した東京医大の入試における女性差別問題が、きちんとまとめられないままに忘れられつつある現状では、この作品は貴重だと思う気持ちが相半ばした
Posted by ブクログ
2018年の医大不正入試事件をベースにした社会派小説。
タイトル名からもっと大きな対決軸と思っていたが、報道記者と医大理事との女性対決だった。
女性差別と企業腐敗の複合問題がテーマになっているので結構複雑な課題だと思いました。
女性差別は自分が社会人になった時に男女雇用機会均等法ができたので、結構気にしているテーマですが、自分も男性なのでどこまで女性差別に対して当事者意識をもっているのか、過剰反応して逆差別になっていないか、などと悩むこともあります。
また、企業腐敗、不正隠蔽の問題も社会的にはあり得ない企業内ルールが、第三者からの指摘を受けて崩壊するのは現在も引き続いて起きていることです。
第三者代表が報道記者で、企業代表が医大理事としてとらえると、それぞれの立場や言い分も理解できなくはないものの、ハラスメントも含めて差別や不正の問題はそのために不利益を被る人がいるので、早急に対応するべきだと思いました。
Posted by ブクログ
私立医科大学の裏口入学事件を発端として明るみに出た、入試における女子・多浪生への意図的な減点という不適切な事実。
この事実を追う新聞記者の檜葉菊乃と、大学理事の神林晴海の“対決”。
大学病院とマスコミという完全なる男社会で生き抜いてきた二人の女性の対決は、根っこの部分では同じ葛藤を抱えているという点ではなから決着はついていたんだろう。
ただ、女性差別の問題を女性同士の対決に持って行ったやり方は好きじゃない。
女性差別発言を繰り返した檜葉の記者仲間が、自分の身に降りかかって初めて問題に真面目に取り組むところが象徴的だなと思った。
やっぱり、差別をなくすには当事者意識が欠かせないってこと。世の中には様々な差別があって、それがいつ、どんな形で自分に降りかかってくるかもしれないのだから。
Posted by ブクログ
医学部裏口入学事件から女子受験生多浪人生に対する採点点数変更がわかった
そこで事務局上がりの理事神林と新聞記者菊乃
男性優位の社会で2人の女性がそれぞれ思う女性差別をなくすためにぶつかり闘う
思いは同じ女性差別をなくし維持向上
Posted by ブクログ
▼月村さんという作家さんは初めて読みました。エンタメ犯罪警察小説、みたいなところを主戦場とされているキャリアの小説家さんのようですね。これはまあ、言ってみれば「記者モノ」。
▼数年前に実際にあった、
<医科大学が、軒並み、女子学生は一律減点して、つまり男子をえこひいきして合格者を出していた>
という案件が、言ってみればスクープされるまでの物語。ネタは事実で、物語はフィクションなんでしょう。
▼何が「対決」かというと、
報道しようとする側
<全国紙の社会部の女性記者=シングルマザー40代後半くらい?>
VS.
隠蔽しようとする側
<有名私大医科大学の女性理事(医師でなく事務方から這い上がった)=未婚50前後くらい?>
という、どちらもつらい思い悔しい思いをいっぱいしながら、ずーっと男性優位職場で働いてきた女性同士の対決。
このふたりの心情のうつろい、気持ちの描かれかたが、いちばんの美味しい料理です。
▼一方で、正直に言うと横山秀夫長編小説に比べれば。
全体のウルトラジェットコースター的なあの手この手な見せ場とミステリーの連続性・・・という見地では、劣ります。
つまり割と「中編」的な味わいの、一本線のスキッとしたお話です。
それはそれでそれなりには楽しめました。
▼難しいな、と思うのは。
こういう題材になると、女性作家からすると「男にかけるかよ」
という噴飯な感情はあるだろうなあ。
ただそれはそれであんまり言っちゃったら
「あなたたちが嫌いな者たちの言い草を、自分でするんですか」
ということになるよなあ。うーん。
じゃあ女性作家が、初老男性刑事とか探偵の「人生の秋」みたいなものを書いたら・・・うーん。
まあでも面白いものは残るだろうなあ。
そういう妥当性はあるくらいの、マーケットの大きさはあるのではなかろうか。日本語小説市場っていうのは。
そう思いたいなあ(笑)。
Posted by ブクログ
ちょうど今、男女間格差について書かれている本も読んでいて、日本は政治でも経済でも世界に大きく差をつけられてることを再認識。
その問題とこの作品とどう結びつけたら良いのかなと、頭を捻りながら感想を書きつつあるけど上手くまとまらない。汗
作品のキーマンである、いち教授が決着の鍵を握っていたけども、その鍵を見つけだし扉を開く女性記者の執念には負けるな頑張れと応援しがいが最後まであった作品だった。
Posted by ブクログ
晴海の理事会世代の方が読んだらどう思うのかが気になる。
この作者さんは男性なのかな。
だとしたら菊乃並みの取材をなされたんだろうなーと感服。
私自身、男女差別に関してはしょうがないよね。と思ってしまってる側で不正入試の本音と建前はすごい分かる。
でも菊乃や晴海のように先陣を切ってくれる人がいることにも感謝しなくちゃいけないなぁ。と。
最後にでてきた有希恵の名前に、あなた急に誰?!?!とページを遡ったのが疲れました(笑)