あらすじ
罪を償っていれば、許せるか? 受け入れられるか? それとも、許せないのか? 揺れ動く心情を丹念に描き切った社会派ミステリー。『希望が死んだ夜に』の著者が挑む新境地——。横浜に本社を置くオオクニフーズの相模原支社に勤務する藤沢彩は、子どもの頃から自分の感情や思考を言葉にするのが苦手だ。その性格もあり引っ込み思案で人との付き合いが苦手な彩だったが、仕事のことで思い悩んでいた時に声をかけてきた一年先輩の同僚社員・田中心葉に次第に惹かれていく。心葉と同期の佐藤千暁とも次第に交流ができ、三人はそれぞれ十年後も二十年後も一緒にいたいと願うようになっていた。そんなある日、心葉が会社の朝礼で、何の前置きもなく「ぼくは人を殺したことがあります」と発言したことで、絆は揺らぐ。そして千暁にも、兄が殺された被害者遺族という人に言えなかった過去があった……。
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Posted by ブクログ
罪の十字架という言葉あるけど
それは被害者の関係者家族、
当人とその大切な人にものしかかる
言葉にするとありふれてるけど
更生しても償いたいと思っても終わることない罪悪感
被害者家族も、忘れたくても、忘れてはいけないという罪悪感
よく最大の復讐は、自分が幸せになることだと言うけど、現実は、忘れて幸せになってはいけないのではないかという葛藤
落とし所はなく
ずっともやもやしたものを抱えながら
人生って進むんだな
Posted by ブクログ
昔読んで印象に残っている「あの子の殺人計画」と作家が同じだったことと、タイトルに惹かれて選んだ。
読んでいる間ずっと複雑な気持ちだった。もし私が気になっている人、大切な人が殺人の過去を持っていたら私はどうするだろう。過去のことだと割り切ってそのまま過ごすのか、やはり恐怖や軽蔑の感情を抱いてしまうのか。ましてや千暁のように友人だと思っていた人が兄を殺した犯人だったとしたら。心葉のように反省して、更生していたとしても許せるだろうか。「過去」って難しいと思った。過去と今は違う。でも「いま」は「過去」の延長なのだから無関係とは言えない。彩が気づいたようにそう簡単に割りきれるものではないのだろう。そしてこの物語で印象に残ったのは心葉と角南の対比だ。角南は手紙で反省の色を見せつつも、すべてを参蛇亜の所為にしていた。きっと角南はこれからも自分の罪から目を逸らしながら生きていくのだと思う。一方心葉は、言葉を学ぶことで人の心を知って、まっとうに生きている。親や友人の所為にすることもできただろうに。両者は人を殺した、という罪は同じなのに向き合い方が全然違う。周囲の人や環境の所為にするのではなく、真摯に受け止め向き合うことが人生には必要なのだと感じた。
Posted by ブクログ
子供の頃から自分の言いたい事を上手く言えない不器用な藤沢彩。仕事で行き詰まっていた時に声を掛けてくれた先輩・田中心葉。徐々に仲良くなっていき、心葉の同量・佐藤千暁とも交流が出来て三人で海にドライブへ行く程の仲になっていた。そんな中、心葉が朝礼で「過去に人を殺した事がある」と言い出して…
彩の不器用だけど一生懸命心葉を信じようとするひたむきな姿に応援したくなりました。
単純に、心を入れ替えて過去は過去って割り切って終わりかと思いきや、怖いと言うのがリアルでした。決して信じていない訳ではないけれど、単純にハッピーエンドっていかない所が何とも言えずビターだけど納得でした。
千暁も実は関係者で、それが皮肉にも仲良くなった同僚とは…千暁の母を殺した犯人も意外でした。
Posted by ブクログ
タイトル通り考えさせられる作品。
彩が真摯に人と向き合う姿勢が好もしい。与えられた仕事に誠実である様子も。彩と心葉と千暁の、互いを気に掛ける関係も心地よい。そして、三人の上司である宇佐見部長がこれまたいい人で、いい会社である。
大切な相手だったからこそ、殺人を犯した過去は重い。それだけではない関係がわかってしまったことも辛い。
一般論としては、加害者の更生を認める社会のほうが、生きやすいと思う。
ただ、それを許せないという被害者側の心情は理解できるから、彼らがそう思うのは自由だ。
加害者側は謝ることしかできない。それを受け入れるかどうかは被害者側の自由。
そこに乗っかっていくお騒がせ第三者がただただ不快。YouTuberばかりでなく、事件があるとわいて出てくるカスハラもどきの苦情屋さんたちも。文句を言いたいから言うだけの人たちを見ると、小人閑居して不善をなすという言葉が頭に浮かぶ。
三人も、心葉の更生を支えた人たちも良識のある人たちだからこそ、真犯人が彼でよかったと思ってしまう。
Posted by ブクログ
藤沢彩はフードバンク事業の会社、オオタニフーズに就職します。
そこには何かと親切にしてくれる同年齢の男性社員、田中心葉や佐藤千暁がいて、彩は二人に相模湖に誘われて車で遊びに行ったりする仲になりました。
彩は心葉に好意を抱いていました。
しかし、10月16日の朝礼で心葉は言いました。
「ぼくは人を殺したことがあります」
なぜ、心葉は自分からそのようなことを言ったのか…?
十年前心葉は中学二年生、コンビニで喫煙を注意され当時は田中参舵亜(サンダー)という名前でした。注意した十九歳の大学生雲竜陽太郎19歳とトラブルになり誤って殴って殺してしまったのでした。
心葉は、まだ13歳だったので少年院に入り更生して働いていたのです。
そしてオオタニフーズに掃除にきて働いていた石原美月という主婦が亡くなり、美月は心葉が殺してしまった、陽一郎の母親だったことがわかります。
そして、なんと千暁は美月の息子であり、陽一郎の弟でもあったのです。
心葉は美月の遺体の第一発見者で、心葉が美月を殺したのではと疑われてしまいますが…?
ありえない人間関係だと思いましたが、このストーリーを読んでいると、そういう偶然もあるかもしれないと思えてきます。
千暁も実は彩に好意をもっていて、心葉との三人の三角関係は読まされました。
彩の心葉に対する好意は事件後にも消えることなく、千暁と二人で真犯人を追いかけていきます。
Posted by ブクログ
タイトル通りの話。どうしますか?どうするもこうするも、どうにもできないだろう。実際、大切な人に殺人の過去があったという事実が起きてみなければ勿論分からないと思うし。
でもそうなってしまったとして、大事なのは「誰の味方になるか」ではなく「誰を信用するか」なのかもしれない。結局、人は自分の信じたいものを信じるしかできないのだから。
兄を殺された立場で加害者と普通に接することのできる千暁が、私にとってはこの物語中、最も気になる人物だった。
母親にも加害者と一緒にいることを責められつつも、加害者を根っからの悪人ではないと信じたい気持ちも持っている。凄く難しい立場だ。
過去のことを全て忘れる能力があれば千暁はどんなにか楽だっただろう。
千暁の母に関しては本当に無念。こちらの加害者に関しては同情の余地なし。自分の人生と他人の人生を天秤にかけ、自分を優先する所業も見ていられない。無事、逮捕となり一安心したが、千暁の母の存在は、今後の心葉に対して良い意味でも悪い意味でも影響が大きかったと思うと、やはり生きていてほしい人物だった。
Posted by ブクログ
他の方の感想でもあったが、題名から想像していた内容と違っていたことと、またそれが美月さんを殺した犯人も含め『ん~!?』と個人的には消化不良だったので内容についてこれ以上書くことは無いかなと…
ただ題名にある『あなたの大事な人に殺人の過去があったら…』ということだが、『大事な人』とあるので今作のように同じ職場の人(近くにいる人)で友達以上の感情(ある程度深い関係)を持ち合わせているような人であり、その殺人に至った経緯(今回は突発的)、殺意の有無(今回は当時明確な殺意が結局あったのかなかったのかが『?』)、本当に反省・償いが出来ているのかによって考え方・接し方は変わってくるのではと思う。(自分が彩の立場だったとして)
ただ千暁の立場(20代前半)だったら、(今の私は50代だからある程度律することもできると思うが)親しくなってから知らされたとしても、普通の感情ではいられないでしょうか。
結局彩と心葉、千暁は別々の道を歩むようだが、これ以上お互いがお互いの心情を探りあっていくよりは、その方がスッキリとするのではと思う。(忌み嫌いながら分かれるのではなく適度な距離感として)
それだけいわゆる覆ることのない『十字架』を背負って生きる意味というのは重く、正解というものはなく殺めた人もまた殺めた人に接する人々にも一生をかけてずっと問いかけていくものだと思う。
Posted by ブクログ
殺人犯の家族の人生に焦点を当てた、東野圭吾さんの『手紙』を思い出しながら読みました。
一方の本作は、殺人犯、被害者家族、一般の方の三視点があって、非常に興味深く読めるミステリでした。
それぞれの立場を上手く使って、心理的なミスリードに上手くやられたな、の気持ちです。
更生していてほしい、と祈りながら読んで、最後にやっとひと息がつけました。
犯罪ひとつ、悪意ひとつでこんなにも……。
読んでいてスッキリする物語ではありませんでしたが、得るものは確かにあった、と感じる1冊でした。
Posted by ブクログ
74/100
んやー、星5にもいきそうではあって惜しかったな…っていう本でした。
心理的ストーリーが星5だった。仲良くなった人が、殺人事件を起こしたことがあると言われると、確かにこの感情になるよな…でもそんな簡単に割り切れないよな…と凄く辛くなり、読んでいて涙を流した。「過去は過去、今は今」この言葉では割り切れなくて自分もすごく悩んで辛かった時が実際にあったからこそ感情移入したセリフ。そしてラストの「いつの日か」。これは先程のように時間で割りきれないけど、時が解決してくれることもあると伝えている一言である。
その一方で、ミステリーのストーリー性があまりにも陳腐になってしまった。え?こいつ誰だっけ?というあらすじに全然出てこなかったぽっと出のYouTuberが犯人であることを言われ、それの論理付、心理的感情が最後の3/4で慌ててされていても全然しっくり来なかった。一気に内容が浅くなってしまったのが勿体無い。
ミステリーとしてもっとちゃんと出来上がっていたらだいぶ評価が高かったと思う。
Posted by ブクログ
中学2年の時殺人を犯した心葉、父親からはっきりしない子と言われた彩、心葉に殺された被害者の弟の千暁。同じ会社で親しい3人のそれぞれの視点で、新たに起こる殺人事件。誰が犯人かというミステリーとしても面白いが、育児放棄された少年が犯してしまった犯罪からどのように考え立ち直り贖罪の日々を過ごすようになったかというところが心に響く。
タイトルが長い今の流行りだと思って読み始めたが、まさしくタイトル通りのことを考えさせられもした。