【感想・ネタバレ】感傷ファンタスマゴリィのレビュー

あらすじ

十九世紀末のフランス・パリ。職人ノアは、故人の姿を見ることができる特別な幻燈機の製作を得意としていた。新たな依頼人は、鏡だらけの奇妙な屋敷で暮らすマルグリット。五年前に亡くなった彼女の妹シャルレーヌの過去を読み解くうち、ノアは姉妹の秘密に呑み込まれてゆく……。SFと幻想が融合した世界を紡ぎ続ける著者、待望の第二作品集。/【目次】感傷ファンタスマゴリィ/さよならも言えない/4W/Working With Wounded Women/終景累ヶ辻(しゅうけいかさねがつじ)/ウィッチクラフト≠マレフィキウム/解説=高原英理

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Posted by ブクログ

本書は空木春宵の第二作品集。東京創元社から創元日本SF叢書24として刊行された。この叢書の最新作は全て購入している。以前発行されたものは入手困難なので、いろいろ手を尽くして蒐集に努めている。

これまで空木春宵のイメージとしては、難読文字と当て字ならぬ当てルビでとても読みにくい酉島伝法系のSF作家だと思っていたが、酉島氏よりはそれらが幾分緩和されているようだ。基本的に、知っている漢字の方で読み進め、解らない時にだけルビを読めば良いと思っていたが、やはりどちらにも目を通した方が理解力が深まる。ぶっちゃけ、ハッキリ言って読みにくいが、我慢して読み進めると、自ずと内容の面白さに程なく気づく。なので、とにかく諦めずに最後まで読み切ることが重要である。
さて本書には5作品が収められており、どれも力作揃いの作品である。一つ一つじっくり感想を述べたいところだが、最小限に留める努力をしないと途轍もない長文になってしまう。なので、短くすべく頑張る。

<感傷ファンタスゴマリィ>
この本の題名にもなった作品であるが一番難解だった。約50ページと短いものの、もう一度時間をかけて読まないとこの作品を完全に理解することはできないと考える。特に前述のルビを如何に克服できるかポイントであろう。
<さよならも言えない>
この作品は既に Genesis で読んだ。その時に一発でこの作品の素晴らしさに感動し、特にテクノロジーのアイディアと人の心の揺れ動きの融合には驚くばかりであった。当時のインパクトが余りにも大きすぎたので、今回読んだ限りは新しい発見はなかったが、昔の感動の余韻、いや素晴らしさを再認識できて、安心しながら読み進めることができた。
<4W/Working With Wounded Women>
中編小説の長さなのだが、長さはあまり感じられず、もう一気に秒で読んでしまった。漫画やアニメではなかなか表現しにくい内容だが、主人公の微妙な心の動きに着目した内容に作り替えたらギリギリできるのではと思った。しかし、やはり直接的な痛みの表現無しでは作品の良さが伝わらない。小説で表現するのが一番バランスが取れているのかもしれない
<終景 累ヶ辻>
どうして同じ内容が何回も繰り返されるのかと思いつつ読み終えた。始点と終点が全く同じで、途中のルートが幾つも存在・発生するタイプのパラレルワールドの典型的な語法で展開された作品なのか?何か重要な仕掛けを理解できていない、読み落としているのではないかとも思った。機会があればもう一度読んでその重要性を探し出したい。
<ウィッチクラフト≠マレフィキウム>
この作品は改めて人間性、いやその様な単純な言葉ではなく人間の人間たる所以、如何に人間はあるべきか考えさせられる卓越した作品。魔女という言葉を使って差別の本質にメスを入れ、未だ日本で解決されていない現代社会の問題点をオタク青年を使ってうまく表現している。心の修行には終点が無いという残酷な結論も人間は学習しなければならない、人間の宿命に気がつかないと。

実は、「感応・・・」の方を読まずに、いきなり最新刊「感傷・・・」に飛び込んでみたが、一つ一つの作品が実に個性的なので、逆順で読んでも問題ないのではと考える。しかし、それよりも作者が寡作なので、作者の全作品を読み終えてしまったら、強烈な禁断症状が出るのではと恐れている。作品を読むことでドーパミンを溢れさせる、所謂「脳内麻薬生成小説家」という綽名を空木春宵氏にプレゼントしたい。

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2024年06月24日

Posted by ブクログ

短編集であるのが嘘かのように、1話1話読み応えと感動が残る1冊。
完全に表紙買いをしたものの、ここまでの当たりを引くことはなかなか無いように思う。
最初こそ後の展開に期待が持てるか不安な瞬間があれど、どの物語も後半に進むにつれてのめり込んでいく自身に気づく。
レビューが少ないからと侮るなかれ、1作目と併せて必読の2冊。

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2024年05月31日

Posted by ブクログ

SFカーニバルで空木さんにサインしていただいた♡

『感応グラン=ギニョル』から2作目の短編集。
空木ワールドでした!
痛い!容赦ない。
『4W/Working With Wounded Women』が特に…(^_^;)‪‪

どの短編も好きだが、
『ウィッチクラフト≠マレフィキウム』良かったなぁ。

表題作『感傷ファンタスマゴリィ』も、もちろんおもしろい!この短さでこの完成度の高さ、さすがです!

美しい文章。
幻想的なのにSF。ホントハマる♡

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2024年05月25日

Posted by ブクログ

小説が上手い。文体が美しい。そしてフェミニズムや女同士の関係性が主題になっている。読めてよかった。
古典モチーフのお話が好きなので終景累ヶ辻は楽しく読めたし、時代を超えても変わらない女たちの苦しみと主人公たちのシスターフッドに共感。4Wは特に好き。本当に小説が上手いんだ……この世の不平等をうまくSFの設定に落としている。ギブスンのニューロマンサーの世界観が好きな人はきっと好きな世界観。その中で生きる登場人物達の感情の動きもリアルで、物語の中でちゃんと生きてる感じがする。どんどん変化して前に進んでゆく主人公が物凄くかっこいいし、彼女がクィアであるところも当事者である自分としては非常に嬉しい。希望のあるラストが好き。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

SF短編集です。初読の作者さん。一編ごとに、作風が変わる印象。最初はルビの多さにゲンナリしたが、すぐに慣れた。5篇の短編の中で、一番心惹かれたのは最後の「ウィッチクラフト≠マレフィキウム」が、現代的なテーマを底に孕んでいて、身につまされた。やはり、「問い続ける事」こそが、身体と神経細胞によって規定されたわれわれ人類の最後の「背骨」なんだろうな、と改めて実感しました。ところで、この本は単行本には珍しく、解説がついている。高原英理さんだ。最後の、「ところで、ねえ、君も魔女にならないか?」という問いかけは大変魅了的だ。

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2024年11月09日

Posted by ブクログ

暫く我慢して読めば、むちゃくちゃ面白かったです!
文書や言葉がやたら難しく感じた感傷ファンタズマゴリがいちばん読むのに時間がかかりました。
4Wが1番個人的にはいちばん面白かったし、めくるページが止まりませんでした。色々と考えさせられた話でした。
さよならも言えないとウィッチクラフト≠マレフィキウムも面白かったですし、考えさせられる話でした。

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2024年07月28日

Posted by ブクログ

前作に引き続き、この作者にしか描けないような幻想的な世界観が魅力的なSF小説。差別やジェンダー問題に切り込んだ作品が多く、読んでいて「痛み」を感じる場面が多々あるんですが、その耽美的な世界観に引き込まれずにはいられない、そんな魅力的な作品集でした。

ただ前作と比較して説教臭さを感じる場面が少なからずあったので、個人的には「感応グラン=ギニョル」のほうが好みでした。とはいえ魅力的だったのはたしかなので、次回作も楽しみにしています!

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2024年11月30日

Posted by ブクログ

SF5編集。もうこれは完璧に好みの問題としか言えない。駄目だ眠い読めないってなってしまったやつと、うっわこの世界観何これ面白いめちゃくちゃ興味あるってなるやつとの温度差がエグい。さよならも言えないと4Wがね、めっちゃくちゃ好きだった。世界観優勝。

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

中短編のファンタジックなSF五篇。表題作の「感傷ファンタスマゴリィ」はホラーじゃないけど、ゴシックホラー的な世界観で、極上の物語が楽しめる。漢字による創作熟語にフリガナが多用されているが、この作品はそれに惑わされることが少なく、読みづらさをほとんど感じないのもいい。
「さよならも言えない」はなんとも甘酸っぱくやるせない。「4W/Working With Wounded Women」は途中から強引さが目立つも、設定の秀逸さが光る。

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2024年07月21日

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