あらすじ
ソ連に11年抑留された父、女手一つで子供達を守り育てた母。自身の進学、結婚、子育て、介護、そして大切な人達との別れ――人生の経験すべてが、古典の一言一言に血を通わせていった。最初は苦手だったシェイクスピアのこと、蜷川幸雄らとの交流、一語へのこだわりを巡る役者との交感まですべてを明かす宝物のような一冊。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
こちらも友人に勧められて手に取った。
シェイクスピアといえば福田恆存で!と強く思っている一派としては、恥ずかしながら松岡和子訳のシェイクスピアを手に取ったこともないし、日本語でシェイクスピア劇を見ようと思ったこともない。
また評伝というものは、その人の自慢話/武勇伝が羅列されて飽きたり、お涙頂戴的な感情が強制されたりして萎えたりとあまりいい思い出もない。
そのような中で手に取った本書、本当に面白くてあっという間に読んでしまった。
そしてこの本で描かれている松岡和子という人が好きになったし、興味も沸いたし、日本語シェイクスピアも読みに行きたいしで、わくわくしている。面白かった、本当に!
父と母の波乱万丈の生も、若くして弟を亡くすという悲劇も、人間いろいろ人生はある中で、明るく前向きに生きている松岡和子、素敵すぎる。
大好きな福田恒存も出てきて、戯曲『億萬長者夫人』の「このおバカ秘書のモデルは絶対に私だ」大爆笑
「クラウド9」という作品、いつか見てみたい
河合隼雄との対談『決定版 快読シェイクスピア』も読んでみたい
毎日新聞の書評欄で、池澤夏樹と渡辺保と3人でそれぞれのシェイクスピアに関してお薦めの本を挙げることになった(p.196)というのも、その3人!とテンションがあがる
Posted by ブクログ
とてもおもしろかったです。松岡さんの訳してきたシェイクスピア作品を読んだこともないですが、舞台もぜひ今後見てみたいと思いました。
戯曲翻訳について、これまであまり知らなかった、というか、ほぼ考えたこともなかったので、こんなお仕事があってこうして作品がつくられていくのか、という驚きのようなものもありつつ、
でも内容は実際どうお仕事されているかというより、それまでのいきさつが中心ではあり、
松岡和子さんが生まれるときやその前、ご両親の出自と言ったところも…
出征した父親が敗戦後にソ連に抑留され過ごした過酷な11年間、そしてそれを経て1956年に見事に帰国し、見事に社会にも復帰し、その間もその後も夫婦の間が壊れることもなく、長生きされ…
その父親は本にして経験を残されていたり、松岡和子さん自身も多く記録を残されていたり、と、様々な情報が組み合わせられて編まれた作品でした。