あらすじ
リンパ肉腫の青年が言った。「自分の入る墓を見てきた。八ヶ岳の見える景色のいい所だったよ」青年にぼくはささやいた。「よくがんばってきたね」最後まで青年は誠実に生きて、死んだ。そこには、忘れ去られた「魂への心くばり」があった。テレビドラマ化されるなど、マスコミの話題をさらった感動の書をあなたに。
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Posted by ブクログ
終末医療について大変勉強になった。こういう人が医療界、介護現場を変えていってくれているのだなと思った。
今の時代に足りないもの、忘れてしまっている大切なものをしっかりと見据え患者さんと正面から向き合う。
著者は医療する側の人間なのにネイティブ・アメリカンの死生観も持っている。人間として生き、人間らしく死なせてくれる。こういう感性を根底に持つ人が増えるといいなと思う。
引用メモ
・人はつながりの中で生きている。人と人のつながりの中で生活を営み、人と自然のつながりの中で命は生かされ、体と心のつながりのなかで、生命をはぐくんでいる。
・否認、怒り、取引(善行により治癒するなど)、抑鬱、受容
・ペインコントロールについて
その国の医療用麻薬の使用量と、その国の文化度は相関しているともいわれている。日本では耐えられないような痛みに対して「がんばれ、がんばれ」と歯をくいしばらせることが多い
・大人たちが誠実に一人ひとり希望を持ってきちんと生きていることを、子どもたちに見せてあげることが大切だ。これが命のリレーだ
・人間の疾病を部品の故障と考えたデカルト
・自ら地域に出て地域で学ぶところから始まった→信頼関係
・西洋文化が入ってこなかったかつての日本では、自然と人間は対立するものではなく、自然と人間は一体であった。人間と病気の関係も対立するものではなく、共存する関係であった時代がある。
・祭→治癒
・西洋流の、個の自立の大切さを信じてきたが、個の自立を獲得しようとする自分の中に、無用の競争や差別意識を生んできた
・死ぬことはそんなに怖いことではないということを次の世代へ伝える
・死んだ人にムチ打ってはいけないという日本的寛容さ
・人間は原子力を使うまでにその人間性を深めただろうか
・障害のある人たちは上手に書こうといった邪心がないから、いい作品をつくることができる
・ひとついいことがあると、人間はいいほうへいいほうへと解釈してくれる
・医療=技術、奉仕、祈り
・医療は機械化、近代化するなかで、ホスピタリティを忘れかけている
葬式宗教になってしまった仏教も、生きている人に対するあたたかなおもてなしの心を忘れかけている
・たまご
・今日は死ぬのにとてもよい日だ
・臓器移植
臓器に価値が生まれ、値がつき、貧しいものから富めるものへ一方的に譲渡されないことを切に願う。せめて生き死にのところはお金のあるなしや、権力や身分に左右されることなく、公平性が保たれていてほしい
ホモサピエンスの上品さが問われている
「巧みに生きる」のではなく、よく考え、よく生き、よく死ぬとき、不器用だが手ごたえのある生が見えてくる
Posted by ブクログ
現在、諏訪中央病院名誉院長である著者は、25才の時にこの病院へ内科医としてきた。その頃、病院の経営状態は累積赤字が4億円でつぶれかけていたそうだ。それに、全国で二番目に脳卒中が多く、特に茅野市は長野17市の中で一番多い。その病院を建て直すと共に、市民の健康状態も良くした人である。まず、地域に呼びかけ、薬で治すというだけではない医療もあることや、意識改革をしながら自分たちの生活をもう一回見直していくことで、健康を回復していく医療もあることを理解してもらった。その後、減少していた患者の数が多くなり、日本有数の長寿地域でありながら、医療費が低い病院といわれるようになったのだ。今あるデイサービスの先駆けとなったのも、この病院だという。他にも、在宅ホスピスケアや緩和ケア病棟など、患者のための病院作りに力を入れている。24時間体制で診てくれる病院であり、ターミナルステージ患者の心のケアも考えてくれる病院である。地域一体となって大きくした病院は、今後増えてくれるといいけれど・・・。この本には、あらゆるケースの患者さんの経過を語りながら、病院のあり方、医者、看護士のあり方を再確認している。
Posted by ブクログ
在宅ケアなど作者の功績は認めたいのだけど、ときどき登場する人々に唐突感があって「これは誰だ?」とページを戻すことがたまにありました。これは作家専業じゃないから仕方がないことです。
ご両親が実は養父母だったことは作者は最期までしらされなかったそうです。養父と言い争うぐらい死に向き合える家族になれたことは幸せなことであり、尊重しあい最期を迎えられたのはよかったのではないかと思いました。
キレイな話が多く盛ってる?って表現もあり、自分の中で疑いが少し残ります。実際はもう少し過酷なんじゃないかと思います。もう少し心がピュアなときに次回作を読み進めたいと思いました。
Posted by ブクログ
医療管関係者だけでなく、病気になる可能性があり、必ず死を迎える、皆さんに読んで頂きたい。
今まで、向き合って来た数々の患者さんやその家族のストーリが書かれています。
中には、読んでいるこちらまでその温もりが届きます。
・予防からリハビリまでの一貫した医療
・地域に密着した手作りの医療
・救急医療から高度医療
長野県、諏訪中央病院はこの3つのスローガンを掲げている。
その横にはもう1つのメッセージがある。
患者さんの権利だ。
・人格を尊重される権利
・平等な医療を受ける権利
・最前の医療を受ける権利
・知る権利
・プライバシーの権利
・自己決定の権利
そして4つの理念
・その人らしく生きることを支援する
・対象者と家族を尊重する
・自立 自律への援助をおこなう
・最後まで共に歩む
諏訪中央病院の院長、鎌田 實さんが考える医療体制だ。
21世紀、日本の医療は想像以上に進歩をとげた。
しかし、21世紀の医学は何かを置き忘れてきてしまったのではないか。
死は永遠には回避できない。
病気の部分だけを治すのではなく、魂に寄り添った医療、を大切にしている。
Posted by ブクログ
ひとつの事実の裏に、たくさんの似ている事実が実在する 今日生きねば明日生きられぬ いっぱい泣くと、人間は不思議に元気が出るものだ ものや金や情報よりも大切なものがあるはずだ。二十一世紀、忘れていた魂への心配りを僕たちの乾いた心に取り戻したいと思う