あらすじ
ドラマ化で話題「めぐる未来」の辻やもり新作!! 貧しく複雑な家庭で育った鈴原鳴海は、裕福だがDV気質の彼氏と結婚を前提に同棲中。そんなある日、自身の息子を名乗る鈴原慶と出会う。未来から来たという慶に不信感を抱く鳴海だったが、「母さんは今、幸せですか?」という一言に言葉を失ってしまう。さらに、二人でいる所をDV彼氏に目撃されてしまい…!? 数奇な親子が織りなす、幸せになるための物語。
...続きを読む感情タグBEST3
家族と幸せと
主人公の境遇がけっこう厳しいです。DV気質の男からようやく逃げつつも、現れたのは自分の息子という青年で、謎が多いです。
育ての両親や妹さんとの関係もかなりややこしいですが、実際、親とはは血縁関係もなかったようです。妹さんは異母姉に一定、理解もあるので居候はOKしてくれてがいますが……
青年が父親と思っていたのは自分では?というのとかは広瀬正氏の「マイナス・ゼロ」を思い出したりもします。
設定が惜しい
作者の前作「めぐる未来」からの関係で本作へ。
前作から2年しかたっていないが、絵はかなり洗練されており、ちょっとぎこちなさを感じた前作より大きくレベルアップ。
完全に「美しい絵」になっている。
一方のストーリーは、「めぐる未来」同様、タイムリープを絡めたもの。
もっとも、本作では少なくとも1巻の段階ではそれは設定上のものであり、前作のように積極的に活用というものではない。
(ただし、物語の根幹に関わってはいるが)
ちょっと不思議というか、超常的な要素を絡めるというのはマンガとして悪くなく、本作のこの要素は非常に良いと思う。
また、キャラ設定も、幼いころから家族愛無しで育ち、孤独の中で生きてきたという主要キャラの生い立ちが語られており、それ自体はすごく深みがある。
ただ、「めぐる未来」同様、本作にも気になる要素がいくつか。
まず元カレ。
こんな女性マンガにしか出てこないような「典型的なひどい男」はさすがにやりすぎで、リアリティが無い。
まだこれで、どうしようもない遊び人とかならともかく、大企業の社長の息子でこのキャラ、ちょっと設定盛りすぎという感じがする。
同様の事は主人公の両親にも言え、さすがにやりすぎだろうと感じてしまう。
元カレと主人公の両親に関しては、もう少し抑えた描写にしないとリアリティが無いし、女性マンガでよくある「虐げられからの復讐劇」のようなチープさすら感じてしまう。
さらに、主人公もそんな環境で育っていれば、違うキャラになっていたのではないかとも。
中学生くらいからグレていてもおかしくないし、そこから立ち直ったとしてももっと芯の強い、なんでも言い返せるようなキャラになっていたんじゃないかと。
もしくは逆に、本当に周囲に対して目立たないようにだけしているキャラか。
そういう点で、主人公・元カレ・両親の三者のキャラに違和感というか、リアリティのなさを感じてしまった。
前作も「どうしてそうなるの?」という違和感が多い作品であり、この作者の感性と自分の感性が合わないという事なのかもしれない。
でも、本作など絵や基本的なプロットはかなり素晴らしいだけに、そういう「ちょっとやりすぎ、強引さ」を抑えれば非常に良い作品と思えるのでもったいない。
ただ、それでも本作はまだ先を読みたいと感じるレベルにはあり、違和感さえ無くしてもらえば秀作と言えるレベルになりうる作品だと思う。