あらすじ
「これながいきの薬ある.のむよろしい.」この台詞から中国人を思い浮かべる人は多いだろう.だが現実の中国人は今,こんな話し方をしない.近代の日中関係のなかでピジンとして生まれたことばは,創作作品のなかで役割語としての発達を遂げ,それがまとう中国人イメージを変容させつつ生き延びてきた.(解説=内田慶市)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
フィクションの中国人の独特のあの口調を〈アルヨことば〉と定義し、その発祥から日本での定着と変遷を紐解いてゆく大変いい本でした。作者の先生が抗日映画からヘタリアまで追って言語学者目線で楽しんでるの面白かった。確認したら地政学ボーイズはしゃべってないですね。
Posted by ブクログ
「アルヨコトバ」には少なからず侮蔑的意味合いが含まれていることには,幼い頃から「なんとなく」の感覚を持っていたけど,それが日本と中国を取り巻く近代史を中心に,それこそ,中国4000年の歴史への畏怖,裏返しとしての侮蔑…複雑で捻れた国家的,国民的感情が,世情や必要性と複雑に絡み合いながら誕生したコトバであること…なんという奥深さと面白さと,そして愚かさと悲しさであろうか!
今感じている感覚をどう消化して行くのか…
親しんできたいくつもの小説や映画が頭の中をぐるぐるしている
本書にも登場する「サイボーグ009」も,「らんま1/2」も,数々のジャッキーチェンの映画の吹き替えも…それぞれに登場するキャラの『役割語』としての「アルヨコトバ」…こともあろうに同じ香港人同士のやり取りなのに,ジャッキーは標準語,意地悪な子悪党は「アルヨコトバ」や中途半端な「関西弁的なコトバ」で表現されていたりしていたことを思い出す.
役割語には,少なからず,差別的思考が不可分に存在することを痛感してしまった.
コトバは,面白くて,そして残酷で,真実だ.
Posted by ブクログ
「これながいきのくすりある。のむよろしい。」といった台詞を聞くと多くの人が中国人を思い浮かべると思うが、そんな「アルヨことば」の来歴を探り、それと関連する戦前・戦中に満洲で用いられたピジン(境界語)である「満洲ピジン」や、中国の抗日映画などで日本人が話すピジン風のことばである「鬼子ピジン」についても触れている。
確かに実際の中国人がそのような話し方をするのを聞いたことはなかったものの、「アルヨことば」は漫画などで中国人キャラが喋るちょっと滑稽なことばということで幼いころから親しんでおり、「アルヨことば」=中国人というイメージが頭にインプットされていて、その起源などを考えたこともなかったが、本書で横浜ことばに淵源があることや、宮沢賢治の童話等で用いられてきた経緯などを知り、とても興味深かった。
一方、これまで親しみを感じてきた「アルヨことば」だが、その背景には戦前・戦中の日本人の中国人に対する偏見や差別意識があったということも理解し、ちょっと複雑な思いはあるが、そのような事実は事実できちんと認識しないといけないなと感じた。