あらすじ
中学2年生のオカルト好きな探偵の息子×自称・天才発明家のアラサー女博士 異色の凸凹コンビが町のオカルト事件に挑む、連作短編ミステリー小説! 私立探偵の両親を持つ中学2年生の丘晴人。両親を手伝う中で遭遇したオカルト事件を解決するために、謎の発明に日夜没頭する女博士の元を訪ねるのだが――。 『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉が描く、ユーモアミステリー!
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Posted by ブクログ
2023年は新刊が出なかったようである。東川篤哉さんにしては長いインターバルを挟んで刊行されたのは、また新シリーズですか。
語り部は探偵事務所を営む一家の息子で、オカルト好き。探偵役は自称・天才発明家の女性博士。タイトルによれば、博士はオカルトを信じない。キャラはともかく、オカルトネタは本格ミステリとの親和性が高い。それだけに前例は数多いが…。
「天才博士とあの世からの声」。病床の娘の口から、亡き母の声が。もちろんあの世からの声であるわけがない。問題は音源ではなく…。ありがちな動機と、簡単に実験できそうなトリック。しかし、誰もが実験台を嫌がりそう。
「天才博士と赤いワンピースの女」。父の張り込みを手伝う息子。そこで彼らが目撃したものとは。手間暇かかりすぎなトリックが涙ぐましいが、博士も再現するためにお金がかかったのでは。似たようなネタを読んだことがあるような。
「天才博士と幽体離脱の殺人」。当時9歳の少女が目撃した現場。幽体離脱した方が、寝ている本体を殺した? バカトリックと笑うなかれ。これこそ遊び心溢れる物理トリックの楽しみだ。見てみたいので誰か再現して。
「天才博士と昭和の幽霊」。家人が寝入ると聞こえてくる、幽霊の声の正体は。昭和にだって「うらめしや~」などと言う幽霊はいないだろうが。これは似た原理を誰でも実験したことがあるのでは。納得性は本作中最も高い。
「天才博士と靴跡のアリバイ」。靴跡を利用したアリバイトリックは、本格ミステリの定番中の定番だが、ここまで手間暇かけた例は読んだことがない。考えた人はいるかもしれないが、作品で使おうとは思わないよなあ。
ひたすら道化役である父が気の毒な気もするが、数ある東川作品の中でも、ここまで物理トリック重視はなかったのでは。さて、続編はあるか?