あらすじ
中国の小さな村に生まれた梁浩遠(リャン・ハウユェン)と謝志強(シェー・ツェーチャン)。大きな志を抱いて大学に進学した2人を、1989年の天安門事件が待ち受ける──。“我愛中国”を合言葉に中国を民主化しようと努力する貧しい学生たちの苦悩と挫折、そしてその後の人生。北京五輪前夜までの等身大の中国人を描ききった瑞々しい傑作。日本語を母語としない作家として、初めて芥川賞を受賞した楊逸(ヤン・イー)の代表作!
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Posted by ブクログ
なんとも言えない甘酸っぱい読後感の作品でした。
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当初、ライバルであり幼馴染である貧農の子どもたち二人が、苦学の末狭き門をくぐりなんとか憧れの大学生となるシーンで始まった本書、おおこれは立身出世物語かも、とワクワクして読んでおりました。
ところが、喜びも束の間、学生運動にかかわってしまい、せっかく入学できた大学から二人とも放校処分となり、エリート候補生が日雇いに身を落とすことに。
理想(国の民主化!)は高いが、現実の食い扶持を得るためにはとにかく働かねばならない。そのギャップが若い二人につきつけられます。
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とりわけ、在留日本人とみられる女性と結婚し日本へ渡った浩遠。
彼は民主化の理想を捨てきれず、日本でも同胞の民主化の集まりに顔を出すも、周囲の不真面目な態度が面白くない。会社の上司や妻も表立って反対はしないものの、次第にはれものに触るかのような態度を彼にとる。
最終的に浩遠は、民主化を先導した甘元教授と、憧れだった英露とに再会し、自分だけがクソ真面目に民主化活動していたことに気付く。ここは悲しかった。いったい何年彼は独りで夢を見ていたのか。
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理想を持つことは素敵だし大切でしょう。他方で現実に生き生活を送ることは喫緊の課題となります。
普通の人は意識的・無意識的にバランスを取り、ある意味で平凡な人生に落ち着くわけです。
理想を固持したことで浮いてしまった浩遠に一抹の悲しみを感じるのは、わたしなぞは浩遠に自分の分身を見ることができるからでしょうか。
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民主化という理想でなくても、理想(夢)は、お金持ちになる、都心に住宅を持つ、素敵な配偶者を得る、子どもを有名私立(国立)に入れる、出世して部長や役員になる等々にも置換できましょう。
私の場合は、優しくも厳しい妻との衝突を経て、自分は平凡に生きるべきだとやっと頭で理解してきました(心ではやっぱり破天荒なことをやったり成功したいという野望がまだ消えません泣)。
個人主義・多様性とは言うものの、干渉しない(で暴走?するのを許す)のを優しさと言うのか、干渉しまくって目を覚まさせるのが優しかというのか、意見は分かれましょう。
そんな人間関係の在り方をも考えさせる作品でありました。
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ということで、楊逸氏の作品は初めて読みました。
やさしく、そして熱情と冷静さの表現の切り替えが上手な作家さんだと感じました。
舞台が日本ではなく、異国情緒(というか異国ですが)が漂うテーマも好みです。
別作品も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
天安門事件については、かつて中国語を教えてくれていた先生からチラッと聞いていましたが、こんな感じで動き始めたんですね。
たまたま先日のTVタックルで中国のことを取り上げていましたが、民主化の道は遠いのかなあ。
人口が多いから共産党って、なんかヘン。
Posted by ブクログ
【内容】
中国の小さな村に生まれた梁浩遠と謝志強。大志を抱いて大学に進学した2人を天安門事件が待ち受ける―。“我愛中国”を合言葉に中国の民主化を志す学生たちの苦悩と挫折の日々。北京五輪前夜までの等身大の中国人を描ききった、芥川賞受賞作の白眉。日本語を母語としない作家として初めて芥川賞を受賞した著者の代表作。
【感想】
中国、時刻を愛するが故に民主化を目指したが、
報われることなく政府に弾圧され、
主人公の浩遠もまた運動がうまくいかないが故自暴自棄になり大学を退学となる...
冒頭に大学に入学し、輝かしい未来を夢みて勉学に励む若者らが色鮮やかに描かれていた為、
民主化運動なんか参加しなければよかったのに、
勿体無いなぁと思ってしまった。
けれども、大学卒業後の輝かしい未来が得られなかったことを悔やむのではなく、
中国民主化への熱い想いを胸にくすぶり続けている姿は私には正直理解できない。
しかし、確かにあの時代、天安門事件の際に中国の未来を真剣に考え、中国のために民主化したいという熱い想いがあったことを想像出来た。
筆者が中国人だからこそ書けた話であると思う。
そう思うと読み易く価値ある小説であった。
Posted by ブクログ
芥川賞作品。
日本語を母語としない作家として初の受賞として話題になった。
彼女の講演を聴いたことがあるけど、とてもユーモラスでソフトな人だった。
そんなわけで、読む前からすごく興味はあった。
89年の天安門事件から北京五輪まで。
民主化への夢・希望とその挫折を地方出身の2人の青年を軸に描いた作品。
文章自体は特に好みではないけど、特にひどいわけでもない。
私はこれまで恥ずかしいくらい中国について無知だったので、そんな私がこの作品を評価するのはちょっと難しい。
芥川賞に値したかどうかはどうあれ、テーマとしてはとても興味深かった。
大学というものがもつ社会的意味や学生たちの気風、
さらには実際の言動、その末路、
どこか日本の60年代の学生運動にも似た当時の中国の動き。
もう少し知りたいと思った。
この作品自体は民主化云々描かれているけど、政治的な色よりも青春小説っていうテイスト。
でも個人的には「祖国」とは人にとってどういうものか?というところをテーマに読んだ。
天安門事件後に退学になり、残留孤児二世と結婚し、妻と共に日本に渡る主人公。
日本から祖国を見ていく後半は特に良かった。
ラストはずしーんときた。
作者自身、日本で結婚・子育てをする中で突き当たったことだったらしいけど、先にそんな作者の講演を聴いていただけに思わず泣けてしまった。