あらすじ
23歳の夏――この罪を見過ごすことはできなかった。
MWA賞受賞作家が放つ瑞々しい青春ノワール。
「ルー・バーニーの最高傑作」S・A・コスビー
「最後のページまで心を掴んで離さない」ドン・ウィンズロウ
遊園地で働く青年ハードリーはある日、煙草の火傷痕の残る幼い姉弟を見かける。
行きがかり上、虐待を通報するも当局に相手にされなかった彼は、証拠を掴むため素人探偵まがいの調査を開始する。
見えてきたのは裕福なのに荒れ果てた家と、弁護士の父親の背後にちらつく麻薬組織の影。
23年間、面倒を避け気ままに生きてきたハードリーは、幼い命を救うため人生で初めて壮大な賭けを仕掛けるが……。
解説:吉野 仁
■著者既刊
『11月に去りし者』
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
3.5くらい?
評判は悪くないけどちょっと歯切れの悪い感じの感想だったので、デッドエンドになりそうだなと思ってたら案の定。ハードボイルドモノ?それ未満な感じ?
タイトルのダークライドは遊園地の暗闇の中を進むコースター的な乗り物かな。お化け屋敷のようなアトラクション。つまり一夏の冒険を表したかったのかな。
主人公の、誰かを救いたい、あの子達を救いたいという気持ちは良かった。救いたい理由より救わない理由がある?というのも良かった。
だけどやっぱ最後らへんの暴走はダメだよ、と感じるで。ハードリーのような人間がたどる末路としてはむべなるかな。
気になったのは、主人公より賢い人間がフェリスという年上の女性やエレノアというゴスの女性。あとは敵のネイサン。同居人兼家主のバークは賢いが危なくて頼っちゃいけない人間。兄はどうかな。
とにかく、メンター的な、いわば主人公のお株を奪うようなキャラがいない。お株を奪われたら話として成立しないが、なんか都合の良い世界だなって感じ。ラノベ的。
サルヴァドールは年下で頭の回らない描写がされ主人公を崇拝するという、読者を喜ばせるようなキャラで、それもなんだかな。
フェリスと寝るのも驚いた。寝ても良いくらいの容姿だったのかハードリー。ここら辺もラノベ的。
まあそれでも、ズブの素人が試行錯誤しながら見張ったり付けたり知恵をまわらそうとしたのは面白かった。
こういうのがアメリカではウケるんだろうか。
Posted by ブクログ
23歳くらいの青年ハードリーが勇気を出して、児童虐待を受けている子ども2人を救おうとする話。
ハードリーは今が楽しければいいや、という生き方。マリファナを適度に楽しんで遊園地のお化け屋敷的なところで働いている。
この青年がいきなりむちゃくちゃな探偵まがいな行動をする。周囲の人に助けてもらうのだが突飛すぎる。最後はアドバイスを無視して強行突破。銃嫌いだったのに銃撃戦で2人を殺す。ハードリー本人も重症でその後のハードリーの結末はわからないまま。おそらく命を失ったと思われる。
今まで、何かを一生懸命にそれこそ命をかけた行動をしたことがない青年が暴走した一部始終という感じだった。巻き込まれた撃たれたサルヴァドールもかわいそうだし、必死になってハードリーの暴走を止めようとしていたエレノアもかわいそう。
ラストでハードリーがおそらく命を失う結果になったのは別にいい。こういう結果でもいい。だが何もかも唐突すぎてなんでこういうことになったのかよくわからないままだった。
自分は読書において、登場人物へ共感できるかどうかというのはどうでもいいタイプなので、ハードリーに共感できなくてもそれは別によい。ただ作品のなかに理解ができなかった部分が多いと感じた。
これは人生の不条理を楽しむ物語なのかとも思えてきた。リアルの人生では伏線と思えるようなことがあってもその後何も起こらなかったり、つじつまが合わないことがほとんど。ハードリーの物語もそういうことかもしれない。
Posted by ブクログ
『11月に去りし者』を読んで面白く、力のありそうな作家さんと感じたので読んでみた。
うーん、なんか説得力に欠ける感じ。
あとがきに『11月に去りし者』の後したためていた作品が完成しきれず、5年ぶりの出版となったとの事情が記されていたが、その辺りの難産ぶりというか、源泉の涸れっぷりが伺えてちょっと残念。
主人公のハードリー(本名はハーディだが、兄がからかいも込めて「ほとんど~ない」の意(英:hardly)であるこの言葉で呼ぶので、自分でもそう名乗っている)は寂れたテーマパークの三流ゾンビアトラクション〈呪われた西部開拓地〉で脅かし役に扮する日々を過ごす。
プライベートでは、友人達と共にマリファナ漬けで、うだつの上がらない日常にも諦観含みの満足を得ている。
そんな日々の中、未納の駐車違反金を支払いに行った市役所で生気を失った幼い姉弟を見かける。
よくみると首筋に並ぶタバコ痕。
しかも連れ添っている母親らしき女性は、その痕を隠そうとしている。
そこからは天啓を受けたかのように、その姉弟を気にかけ、児童虐待の疑いある環境から救い出そうと東奔西走する。
途中出会う市役所職員のゴス娘エレノアや、空回りを繰り返す職場のカースト最下層クルー、サルヴァドール、元探偵の不動産屋美魔女マダム、フェリスといったキャラ強面々は悪くなく中盤くらいまではぐいぐい読ませる。
ただ途中、関係の発展が唐突だったり、なぜその行動をとるのかの話に深みが感じられなかった。
それぞれの関係性、エピソードの終着点もことごとく尻切れ。
もっと書き込みできたら面白かったと思うのに。
あと前作と登場人物も物語性も全然関係ない、原題にも含まれていないのに無理矢理「7月の」を入れてくる出版者側(なのか?)の浅ましさにもマイナスイメージ。