あらすじ
ソーシャルメディアをマーケティング手段よりも、個人が組織の中で、あるいは組織を超えて互いに学び合うための環境として捉え直すべきだと提言します。個人が互いに知をシェアすることによって組織が生まれ変わり、競争力を磨いていくことができるのです。
たとえばCIAは複雑化する脅威に対抗するために、またメイヨー・クリニックは最高の医療を提供するために、どちらもセキュリティに気を遣う情報を扱う組織であるにも関わらず、ソーシャルラーニングに積極的に取り組み大きな成果を上げています。ほかにもデロイト、IBM、インテル、EMC、シェブロン、ベストバイなど膨大な取材に基づく多くの事例とともに理論的背景から実践手法までを多角的に解説します。
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Posted by ブクログ
今年初の五つ星評価。
筆者が言いたいことは次のとおり。
「ソーシャルメディアはあなたが参加しようとしまいと、とにかく始まってしまっている。社交性(ソーシャル性)を持ち合わせた人は、この新しいテクノロジーを活用してさっさと自分のつながりをもっと強化していくだろう。あなたは2つの選択肢の前に立たされている。「妨害者となるか」(邪魔をするか)あるいは、「遅れずに参加するか」(乗船するか)だ。」(p215)
そのほか、
・ソーシャルメディアはマーケティング用途と同じくらい、学習に対しても有効(p4)
・ソーシャルラーニングは人々の仕事の進め方を根本から変える(p18)
・ソーシャルラーニングは情報共有、コラボレーション、自律的な協調作業が中心となる(p41)
・生活と仕事の境界線が薄くなるにつれ、(マイクロシェアリング)ツールの活用は忠誠心と生産性の両方の向上につながる(p121)
・マイクロシェアリングの鍵は自分の情報のアップデート(更新)である(p123)
・マイクロシェアリングは(中略)有言実行のツール(p137)
などなど、facebookを初めて1年あまりの私にとっては腑に落ちる言葉がいくつもある。
また、各章に「批判の声に答える」や「お勧めのアプローチ」があり実践的な内容でもある。
今後何度も目をとおす本になるだろう。
Posted by ブクログ
SNSの普及は、私たちのコミュニケーションやビジネスだけでなく、学びのスタイルも変えます。野中郁次郎氏の知識創造プロセス(SECIモデル)に従えば、異なる知識が重なる場があれば知識は生まれるわけです。そしてSNSは間違いなく、その場をバーチャルに増やし、リアルな場をつくるきっかけを与えます。では、どのようにかわるのか。そしてどうかつようしていくべきなのか。私たちがSNSを通じて何を学びとして得れるのか、そんなポイントを「ソーシャル・ラーニング」として整理されているのがこの本です。
以下、要点と解釈の整理です。
○ソーシャル・ラーニングの基本的な考え方
もっとも根本的な考え方は「船にのれ」です。サントリーの言葉を借りるなら「やってみなはれ」、Facebookの言葉を借りるなら「Done is better then parfect」です。ようするに、まずは取り掛かること、試すことが必要ということです。
そしてソーシャル・ラーニングは一人で行うものではありません。しかし、だれか仲間を探さないとできないものでもありません。普及し続けるSNSを利用し、つながりをつくっていくなかで、誰かとかかわりを持ちながら学んでいけばよいのです。これはビッグデータ時代で学びを重ねていくため(ビッグデータを手なづけるため)のアプローチともいえます。
○ソーシャル・ラーニングの特徴
ソーシャル・ラーニングの特徴を整理すると、誰もが今の生活にアドオンして活用できる学びの機会であることが良くわかります。
・誰しもが利用できる
・大学の授業や研修と共存でき、シナジーを生む
・知識を詰め込むのではなく、経験を通じて学び取れる
そして今までよりも
・より多くの情報
・より多くの接点
・より幅のある広がり
を学びに提供するものでもあります。
このとき、学びのメカニズムを整理すると、学びの効果の大半を占める経験部分をソーシャル・ラーニングが補完することもわかります。
・70%は経験を通じて得られる
・20%は他社からの指摘によって得られる
・10%は知識を詰め込むこと(大学の授業や企業研修)で得られる
学びを、知識と経験により情報を取り込み新たな変革を生み出すもの、と定義するのであれば、ソーシャル・ラーニングが経験という側面から非常に高い学びの効果をもたらすことが期待できるわけです。
○ソーシャル・ラーニングのアプローチ
ソーシャル・ラーニングのアプローチは、目的や利用するサービスによって多少違いがありますが、ポイントは変わりません。まず何より、楽しむこと。楽しくなければ継続することは困難です。
その上で、
・できることから始める(無理はしない)
・互いを歓迎し、敬意を払う
・情報を発信する
・相手からの情報に傾聴する
・シンプルに、わかりやすく
といったところを念頭に置き、特定のトピックスに対してソーシャルを通じてコミュニケーションを重ねていくことが必要になるのです。
また、ソーシャル・ラーニングの実施ガイドラインといて
・情報の透明性 : 参加者に対して情報が明確に伝えられること
・情報の保護 : 個人情報等の管理
・相手への敬意 : 互いの権利を守り、尊厳を守る
・責任範囲 : ツール利用は個々人の責任において利用する
・貢献・目的 : 何が得られるのか、何に貢献すべきなのかを明確にする
などを明らかにしてアプローチすることで、より高い効果を得ることが可能になります。