あらすじ
●データに基づき、最適行動・施策を考える
「子どもの教育」というと、親が自分の経験値で語ったり、周りの情報を鵜呑みにして行動してしまうもの。そういった「思い込み」を排し、根拠に基づいた論理的分析で結果を導くために、経済学を活用する。現在、様々なデータを入手することが可能になり、企業などでもエビデンスベースで課題解決をするケースが増えている。教育現場でもこのデータをもとにした議論が活発化している。
・多くのデータが積み上がり、日本でのデータや分析事例も増えてきた。海外の研究はもとより、本書は日本の分析も多くあるのが特徴。
・コロナ禍によって、家庭学習やICT教育が増えた。その影響などについて、可能な限り分析を試みている。
「学歴はデータ的に優位なのか」「家庭の役割はどれだけ必要なのか」「ゆとり教育は有効だったのか」など、読者の興味に適う内容。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
「教育」を経済面に特化して論じている。
・教育のリターンを計測する
・全国学調はホントに何のために
・実感として間違いなく
クラスサイズは小さい方がいい
・賃金の是正はいいから業務の精選を
Posted by ブクログ
学力の経済学が面白かったから読んでみたけど、専門性が高くて難しかった。
ただ文章は論理的な構成で、さすが研究者って感じ。
だけど「~という関係から~の可能性があるが、~の視点から見れば~可能性もあるため、それは必ずしもは観察されないようです」
みたいな文章ばっかりで、どっちやねん!と突っ込みたくなる。
もちろん学者である以上断定出来ないのは分かるんだけど、新書である以上、一般の人でも使えそうな知識を多く載せて欲しい
使えそうな知識一覧
・大卒高卒とシグナリング理論(大学に行くリターンが行かないリターンよりも低い人は、大学に行かない選択をとる)
・日本のジニ係数と相対的貧困率について
・クラスサイズとその効果(小規模な方が効果があるという研究もあるし、特に効果がないという研究もある。親が低所得の家系では有効?感染症拡大防止に有効?)
・教師の質が生徒に与える影響(与える影響はそこそこあるけど、良い先生の定義も長期的に見た視点もあやふや)
Posted by ブクログ
教育投資を評価することが大変難しいということがよく分かる一冊であった。
本書では「可能性がある」や「かもしれない」が多用されており、素人の読者としては新しい視点を得ることはほとんどできなかった。
とりわけ疑問であったのが、
「第1章で教育は投資であることと学校教育の役割を説明し、第2章で家庭と学校教育がスキルを形成する(人的資本を蓄積する)うえで重要であることを説明しました。」
とある。素朴に読めば、教育は経済合理性に基づく投資であり、学校教育で人的資本が蓄積されるのであろう。ところが、第4章で奨学金について扱っている節があるのだが、奨学金返済の延滞者の数を挙げるとともに、「延滞理由で最も多いのは低所得であることです。」とある。教育が経済的理由による投資であるとすれば、初期投資(奨学金)を上回るリターンがなければ合理的には投資するべきではないが、延滞者が万単位でいることを鑑みれば、教育という投資案に本来投資するべきでない層が多数参加していることを示唆しているのではないだろうか。
この点について、「長期的な借り入れ制約」という状況を説明し、大学進学時だけに資金を援助しても十分な効果が期待できないと説明しているが、もう少し深い考察を知りたかった。
なお、人的資本理論とシグナリング理論の紹介については学歴に対してそういう考え方もあるのかと新しい視点を得ることができた。
Posted by ブクログ
教育経済学の専門家による、教育に関して経済的視点で分析するにあたっての基礎的事項をあまとめたもの。教育経済学で学ぶ者にとっては、その研究の前提となる今までの研究やデータが豊富に示されており役立つと思うが、素人が読むには、結論が曖昧で、しくっりこない箇所が多かった。極めて学術的な本。
「(生涯賃金)男性大卒で約2億9000万円、高卒で2億6000万円、女性大卒で2億4000万円、高卒で1億9000万円のようです(ユースフル労働統計2021)」p18
「シグナリング理論に基づくと、働き手の生産性を区別できる手段が大学以外に存在すれば、大学は重要ではないと言えます(シグナリング;出身大学で人物評価する)」p29
「アメリカでは1980年代より大卒の需要が増加したにもかかわらず、その需要を埋めるように大卒者数が増加しなかったために大卒高卒賃金格差は拡大したが、日本では大学数が急速に増えたため大卒高卒賃金格差は拡大しなかった」p42
「年間収入が400万円未満の場合の学習費総額は23.1万円に対し、年間収入が1200万円以上の場合は59.6万円です(子供の学習調査(文科省2021))」p64
「通塾は算数スコアを偏差値換算で2〜3割程度、国語スコアを2割程度引き上げる点、その背後には学習時間が増加する点を発見しています」p76
「2018年時点で、子どもの貧困率は約14%です。大人が2人以上の世帯における子どもの貧困率は11.3%に対し、大人が1人の世帯における子どもの貧困率は48.2%です」p83
「クラスサイズがテストスコアなどに与える影響は観察されないか、あるいは影響が大きくないエビデンスが多い」p112
「授業時間が短いとその後の教育達成が低くなることを発見しました」p170
「(奨学金の返済)2019年度で返還を要する者は約443万人であり、そのうち1日以上の延滞者は32万7000人、3ヶ月以上の延滞者は15万2000人と試算されています」p187
「経済成長率の推移を戦後から観察してみると、10年平均で約10%であった戦後から1960年代にかけての高度成長期、約4%から3%であった70年代から80年代の安定成長期そしてバブル経済、約1%台となった90年代のバブル崩壊から低成長期、そして10年平均で約0%台を推移する2000年代からの失われた20年を経て、現在も概ね0%台の低成長が続いています」p210
Posted by ブクログ
大学に行く人が多いのは、大卒から定年まで働いたときの賃金総額が、高卒で働いたときのよりも多いからだ、と著者は言うが、そんなもんかな?
その差額、塾代や予備校代考えたらとんとんとちゃうかな…
人それぞれだから、何とも言えないけれど…