【感想・ネタバレ】夜明けを待つ(集英社インターナショナル)のレビュー

あらすじ

病、家族、看取り、移民、宗教……。小さき声に寄り添うことで、大きなものが浮かび上がってくる。『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』『エンド・オブ・ライフ』『ボーダー 移民と難民』……。生と死の境を見つめ続け、読む者の心を揺さぶる数々のノンフィクション作品の原点は、佐々涼子の人生そのものにあった。ここ10年間に書き溜めてきたエッセイとルポルタージュから厳選した著者初の作品集。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

「エンド・オブ・ライフ」を書かれた佐々さんの最後の本。ずっと終末医療について書かれていたと思っていたが、その前におこなっていた仕事のルポルタージュ(現地報告。 社会問題などを綿密に取材して事実を客観的に叙述する)だった。

佐々さんは、日本語教師をされていた。幼いころは母がたくさん絵本を読んでくれた。そういう過去から、「エンド・オブ・ライフ」にもつながったのだなと思う。

やはり流石の文章力で、宗教を学ぶための世界放浪では、宗教の意味について深い考察と表現があった。
「いくら自分の外側を探しても答えは見つからない。自分の内側に戻って自分なりの生き方を見つけよう。そう思えた時、世界を旅して、僧侶たちに言われた言葉の意味がようやく腑に落ちた。 「今を生きなさい。自分の内側に戻りなさい」」

最後は自身の病について少しだけ触れられている。希少がんの「希」に希望を見る。「私たちは、その瞬間を生き、輝き、全力で愉しむのだ。そして満足をして帰っていく」。「ああ、楽しかった」と。

0
2025年08月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

気になるところに付箋を貼りつつ読んでいたら付箋だらけになってしまった。

佐々さんの文章がとても染みる。以前読んだ「エンジェルフライト」や「紙つなげ!〜」がとても良かったので本作も早く手に取りたかったけれど出会えたのは亡くなられてからになってしまった。
病を得て余命が僅かであることを知ってから綴られた文とその以前からの文との陰影を感じながら読み進めた。

最初の章のエッセイはまだ余命を知る前に書かれたものなのかなと思った。
でも状況や物事の捉え方がやはり深くてとても命を意識した表現に自然となっていると思った。
p58「弔いの効用」の中の枕経のシーンで、とても悲しい場面なのにどうしてもおかしい状況が出てきてしまい堪えきれずにみんなで大爆笑してしまう場面が出てきた。そこで佐々さんは人は「どんなに大切な人を失っても一緒に死んだりはしないように作られている」大発見について書いている。
自分にも似たような経験がある。どんなに悲しくても辛くても人は笑うことができるという発見は、確実に生きる力になると私も知っている。
当たり前のようなことだけれどとても大切なことだと思うしこれを知っていると知らないでは悲しみや困難の乗り越え方が変わるだろうと思う。
他のどの章も胸が痛くなりながら読んだ。p84「ひろちゃん」は、精神科に入院している母のことを友人に話して傷つけられて以来、自分の友達たちには二度と母のことは話さないと決めた事を思い出した。

第2章からのルポ「ダブルリミテッド」にも考えさせられた。書かれた日にちを見ると10年以上前の話だけれども、今のほうがむしろ事態としてはより深刻になっているのではないかと思う。
日本語と他言語が母語であるのにどちらも話せない状況を「ダブルリミテッド」と呼ぶということを初めて知ったけれど、その状況にいる子どもは郊外に住んでいる自分も今やよく目にする。

特別支援などを受けて対応しているところもあるが学校現場は多忙すぎて手が回らず実質放置されてる子供もいるように感じることもある。教師をしている友人はそのことに一層の危機感を持っていて、早急に対応しないと今もどんどん外国人が生活の場へ入ってきているのでこのままそういう人がさらに増えていくと日本の社会が回らなくなっていくだろうと言っている。
佐々さんが10年も前に言っていたことが今現在良くなるどころかもっと深刻になっていることに憂う。

その後からの章では宗教や死生観に絡む話が続く。火葬場の灰の上に寝るシーンは、佐々さんが死に呼ばれている感じがしてきて怖くなった。読み進めると何だか呼ばれすぎていると感じる箇所が他にもあってざわざわした。その後の作品を手掛けてきたきっかけがこういう体験の数々だったのかなとも思うけれど、形にするまでは本当に心がしんどいことだったろうと想像される。

p245「人は死を目の前にするとスピリチュアルにならざるを得ない」確かに。
先日読んだ「人は死なない」もそれと同じことだろうと思った。何かを信じる信じないは別として、命のことを考えたら宗教的にものに惹かれてしまうのは性や本能のようなものなのかなと思う。

あとがきがまた染みた。2023年現在記となっているが、悪性脳腫瘍の一つグリオーマは10万人に1人の発病率で平均余命は14カ月だという。自分の親は14年前に同じ病で亡くなったがその頃とほぼ発病率も平均余命も変わってないことにショックを受ける。
佐々さんは覚悟している。あとがきから感じられる。でももっと書きたかったし生きたかったろう。自分ももっと佐々さんの書く本が読みたかった。
良い本だと思うにつけ残念だと思う気持ちが増してしまう。切ない。
読後本の装丁の空の写真がまた染みた。



0
2024年10月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

エッセイは佐々涼子さんの歴史

依存症 回復には後光がある。ある日閃く
取材であった人に震災の話を「家族に言ったことのない話」を聞いた。話すことは背負わせること。家族友人でもない、仕事でもない人だけに話せること。

0
2025年10月20日

「エッセイ・紀行」ランキング