【感想・ネタバレ】メルカトルと美袋のための殺人のレビュー

あらすじ

推理作家の美袋三条は、知人の別荘で出会った佑美子に刹那的に恋をする。しかし彼女は間もなく死体で発見され、美袋が第一容疑者とされてしまった! 事件に巻き込まれやすい美袋と、「解決できない事件など存在しない」と豪語する魔性の名探偵・メルカトル鮎が挑む巧緻な謎の数々。脱出不能な密室殺人から、関係者全員にアリバイが成立する不可能犯罪まで――奇才が放つ、衝撃本格推理集。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

初っぱなの短編から飛ばしすぎ。後の短編の期待度が上がりすぎてしまった。それでも面白かったけど。
「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」がベスト1。麻耶雄嵩の短編集は1つ飛び抜けて面白い短編があるものばかりな気がする。
メルカトルと美袋の関係も面白い。

0
2014年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

控えめに言ってクソである(褒めてる)。

「探偵は善人である」というミステリの暗黙の設定を変えてみた、という作品。
銘探偵メルカトル鮎、これ以上にない極悪人である(褒めてる)。
『翼ある闇』以降、メルの出てくる作品は読んできてるけど、まぁ確かに個性的だったしヤバさの片鱗は見せてたけど、メルにスポットを当てるとこれほどまでにクソ(褒めてる)が際立つとは。

ひとつ分からないのは、美袋くんがなんで友人を続けてるのか、ってところ。
例えば変人探偵・御手洗は、変人だけど根底に優しさがあって、人としての魅力に溢れたキャラクターだけど、メルは全くのクソ(褒めてる)でしかない。
メリットとしたら、事件に遭いやすい体質の美袋くんの嫌疑を晴らしてくれる(しかし友情からではない)ところくらいじゃないか。
まぁ重要かもしれないけどさ。
メルのキャラが立ちすぎてて、美袋くんが没キャラになりすぎてるのが残念。
主体性のない子、ってところが特徴か。

各短編のミステリとしての骨子は本当にしっかりしてて、素晴らしい。さすが麻耶さんである。
その上での味付け(クソメル)だから、こんなに読ませる作品になるんだろうなぁ…。

「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」…美袋くん初登場作品。旅先で知り合った女が殺されることが予知できちゃう話。すごくシリアスな展開だった。睡眠学習的な作用を取り込んだミステリとしては異色作だと思う。
この時の美袋くんは普通の男子っぽかったのになぁ…。それにしても被害者の佑美子は軽い女だ。

「化粧した男の冒険」…他殺体(男)に化粧が施されてる話。証拠を捏造するメル、マジでクソである。

「小人閑間居為不善人」…暇にかまけて事件を誘導するメル、マジでクソである。

「水難」…十年前の土砂崩れで犠牲になった女学生が幽霊になって出てくる。幽霊が幽霊で終わったのがなんか新鮮だった。
それにしても事件の全容が分かっても解決しないメル、マジでクソである。

「ノスタルジア」…メルの書いたミステリを読んで美袋くんが犯人を当てなければいけない話。メルの思惑のとおりに読む力のある読者なんてどのくらいいるだろう。メルの言うように世界のほとんどの人間は凡人なんだから、大衆をクライアントにしてるプロならそこは考えないと。その意味でメル作のミステリは破綻してる(メルはプロのミステリ書きしゃないからいいんだけど)。
ところで、メルの書く文章は結構面白い。ただこれをプロが書いちゃダメだ。まるっと自分の名前で発表させられたであろう美袋くんが不憫でならない。

「彷徨える美袋」…友人さえも駒として扱うメル、マジでクソである。

「シベリア急行西へ」…二重にトラップが仕掛けられた殺人、犯人(冤罪)にたどり着く最初のトラップがすでに高度で、このトラップを考えた犯人に感心した。

1
2018年11月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

目次
・遠くで瑠璃鳥(るりちょう)の啼(な)く声が聞こえる
・化粧した男の冒険
・小人閑居為不善(しょうじんかんきょしてふぜんをなす)
・水難
・ノスタルジア
・彷徨(さまよ)える美袋
・シベリア急行西へ

初めて読みましたが、多分シリーズの途中作です。
キャラクターがすでに出来上がっている。
でも、今一つ彼らを好きになれないのは、なんでだろう。

語り手は売れない作家の美袋三条。
行く先々で事件に巻き込まれるが、自らそれを解決する能力はなく、渋々学生時代からの腐れ縁であるところの探偵・メルカトル鮎を頼ることになる。

探偵であるメルカトル・鮎がいったいどんな手段で生計を立てているのかは知らないが、人脈だけはものすごいものがあるらしい。
自分の探偵としての才能には絶対的に自身があるが、人間性には問題多々あり。

なんだか京極夏彦の「百鬼夜行」シリーズの関口と榎木津を彷彿させるんだけど、彼らに対して感じた好意というか、他人はわからないかもしれないけど、わたしにはわかるよ的な勘違いというか、そんな感情はこの作品ではみじんも湧いてこなかった。
逆に軽く嫌悪感。

ミステリとしては、非常に基本に忠実でわかりやすいのに、なんでこんなに登場人物が拗らせちゃっているのだろう。
もったいない。

0
2024年02月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

メルカトル短編集。もしかしてこの短編集が美袋くん初登場なのかな?
文庫の最後に初出一覧があるといいのにな。まさか「瑠璃鳥」が美袋くんのシリーズ初登場ってことないよね?だったらどうしよう……。しょっぱなからやばいやつじゃん。それはメルもだけどさ。

麻耶雄嵩はこれを含めてまだ三作しか読んでない(しかもすべてメルカトルもの)けど、タイトルのセンスがすごく好き。「メルカトルと美袋のための殺人」というのも、殺人をほんとに道具か何かのように粗雑に扱うこの二人にはふさわしいタイトルで面白い。

「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」 美袋の恋愛顛末。メルの説明に納得しちゃうのうそでしょ? メルの説明通りだとしたら、ワンナイトの相手としても選び方の無意識やばいでしょ。それに納得しちゃう人格でいいのか美袋くん……。でも大阪から長野までわざわざ車で来てくれるんだからメルも意外と友達甲斐があるのかしらね。

「化粧した男の冒険」 メル、いくらなんでも……証拠の偽造でしょうが。無茶苦茶でひどすぎて笑う。むしろ犯人はよく納得したな。

「小人閒居為不善」 これもひどい。というか、「小人」って、誰のことだろう? 暇を持て余してとんでもないDM送って殺人教唆するという不善をなしたのはメルだと思うんだけど、とすると、この「つまらない人」を意味する「小人」が示すのはメルのことだよね。「翼ある闇」が最後の事件となるメルにとって、その他の作品・事件は常にそれ以前に起きたことの振り返りになるわけで、その最後の事件で「ああ」なってしまうメルカトルに対する、「こんなに傲岸不遜な人間だけど、結局のところは小人である」という、作者のものすごく冷たい目線のように思えてびっくりした。麻耶雄嵩のタイトルセンス好きだけど、このタイトルは特に秀逸だと思う。

「水難」 これも偽名名乗ってるから事件がどうなろうとかまわない、ってひどい(笑) ミステリ的には面白かった。幽霊の扱いは、メルの世界だとそうなのね、と納得しちゃうのがずるい~。メルの力技じゃん。でも面白い。

「ノスタルジア」 メルの文章力(笑)作中作の中の警部の考え方に、メルの考え方がおそらく結構反映されているのが興味深い。メル、作中に王将に行きたいとか書いちゃってるけど、これそのまんま掲載されちゃうの?(笑)美袋くんも、まあ、裏でも表でも従兄弟のために角膜が手に入ればいいって、そんな無茶な。

「彷徨える美袋」 これノックスが欲しくて仕組んだな……。うまくやった犯人に対する意趣返しにしたってひどすぎて笑ってしまった。「たぶん殺されたんだろうと思ったね」って、そんな冷静に言うなよ~、友達だったんじゃないの?? 美袋くんもねえ、なんでこんなひどい目に合ってるのにメルとつるみ続けるのか。「いつか殺してやる」って、「水難」で殺人未遂の未遂しかかってるけど(笑)、どっちが先だったのかな。

「シベリア急行西へ」
ずいぶんまっとうなフーダニット。でも一筋縄ではいかないのがこの作者らしい。
この原型を大学一年生の時に書いてたのか。すごいなあ……。
舞台がロシアってところも面白いな。解説のネタバレはひどすぎるけど。

0
2020年07月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっと読みたいと思ってたメルカトル鮎物をやっと読みました。
噂に聞いてたとおり鬼畜ですね。
まぁでも探偵がかならずしもいい人とは限らないのだからこれはこれでありかと。
なにより美袋くんとの掛け合いが面白かったです。
本当に何故こんなにも嫌な奴と思いながらも付き合い続けてるんだろう…

『遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる』『小人閑居為不善』『彷徨える美袋』が特に良かった。
小人~は解説にも書いてありましたが、事務所に依頼人が来るというホームズのスタイルに近く、ラストの黒い感じも良かったと思います。
彷徨える美袋は見事な振り回されっぷりがまた…。
ラストは名ゼリフですね。

メルの性格が性格なので万人受けはしなそうですが、私は面白く読めました。

0
2015年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何故だか癖になってしまう摩耶雄嵩。摩耶作品としては比較的読みやすい文体でスラスラ読めた。
トリックもオーソドックスな物が多い。
メルカトルは...実際にこんな人物が周りに居たら、絶対に関わりたくないが、読んでる分には楽しい。

0
2012年04月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

メルカトル鮎。 短編集。
麻耶さんワールド、ハマる!
一般的な推理小説とはちょっと違うところがツボ。
素直に、解決した!良かった!ってことはまずない。

後から内容思い出せるように自分メモ。

瑠璃鳥:美袋の恋。佑美子。睡眠学習。
化粧:口紅。
小人:メルのチラシ配り。アリバイ作りの訪問。
水難:女子中学生の幽霊。
ノスタルジア:メルが書いた小説の犯人当て。上杉謙信。
彷徨:大黒のシガレットケース。
シベリア:列車内。眼鏡とコンタクト。左利き。

美袋くんはよくメルと友人やってられるなぁー。

0
2013年08月18日

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