【感想・ネタバレ】天の川の舟乗りのレビュー

あらすじ

金塊を祭る金延村に怪盗マゼランを名乗る人物から届いた『祭の夜 金塊を頂く』という予告状。実際は金色に塗っただけの石なのだが、それが知れると観光客が来なくなると危惧した村の有力者の娘は名探偵音野順と推理作家の白瀬白夜に監視を依頼する。しかし、警戒する二人の前で起こったのは密室殺人で……空飛ぶ舟や湖の巨大生物が目撃されるこの村で何が起こっているのか? 大胆なトリックと切実な動機が胸を打つ表題作のほか、事件の影響で祭が廃止された村で観光客の遺体が発見される「マッシー再び」など4編を収録。引きこもりがちな名探偵が活躍する人気シリーズ第3の事件簿。/【目次】人形の村/天の川の舟乗り/怪人対音野要/マッシー再び/解説=青柳碧人

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Posted by ブクログ

ネタバレ

 北山猛邦さんの作品の中でも、好きなシリーズだった名探偵音野順シリーズ。2009年刊行の第2作『密室から黒猫を取り出す方法』が最後だと思っていたが、まさか2021年に第3作が出ていたとは。書店で文庫版を見かけて知った次第である。

 作家の白瀬と引きこもり探偵の音野順というコンビは、何とか覚えていたものの、音野順の兄・要の存在は忘れていた。「物理の北山」らしい、他愛のないトリックを楽しむ作品集だったはず。予期せぬ書店での発見に期待は高まる。

 「人形の村」。お菊人形の話を聞いたことがある人は多いだろう。いいねえ、ネタからしてこのシリーズらしいじゃなーい。しかし、1編目からそりゃないよ。支障がない程度に書いておくと、「物理の北山」じゃないんかい!

 170pと長めな表題作「天の川の舟乗り」。怪盗からの予告状といい、金塊を祭る村といい、密室殺人といい、設定だけなら1編目同様にいい感じじゃなーい。焦点はトリックに限られる。……。まあ、タイトル通りではあるけども…。

 大変大掛かりではあるのだけれど、過去2作のようなクスっと笑えるトリックではないんだよなあ。一読者の勝手な感想と読み流していただきたいが、最もがっかりするタイプのトリックだった。最後の演出も、響かないというか。

 「怪人対音野要」。このシリーズは、毎回1編だけ世界的指揮者の要が探偵役を務める。舞台は古城。音楽トリビアの意外性に、ギリギリなトリック。そして胡散臭い名探偵退場シーン。こっちを長くした方がよかったんじゃないか?

 「マッシー再び」。ん?「天の川の舟乗り」の後日譚か? 引きこもりがひどくなった順を、連れ出した甲斐があった。これだよ。こういう微笑ましいトリックが読みたかったんだよ。最後にこのシリーズらしさを読めてよかった。

 最も長い表題作に最もがっかりした自分だが、解説を読んでそういう見方もあるかと思った。果たして第4作を読める日は来るか?

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2024年02月23日

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