【感想・ネタバレ】成熟社会の経済学 ――長期不況をどう克服するかのレビュー

あらすじ

需要が慢性的に不足して生産力が余り、それが失業を生み続ける現在の日本経済。これまでの経済政策はどこが問題なのか。新しい危機にはいかに対応すべきなのか。新古典派経済学の欺瞞をあばき、ケインズ経済学の限界を打破する、画期的な新しい経済学のススメ。閉塞状況を乗り越え、楽しく安全で豊かな国へと変貌するための処方箋。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

直観的に感じていることをズバリしてきてくれた一冊。しかも、著者は身近な組織にいる方と知って驚き。
今までのありきたりな経済財政政策じゃ、いまの日本にはなにも響かないってことを、わかりやすく指摘されている。
ここまで成長を遂げた日本の生活レベルにおいて、これ以上何を求めるのか?需要のないところに無理やり今までと同じ筋道で需要を掘り起こそうとしても土台無理な話。TVにこれ以上何の機能を求めるのか?スマホのカメラ機能(画素数しかり)をこれ以上上げることに意味はあるのか?ゲーム機だって、そう。DSやらWiiだって、ハードとして進化したけど、結局それに追いつく(追い抜くだけの)ソフトが出てこないから売れなくなった。それでもフローとして売り続けなきゃならないメーカーは、ガラパゴス化か補助金の援護射撃で需要の先食いしかできなくなった。

0
2012年03月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

高度成長期の日本は、消費者の欲しいものが沢山あり、何でも飛ぶように売れた。一生懸命働けばどんどん豊かになっていく経済のメカニズムがあった。今、日本は成熟社会となり、潜在的供給量は、資本の蓄積や技術の進歩で拡大し、需要を超えてしまった状態となっている。物やサービスが充実し、お金を放棄してでも購入しようというものがない。増産しても売れ残り、効率化を進めても労働力が余り失業が増えるばかりで経済拡大につながっていない。過去の成功体験による発展途上社会を前提にした政策は、結果として、バブル崩壊による不況を20年も継続させている。
成熟社会で必要な戦略は社会的に役立つ分野に政府が支援し雇用を作ること。生産の拡大ではなく需要の創出である。需要がないのに企業にがんばれといってもどだい無理な話。最終需要が変わらない中で職業訓練で労働効率が二倍になっても職を失う人が二人になるだけ。正規と非正規の格差を縮小しても就業者と失業者の格差を広げるだけ。需要不足が解決されない限り、いくら個別の対策を行っても解決にならずモグラ叩きと同じなのである。
いくら中央銀行が貨幣量を増やしても、今の日本のように失業が残ったまま不況が長期に続く場合、理論的にもデータ上でも効果はない。長期不況はお金への執着を増幅させ、お金が増えても貯蓄に回るだけで消費に回らないのである。加えて資金量を増やし続ければ円の信用も損なう。国債発行は増税という政治的には難しいことを先延ばしするだけで、既国債を信用不安に陥れる危険性のある政策。そうであれば、信用維持に軸足を置き、寧ろ増税により雇用を増やしてデフレと雇用不安を取り除くことの方が消費を刺激することになる。成熟社会の日本が取るべきは、財政の倹約ではなく、国民生活に貢献する事業を考えることなのである。とりわけ、人口の25%に過ぎない高齢者が全資産の約50%、金融資産のほぼ60%を持ち、高齢者の多くは現役時代に老後資金を貯め込みさらに消費税で集めた人口構成比以上の社会保険料を受け取ろうとしている。使いきれないお金の確保ばかりを考えている。老後生活を楽しく安心して暮らせるような提案が必要なのである。ちなみに高齢者を支え切れないから子供を増やすという政策は、必ずその子供たちも高齢者になることを考えれば、いつか必ず破綻する愚策である。
円高にしても過度な経常黒字がある限り継続する。円高の苦しみから逃れるためには、内需を増やして対外資産を減らすしかない。円高であれば外国製品を購入し、海外旅行を楽しめばよいのに自分では使わず、ODAで渡すのもいやがり、お金を握りしめ円高と失業を生んでいる。内需を増やさず生産力だけを高めても失業が拡大するだけであり、外需頼みでは円高を呼んで国際競争力が落ち不況を悪化させることとなる。
現下の日本の政策の誤りを明瞭に示している。発想の転換が求められている。

0
2012年06月25日

「ビジネス・経済」ランキング