あらすじ
コロナ禍直前の2020年初頭に刊行され、各紙誌書評で絶賛された著者の“会社員”小説史上最高傑作ともいえる『御社のチャラ男』が、ついに文庫化!
いませんか?
こんなひと。
どこにでもいる、軽くて世渡り上手なチャラ男。
わかっていますか、本当の彼のこと。
組織に属する「私たち」の実態にせまる“会社員”小説の傑作!
ジョルジュ食品はオイル、ビネガーなどの商品を扱う地方の小さな会社だ。
社長のコネでやってきた三芳部長は、社内でひそかにチャラ男と呼ばれている。
自分には自分がないと悟る三芳と、彼のまわりの人々が彼を語ることで見えてくる、この社会に生きる私たちの現実。
すべての働くひとに贈る傑作“会社員”小説。
「どこか滑稽な書名に騙されてはいけない。ここに描かれるのは、組織なるものの実態であり、現代社会の問題や病理であり、働いて生きていくという営みの本質である。ジョルジュ食品という、地方の小さな会社を舞台にして。よりによって、チャラ男を軸に据えて。(略)頁を閉じたとき、きっと誰もが、濃密な塊を受け取ることになる。言葉で容易に説明できないその塊は、読者個々の体内を長い時間掛けてさまよう。本作で得たものと、私たちは共に生きていく」(木内昇「解説」より)
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Posted by ブクログ
本筋とずれるが、自分もうつ病で仕事を休んでいるので、伊藤さんの独白が特に印象的だった。
「うつ病というのは、完璧主義の罰としていちばんきついものを集めたものだと思う」というくだりは本当に共感だった。
そんな彼女が、のちのちに仕事に復帰して、きつそうながらもまた働いている様子は希望に見えた。
また、別の人の話で、「うつは心の甘え」みたいなことを言ってるくだりもあって堪えたが、この本の中でたくさんの人の独白が出てくる中で、みんな考えてることや価値観が違っていて、「そう思う人もいるし思わない人もいるし、いちいちショックを受けることないな」と思った。
ぜんぜん別件だが、正義感が強く人の平等性を大切にする伊藤さんを評して「人類の半分を敵に回すと考えるのはきつそう」と漏らすくだり、身につまされる思いだった。正義感、というより自分が大切だと思うことを貫くことと、それによって他者を決めつけることは違うのだと肝に銘じたい。
そのほうが、生きるのが楽そうだ。