あらすじ
「世界標準」など気にするな。「ガラパゴス化」の何が悪い! いま人々が悩んでいる「デフレ」は、世界最高品質のものづくりと、文化的成熟を経た「独走する日本」ならではの現象である。本書はタイトルの通り、デフレ不況という見方を真っ向から否認するものである。「百年デフレは日本の時代」「デフレは『繁栄の証』である」等々、日本経済にまつわる「暗い通説」をどんどん覆していく。日本企業、とくにものづくりに携わる人々は、いくらグローバル化が進もうと、中国が台頭しようと「あっさりと自然体で」努力を重ね、現在においてもなお、途方もなくハイレベルな境地を維持している。デフレへの処方箋は「日本はこれからも同じようにすればよい」、つまりサブプライム金融危機やギリシャ危機など、外の問題に目を奪われて日本の良さを見失わなければ、心配する必要はないということだ。長年日本経済を見てきた論客二人が縦横無尽に語り合う、圧倒的な一冊。
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Posted by ブクログ
デフレ不況という言葉があるくらいに「デフレ」というのはマイナスイメージが強く、長い間デフレに悩まされ続けている日本はデフレを克服しなければという議論を聞くことがあります。
この本では、私がもう15年は読み続けている、日下氏と長谷川氏が対談形式で、デフレ下においても日本企業は強いという論理を展開しています。デフレにおいても力強さを発揮する日本に期待したいと思います。
中国やインドが成長著しいのは認めるところですが、私の感覚では私が子供だった30年以上前と似たような感じがしていて、成熟した後に日本と同じような悩みをするのではと思っています。日本は今や世界の最先端にあるという彼らの考え方は共感できると思いました。
以下は気になったポイントです。
・日本車のリース料金をアメリカで決めるのは、自動車メーカではなくアメリカのリース会社であり、GMは日本メーカに文句をいうことができない(p19)
・トヨタのロシア工場は、赤字で操業一時停止となり、第二工場の建設工事は中止になった、トヨタの失敗例の一つ(p25)
・トヨタショックが起きた背景は、1000万台の生産能力があるのに60%しか動いていないこと(p26)
・トヨタのアメリカ国内における部品調達率は9割で、フォードよりも高い、今回のトヨタたたきは無茶苦茶(p30)
・世界の工作機械の市場占有率は日本が27%、太平洋戦争時代はほとんどがアメリカ製であり、その能力が日本の軍用機の生産台数を決定していた(p36)
・世界のすべての国に対して特許の国際貿易が黒字であることを経験した国は歴史上で、アメリカ、フランス、イギリスと現在の日本のみ、イギリスが産業革命で大きく技術が進歩した原因の一つが特許という形で発明を保護したことにある(p37)
・中国の建設機械は日本の3分の1の値段だが、耐久性が5分の1以下、なので日本製の中古品も人気あり(p43)
・タクシー業界は1日270キロという規制がある、i-MiEVでは2回充電で済み、電気代は729円、燃料代は圧倒的にEVが安い、電気自動車の運行コストがガソリン車の6分の1(p50、93)
・ニューヨークの地下鉄の落書きが減った理由の一つとして、川崎重工製の車両が入ったから、モップで簡単に落書きが消せてしまうから(p52)
・日本の宅配サービスが凄いのは、集金(代引き制度)ができるから、日本以外の国では担当者が持ち逃げするので成立しない(p53)
・世界の歴史を見れば、戦争の時代はインフレ、平和な時代はデフレ(p61)
・かつてのソ連、中国などの社会主義国は例外なくデノミをしている、旧ソ連は1948年に100分の1、中国では1950年に100分の1、ハンガリーは10京分の1、ドイツでは連合軍占領下で10分の1、日本はデノミなしだが新円切り替え、フランスやイタリアも実施(p62)
・円高にも拘わらず日本の輸出が増え続けたかは、耐久消費財が2割と少なく、生産財や資本財が多いから(p68)
・現代重工の群山造船場においてもエンジンは日本製を使用、それを使わない限りロイズが保険をかけないから(p84)
・1トンの貨物を1キロメートル運ぶ輸送量を「トンキロ」という、最もエネルギー量が少ないのは「艀(はしけ)」、列車はその8倍、トラックは25倍(p88)
・アメリカの大学ではアジア各国から留学生がきているが、共通の話題は日本の漫画という話もあり(p105)
・世界ブランド国ランキングによれば、2009年は、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリスに次いで日本は5位(p110)
・なぜ日本で社長の個人保証制度があるかは、終戦直後には、銀行が担保を求めようにも焼け野原の土地では価値がなかったので、ギリギリの線で個人保証に落ち着いた(p160)
・新幹線用のレールを作れる(圧延できる)技術があるのは、新日鉄の君津と、JFEの扇島のみ、車両は日立製作所と日本車両、川崎重工のみ、イギリスでは日本の新幹線を導入済みで2009年8月に174両を引渡し済み(p168)
2010/09/12作成