【感想・ネタバレ】ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつくのレビュー

あらすじ

音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」。宮部みゆき氏絶賛の衝撃的歴史ノンフィクション、待望の文庫化!

現代に語り継がれるベートーヴェン像は、秘書により捏造されていた!? 「会話帳改竄事件」の真相に迫る、衝撃的な歴史ノンフィクション。「会話帳」とは、聴力を失ったベートーヴェンが周囲の人とコミュニケーションを取るために用いた筆談用ノートのこと。
100年以上にもわたり多くの人々を騙し続けた「犯人」の名は、アントン・フェリックス・シンドラー。音楽家でもあり、誰よりもベートーヴェンの近くで忠誠を誓い、尽くした人物である。なぜ、何のために彼は改竄に手を染めたのか? 音楽史上最大のスキャンダルの「犯人」・シンドラーの目を通して、19世紀の音楽業界を辿る。音楽ファンもミステリーファンも絶賛した名作がついに文庫化!
◎解説=栗原康

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Posted by ブクログ

ネタバレ

宮部みゆきさんの推薦コメント「徹夜本です。」の帯文も強烈な印象の文庫新刊。
我々世代が子供のころに読んだ子供向けベートーヴェンの伝記は、交響曲5番がなぜ運命と呼ばれるかとか、不滅の恋人へのラブレターは誰に書いたのかとか、テンペストの命名由来とか、8番シンフォニー第2楽章がメトロノームを作ったメルツェルと関係があるだとか、あとなんといっても甥のカールの自殺未遂事件が、カールの悪行、放蕩癖などベートーヴェンの悩みの種の末の事件だったりとか、魅力的なエピソードにあふれてました。だからそういった知識で子供なりのベートーヴェン像ができあがったのだけど、そのほとんどが1人の男による捏造であり、その顛末を史実と推定を交えながらじっくり描いたのが本書。もともと根底には綿密な学術分析がなされており、立派な論文を読みやすい口調に変え、誰もが親しめる読み物にしたことが面白さの最大の要因かな、とにかく面白い。200年前に起こったことが、まるで現代の物語を読むように活き活きとしたシンドラーの数奇な人生です。
ベートーヴェンの人生は、その後大人になるにつれ、それぞれ事実ではなく逸話だと個々には理解していったが、それがシンドラー独りによる大捏造事件だったということは、不覚にも読むまで理解してなかった。
捏造が明確になったのが1977年。じゃあ、それから50年近く経っても、われわれは運命交響曲と呼んでいて何の違和感もないのか? キャッチコピーと真実のずれの功罪も含め、現在のSNS等の拡散の問題や、フェイク情報といった問題に通じ、深く考えさせるテーマも孕んでいる。
歴史学が勝者の歴史として真実が大きく歪められることがあるように、ベートーヴェンとの400冊にも及ぶ会話帳を独占したシンドラー、、、情報戦の勝者として、彼が作った欲と見栄に散りばめられた歴史をぜひ味わってほしい。
最後に、「リスト、お前もかよ。。。」ですね^^

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2023年11月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

歴史的出来事だが、スラングを用いて書かれているため、物語に入りやすかった。
ベートーヴェンは難聴の天才音楽家という情報くらいしか知らないが、ベートーヴェンの周辺人物に関する話でも面白かった。

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2025年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

修士論文がベースになっているとのことで、小説と論説の中間のような不思議な語り口(だからこそ、とても読みやすい)作品。
シンドラーという人物を知れたことが大収穫。
しかしベートーヴェンは「会話帳」があったからこそ「露呈」したが、ほかの偉人たち、芸能界のスターたちだって、多かれ少なかれ周囲のだれかのフィルターによって、その人物像は「捏造」されていると思う。
そう思うと、なんともいえぬ普遍性もある。
屈折した承認欲求って、面白い、だけど狂気。

論説や考察などはなしに、さらにシンドラーの感情や狂気に大胆に肉迫し、どっぷり没入できるような重厚かつリアルな本格小説が、今後発売されたら読んでみたい。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初読。「なんでそんな捏造を?」と思いながら読んでいくと、「うーん、まあそれもある意味ありなのか?」に少しずつ変わっていってしまいそうになるのが面白い。文体というか語り口を現代的にしている手法が印象的。ベートーヴェンはやはり天才で、周囲にいる人は天才に惹かれたり反発したりして狂わされていくんだなあ。

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2024年03月13日

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