【感想・ネタバレ】ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつくのレビュー

あらすじ

音楽史上最大のスキャンダル「会話帳改竄事件」。宮部みゆき氏絶賛の衝撃的歴史ノンフィクション、待望の文庫化!

現代に語り継がれるベートーヴェン像は、秘書により捏造されていた!? 「会話帳改竄事件」の真相に迫る、衝撃的な歴史ノンフィクション。「会話帳」とは、聴力を失ったベートーヴェンが周囲の人とコミュニケーションを取るために用いた筆談用ノートのこと。
100年以上にもわたり多くの人々を騙し続けた「犯人」の名は、アントン・フェリックス・シンドラー。音楽家でもあり、誰よりもベートーヴェンの近くで忠誠を誓い、尽くした人物である。なぜ、何のために彼は改竄に手を染めたのか? 音楽史上最大のスキャンダルの「犯人」・シンドラーの目を通して、19世紀の音楽業界を辿る。音楽ファンもミステリーファンも絶賛した名作がついに文庫化!
◎解説=栗原康

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Posted by ブクログ

最初から最後まで衝撃。
全然知らなかった、こんな出来事が起きてたなんて!
誰もが音楽の授業で習ったことが事実ではなかったなんて。
シンドラー目線で進んでくのでドキドキしつつも哀しく切ない。
同情は出来ないし理解も出来ないけれど、今も皆が運命だと思ってるってシンドラーが知ったら、、、
ページをめくる手が止まらない、とても面白い作品でした!

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2025年05月10日

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面白かった。途中からは一気読み。前半は、師匠に好かれていない可哀そうな付き人の話で同情を誘うところもあるのだが、後半はもうちょっと多様な見方ができる。読みようによってはピカレスク(悪漢小説)的でもある。ベートーヴェンの見方も変わるかも。

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2023年12月13日

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ネタバレ

宮部みゆきさんの推薦コメント「徹夜本です。」の帯文も強烈な印象の文庫新刊。
我々世代が子供のころに読んだ子供向けベートーヴェンの伝記は、交響曲5番がなぜ運命と呼ばれるかとか、不滅の恋人へのラブレターは誰に書いたのかとか、テンペストの命名由来とか、8番シンフォニー第2楽章がメトロノームを作ったメルツェルと関係があるだとか、あとなんといっても甥のカールの自殺未遂事件が、カールの悪行、放蕩癖などベートーヴェンの悩みの種の末の事件だったりとか、魅力的なエピソードにあふれてました。だからそういった知識で子供なりのベートーヴェン像ができあがったのだけど、そのほとんどが1人の男による捏造であり、その顛末を史実と推定を交えながらじっくり描いたのが本書。もともと根底には綿密な学術分析がなされており、立派な論文を読みやすい口調に変え、誰もが親しめる読み物にしたことが面白さの最大の要因かな、とにかく面白い。200年前に起こったことが、まるで現代の物語を読むように活き活きとしたシンドラーの数奇な人生です。
ベートーヴェンの人生は、その後大人になるにつれ、それぞれ事実ではなく逸話だと個々には理解していったが、それがシンドラー独りによる大捏造事件だったということは、不覚にも読むまで理解してなかった。
捏造が明確になったのが1977年。じゃあ、それから50年近く経っても、われわれは運命交響曲と呼んでいて何の違和感もないのか? キャッチコピーと真実のずれの功罪も含め、現在のSNS等の拡散の問題や、フェイク情報といった問題に通じ、深く考えさせるテーマも孕んでいる。
歴史学が勝者の歴史として真実が大きく歪められることがあるように、ベートーヴェンとの400冊にも及ぶ会話帳を独占したシンドラー、、、情報戦の勝者として、彼が作った欲と見栄に散りばめられた歴史をぜひ味わってほしい。
最後に、「リスト、お前もかよ。。。」ですね^^

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2023年11月13日

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知らなかった歴史研究の裏側をこんなにもポップにまとめ上げていることに、まずは感動した。学べる内容でありながら、とんでもないことをしでかしたシンドラーにはおい!という気持ちしかなくて笑ってしまう。こんなに読みやすい形で、世に出してくれてありがとうございますの気持ちです。

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2025年11月03日

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Audibleにて聴書。
音楽室見る苦悩に満ちたベートーヴェン像はシンドラーというシガナイ助手(それも短期間の)によるフィクションだった、という話。映画『アマデウス』といい当時の音楽家は聖人君子からは程遠い人間だったのだ。かといって音楽の価値は1ミリも下がるものではないが。

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2025年10月24日

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ネタバレ

歴史的出来事だが、スラングを用いて書かれているため、物語に入りやすかった。
ベートーヴェンは難聴の天才音楽家という情報くらいしか知らないが、ベートーヴェンの周辺人物に関する話でも面白かった。

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2025年10月19日

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著者の修士論文をもとにノンフィクション小説らしく書き直された作品とのことで、内容は大変読み応えがあり最後まで興味深く拝見しました。
これまで全く知らなかった事実を目の当たりにして驚きの連続でした。
これは本当に面白い作品です。

誰もが知る偉大な音楽家ベートーヴェン。
交響曲第5番を聞けば「あ、運命っていう曲だ!」と思い当たる人がほとんどだと思います。
あの有名なフレーズの「ジャジャジャジャーン」は運命以外の何者でもないですよね。

それが捏造だったなんて!!!!!!笑

ベートーヴェンが後世にも語り継がれるほどの偉大な音楽家になったのは、名プロデューサーであるシンドラーの功績(?)だったのですね笑

晩年のベートーヴェンは耳が聞こえなくなり筆談で過ごしていたことは周知の事実ですが、まさかその時に用いられていた会話帳がシンドラーの改竄だらけだったなんて…!
そんなの歴史の研究者は怒り心頭ですよね笑笑
でも私はシンドラーの気持ちが少し理解できます…本当にベートーヴェンとその音楽を愛していたんだろうなぁ…

著者の言葉選びが秀逸でユーモアがあり、とても読みやすく最後まで飽きのこない記憶に残る一冊でした。
音楽に興味がない人でも楽しめると思います。
これが映像化されたなんて興味あります笑
サブスクで見れるようになったら映画も見てみたいです!

年末になれば街中でもテレビでも第九を聞かない日はありませんが、今年の第九はこれまでとはまた違った印象をもって聞くことができそうです笑

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2025年10月08日

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オーディブルにて。かなり面白かった。
主役であるはずのシンドラーが語り手からも他の登場人物からも、皆からディスられているのが笑える。
冒頭に音楽史上最大のスキャンダルとしてベートーヴェンの会話帳改ざん事件が語られた際は、一体なぜそんなことを…と理解不能だったのだが、読み進めるうちにシンドラーの考えもわからなくもないという気持ちにさせられる。しかもそれを現代風に「プロデュース」と言ってしまう著者の解釈が良い。

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2025年10月03日

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語り口がカジュアルで、俗語も使われたりするので、ベートーヴェンの体裁を守るためのドタバタコメディのように感じる部分があり楽しめた。
耳が聞こえないベートーヴェンだからこそ、会話帳が存在し、それを元に捏造できるという特殊な状況がおもしろい。
自分がもつ、天才音楽家ベートーヴェンへのイメージが壊れたら嫌だったけど、捏造はどちらかというと素行の方面の話だったので安心した。
シンドラーの捏造は罪だけど、愛ゆえの狂気というか、それほどまでに人を熱狂させる特別な魅力がベートーヴェンならばあったのだろう。
むしろ、歴史上の偉人の中にも、名プロデューサーによって聖人君子にされている人がいるかも。

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2025年09月27日

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こんな真面目な研究書とは思わずに手に取りました。運命もテンペストも、伝わっているエピソードは捏造だとは聞いていましたが、こいつの仕業だったのですね。尊敬する大先生の近くでお仕えできたのに長続きせずに遠ざけられた。でも側近だったと見栄を張りたい。気持ちは分かります。同じ状況なら、実行するかどうかは分かりませんが私もその誘惑に取りつかれそうです。ただしやり方はちょっと抜けていというかお粗末。それでも3回もオフィシャルな伝記を書き上げたのですから大したものだと思います。愛すべき詐欺師、と思ったら思う壺にはまったということでしょうか。

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2025年09月19日

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ベートーヴェンの秘書シンドラー。
ベートーヴェンの死後、会話相手の筆談ノート「会話帳」を改竄して、伝記を捏造。
遠い未来に捏造の事実がばれる!

もうシンドラーに対する書かれようが酷くて、本人には悪いが、その人間性はちょっとギャグレベルで、ヤバいという言葉がピッタリはまる。
しかし、私が知っているトリビアは、多分シンドラーが捏造した神格化されたベートーヴェンなんだろうなぁと思うと、ちょっと悔しい。

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2025年08月17日

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ベートーヴェンは好きな曲が沢山あります。
幼少期に伝記も読みましたが実際は神聖な作曲家
ではなかったようです。
ベートーヴェンは耳が悪くなってから会話帳を使ってやり取りをしていたそうです。
アントン・フェリックス・シンドラーはベートーヴェンにとっては弟子ではないしまあまあ使える世話係くらいな人物のよう。
シンドラーは、ベートーヴェンの死後会話帳を改竄して伝記を書きます。ベートーヴェンにとって都合の悪い事は書かずシンドラー自身ももっとベートーヴェンと親密な関係にあるかのように、、

あまり引き込まれず読むのに時間がかかってしまいました。

ベートーヴェンが人として立派じゃないとして曲は大好きです。
熱情、月光、悲愴、ワルトシュタイン、、色々
好きです。

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2024年07月22日

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ベートーヴェンの伝記が捏造されたものだったとは。

この話はにわかには信じがたかった。読み進めながら頭の中では子どもの頃に読んだ伝記の様々なシーン、そしてTEAM NACSの舞台の光景、様々な曲が、代わる代わる浮かんでは消える。

共感も同情も無いけれど、ヒリヒリした展開に目を離せなかった。

難点は自分は横文字の名前を覚えることが苦手である。
それゆえ洋画も苦手。
読みながら「えっと、この人だれだっけ?」と思うことがハイパー多かった。

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2024年05月11日

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 皆さん、知ってましたか? 今年は、ベートーヴェン「第九」初演200周年なんですって! それがどうしたって? 難聴の苦悩を乗り越えての〈歓喜の歌〉は感動的ですよね。日本では年末恒例! どうでもいいって? でもこの楽聖が活躍していたのはたった200年前!ついこの間です。

 ベートーヴェンには、聴覚を失った晩年、家族・友人・仕事仲間とコミュニケーションを取るための筆談用ノート、いわゆる「会話帳」がありました。
 1977年に、この「会話帳」138冊で150箇所が改竄されていると発表され、世界を震撼させます。その人物こそ、ベートーヴェンの晩年、音楽活動や日常生活を補佐し、ベートーヴェンの伝記も著しているシンドラーでした。

 本書は、シンドラーが覆い隠した真のベートーヴェン像に迫るため、シンドラーの視点に立って、改竄に至った動機や経緯を明らかにしようとしたノンフィクションです。

 「実におもしろい」です(湯川か) 「物事には必ず理由がある」(そうだよね) 「仮説は実証して初めて真実となる」(うんうん、おらは読むだけだけどね)
 筆者は、シンドラーvsベートーヴェン及び周辺関係者の構図を取り、両者に加担したり敵対したりし過ぎずに、時にツッコミを入れながら根拠を基に持論を展開します。それでも、シンドラーの会話帳改竄の顛末書として全容解明に至りませんが、十分に説得力のある仕上がりだと思いました。

 オペラのオーケストラ演奏に似せた、序曲→第一幕→間奏曲→第二幕→終曲といった構成、さらに会話帳からの当時のこぼれ話や豆知識を、バックステージとして紹介しているのも興味深いです。
 一個だけ。本書のタイトル、関心を持ってまもらうもう一工夫できなかったでしょうか?

 それにしても、偉大な人物の周辺に様々な確執が生じるのは世の常なのでしょうね。加えて我々人間は、過去から学ばず再発防止にもつながっていない現実を見るにつけ、人間の愚かさを感じずにはいられません。

 しかし、大作曲家としてのベートーヴェンの功績は色褪せることはないでしょう。また年末に、生で第九を聴きたくなりました。
 3年後はベートーヴェン没後200年です。どんなイベントが開催されるんでしょうね。

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2024年04月17日

購入済み

ナナメな才能というべきか。名プロデューサーにもなり得た存在なのかもしれないん。推理小説か。はたまた戯曲なのか。一気読みでした。

#シュール

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2024年02月16日

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本書は、要するにシンドラーの伝記のような位置づけになるんでしょうか。

これまでいつも何らかの形で音楽に関わってきたので、ベートーヴェンに関する数々の逸話と、「その話、本当じゃないらしいよ」という言葉を聞く機会はそれなりにありました。その辺りを整理している本を読んだのは、本書が初めてです。

読みながら、一次情報になるって予想できていながら手を加えるなんて…!と思うこともありました。でも、シンドラーがこういう思考を辿ったうえで手を染めていたのなら、何と言っていいかわからなくなりますね。

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2024年01月27日

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歴史の捏造という大罪を犯してまでシンドラーが守りたかったもの。
彼の必死さと情熱は人間臭くて、責めるに責められない。

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2024年01月27日

Posted by ブクログ

面白い。音楽なんて、クラシックなんて何ひとつ知らないけれどそんなの関係なく楽しめました。
史実はもちろん1つだけれど、そのエピソードにまつまる当事者たちの背景と解釈と現実は違う。もちろんベートーヴェンに限った話だけではなく当たり前に色んなところで起きてると思うとまた面白い。
シンドラー、憎めない彼を私は嫌いじゃないな。

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2025年11月18日

Posted by ブクログ

歴史上の天才として名を遺した人物には、光も影も大きいから周りで生きた人々にも大きな影響あるんだな、と考えさせてくれた1冊。
そう、音楽は詳しくなくても、どこの小学校にも飾られている、ベートーヴェンを知らない人は恐らくいない。その天才を身近に暮らした人のことは考えたことなかったけど、こういう見方もあるのか、と楽しませてもらえる作品でした。

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2025年11月09日

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ベートーヴェンの側近?シンドラーによる捏造の話。映画化されたとのことでどんなもんかとオーディオブックで聞いてみたが、登場人物の相関図なしでついていくのがちょっとアレだった。まぁ実際のところはどうなんだろうねと。歴史上の偉人が実は聖人君主ではないことはままあることで、歴史も解釈とか人によってそうありたいって願望でいろんな見解があるし、こういうのもアリなんだろうと思う

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2025年10月20日

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ネタバレ

修士論文がベースになっているとのことで、小説と論説の中間のような不思議な語り口(だからこそ、とても読みやすい)作品。
シンドラーという人物を知れたことが大収穫。
しかしベートーヴェンは「会話帳」があったからこそ「露呈」したが、ほかの偉人たち、芸能界のスターたちだって、多かれ少なかれ周囲のだれかのフィルターによって、その人物像は「捏造」されていると思う。
そう思うと、なんともいえぬ普遍性もある。
屈折した承認欲求って、面白い、だけど狂気。

論説や考察などはなしに、さらにシンドラーの感情や狂気に大胆に肉迫し、どっぷり没入できるような重厚かつリアルな本格小説が、今後発売されたら読んでみたい。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

映画化されたので読んでみました!
「ベートーヴェンのイメージって、そもそも作られたものだったの?」という切り口が面白かったです!

偉大な作曲家の「人物像」や「物語」が、どのように後世の人に脚色されて広まっていったのかが丁寧に描かれていて、歴史そのものを読む楽しさがありました。ベートーヴェンの実像よりも「こうあってほしい英雄像」が優先されてきたのかと思うと、人は無意識に“物語”を信じちゃうんだなあと実感。日本の歴史上の人物も、もしかしたら全然違うんじゃ…なんて想像もしてしまいました。

研究書っぽい堅さはなく、クラシックに詳しくなくても「え、そうなの!?」と驚いたり、思わずクスっとしたりで読みやすかったです。ただ、私は海外の人の名前を覚えるのがとにかく苦手なので、有名人や主要人物以外は頭に入らず「この人誰だっけ?」と何度も戻ってしまいました。そこは完全に自分のせいですが、星は3つにしました。

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2025年09月27日

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これが実写映画になる、という情報をネットで見かけて手に取った本。バカリズム脚本、ベートーヴェン役は古田新太。何をどうするおつもりで…?

タイトルの「名プロデューサー」とは、一時期ベートーヴェンの付き人的なことをしていたアントン・フェリックス・シンドラー。巨匠への激重の愛と崇拝(そして自己愛)が捏造の動機。

とりあえず手口に品がない。生前使っていた会話帳の内容をねじ曲げて、自分は上げ、都合の悪い人間を下げ、ベートーヴェンの欠点は抹消。そして、美化エピソードでコテコテに盛った伝記を書き上げた。

そして、ベートーヴェンの方もまあまあヤバい。シンドラーの美化を差し引いた素の姿は、癇癪持ちで過干渉なパワハラおじさん。甥っ子は自殺未遂にまで追い込まれる。

え、マジ?ヤバいっすね!

感想がこんな感じになってしまうくらい、とにかくこの本の文体が軽い。
登場人物たちの独白は
「どうするよこいつ」
「みんなハッピー、みんなフロイデ」
「なにそれおいしいの?」
「ばーかばーか」
なんかネットの煽り合いみたいになってるんですけど。

確かに、素晴らしい作品を残していようとも、音楽の教科書で「楽聖」と呼ばれようとも、人としては決して偉人でも聖人でもなかった…のは、それなりに察してましたけど。ここまで崩す?

著者は、あえて現代の軽い言葉遣いで書いたという。そして、一時期はそうであった「研究者」というスタンスを離れて書いていることにも自覚があると。
ふざけてんな〜と思わせつつ、内容は事実に則っており、ノンフィクションの体をとっている。いろいろ考えてギリギリを攻めた結果がここらしい。

かといって、それを快く受け容れられるかどうかはまた別な話でしてぇ…

こんなの読んじゃって、この先どんな顔してベートーヴェンの音楽を聴けばいいの。

困った本です。マジで。

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2025年07月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初読。「なんでそんな捏造を?」と思いながら読んでいくと、「うーん、まあそれもある意味ありなのか?」に少しずつ変わっていってしまいそうになるのが面白い。文体というか語り口を現代的にしている手法が印象的。ベートーヴェンはやはり天才で、周囲にいる人は天才に惹かれたり反発したりして狂わされていくんだなあ。

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2024年03月13日

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耳が聴こえないベートーヴェンとの会話帳を改ざんしたアントン・シンドラーの物語。天才をとりまく愛と憎しみの表裏。ノンフィクションだと思うたび、その生々しさに浸る。

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2024年02月24日

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ピアノを習ってます。11月中旬ぐらいに先生と「今度はベートーヴェンのピアノソナタを弾くか。」という会話をした直後に本屋でこの本を見かけ、買ってしまった。今読まなくていつ読むの?てな感じで。

『第一幕 現実』を読んでる時は楽しかった。シンドラーという秘書が捏造していくんだけど、このシンドラーとベートーヴェンのやり取りが面白い。2人とも一癖も二癖もある。ベートーヴェンはとっても面倒くさいおじさん。シンドラーは勘違い野郎で鬱陶しい性格。この2人が合うはずもなく、コントを見てるみたいだった。でも、考え方によっては実は最強のコンビかも。大きな事業を成功させてるし。

『第二幕 嘘』からは本当にイライラしっぱなし。ベートーヴェンの伝記を誰が書くのか?で争いが始まり、シンドラーの捏造が始まっていく。悪知恵が働くこととベートーヴェンを好き過ぎちゃったのが、いけなかったんだろうと思う。一回捏造が上手くいくともう罪悪感が吹っ飛んでしまい、あとは自分の思うままに。ベートーヴェンを守る目的だったけど、最終的には自分をよく見せたいだけだ。これは自己顕示欲が強いってことだと思うんだけど、ベートーヴェンに認めてもらってれば、少しは違ってたのかもしれない。

この本を読む楽しみの一つは、ベートーヴェンの弟子のチェルニーが登場する事。作中ではあまり登場しなかったけど、わたしはチェルニーに興味があった。なぜなら、このチェルニーさんが作った練習曲に悩まされてるから。子供の時も好きではなく、大人になってもやっぱり好きになれない。だって難しいから。ピアノをまた始めたきっかけはベートーヴェン。ベートーヴェンを弾けるようになりたくて。先生にそれを言ったら「ベートーヴェンを弾くなら弟子のチェルニーをまず弾けるようにならないと。」と言われ、正直「え〜⁈」だ。でも、チェルニーさんのおかげで今も指が動くのを実感してるから感謝。
チェルニーはリストの先生であり、その他のピアニストも育てた。教本も多数出していて、その一つは私もお世話になっている。この本を読んで初めて知りました。

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2024年01月28日

Posted by ブクログ

「筆談の目的は、ベートーヴェンとのコミュニケーションだ。コミュニケーションを記録することではない。それにもかかわらず、紙という存在が偶然もっている特性ゆえに書きつけられた言葉は時間を超えて保存され続ける。何年も、場合によっては何十年何百年も。」(p.117)

昔から「紙に文字を記録する」ということへの偏執はひどいのだけど、それが「歴史を紡ぐ」こととほぼ同義なのだと認識を新たにする。正しかろうが、誤っていようが、それはそのまま、後世に託される。音声は形を持たないし、電子データは保存性、記録性という意味で非常に脆弱である一方、かさかさと乾いた紙に刻まれた文字は常に歴史の証人なのだ。

「あなたはこうあるべきだ」「こうでなければならない」というファナティックな姿、自他境界が曖昧な様というのは、滑稽にも映るけれど、それは現代の偶像(アイドル、あるいは推し)崇拝にとても似通っていて、いつまた同じ過ちが侵されるか分からない怖さがある。そもそも「過ち」でさえないのかもしれない。
時代の要請に従って、わたしたちは見たいように見たいものを見て、オセロの白石を黒石に替え、黒石をひっくり返し白石にする。「正しさ」は常に揺らぐのだということ。あなたはあなた、わたしはわたし、の線引きをしっかりすることの重要性を改めて肝に銘じる。

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2024年01月22日

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