あらすじ
ヒットラーの攻勢の前に、絶体絶命の危機に陥った斜陽の老大国イギリス。その時、彼らが指導者に選んだのは、孤高の老政治家チャーチルだった。なぜ国民はチャーチルを支持したのか。なぜチャーチルは危機に打ち克つことができたのか。波乱万丈の生涯を鮮やかな筆致で追いながら、リーダーシップの本質に迫る力作評伝。
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意思の人
政治家に必要な能力には、先見性 教養 知性 交渉力 人間性 など多くの要素があるが、その中でもとりわけ重要なの要素が「継続する意思」だと思う。この不屈の意思こそがその他の要素では取り立てて優れていたわけではないチャーチルを救国の英雄とした。
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[彗星のごときパグ]第二次世界大戦時、類い稀なるリーダーシップをふるい、英国を滅亡の淵から救った立役者、ウィンストン・チャーチル。英国政治の異端とされた男が、危機においてどう考えどう振る舞ったのかを丁寧にたどるとともに、危機において求められるリーダー像を考えていく作品です。著者は、外交官として英国に赴任された経験も持つ冨田浩司。
誰でも名前だけは知っているチャーチルですが、政治家だけでなく軍人、そして作家としての側面も丹念に記述がなされており、入門的一冊としてピッタリ。また、人生の大半を英国政治の中枢において過ごしているため、チャーチルを軸とした英国近現代史としても読むことができます。あまり紹介されないチャーチルの家庭人としての側面(必ずしも幸せ一色ではなかったようですが...)を知ることができたのも収穫でした。
時と場合によって求められる指導者像というのはずいぶんと異なると思うのですが、あの「強烈」な時代においてはチャーチルぐらいの「強烈」な人間でなければ一国を率いることはできなかったのかもしれません。そういった意味ではチャーチルの首相就任はいわば「天の采配」によると言えるのかもしれませんが、その采配をたぐり寄せられるだけの柔軟性をもった英国政治というものにも興味が尽きませんでした。
〜ノルウェー討議からチャーチルの首相就任までのプロセスは、国家存亡の危機において最も相応しい指導者を選び出す能力を備えていたという意味で、英国の政治制度の強靭さを示している。しかし、制度を動かすのは、詰まるところ時々の人間の判断であることも忘れるべきではない。〜
やっぱりイギリスに行きたいな☆5つ
Posted by ブクログ
ルーズベルト、スターリンと並ぶ大日本帝国の仇敵の1人、チャーチルの伝記。まさに戦争指導のために生まれてきた(と本人が思い込んでいた)政治家の存在によって、崩壊の危機スレスレにあった大英帝国が生き長らえさせされたのは間違いない。
日本が対英米蘭に宣戦布告し、結果として米国の対ドイツ戦を可能とならしめた際の「結局のところ我々は勝ったのだ。」という言葉は、日本人としては痛烈な皮肉として受け止めざるを得ない。
最近出版された本なのではあるが、別に3.11や、その他国内情勢にムリヤリこじつけることもなく、かなり客観性を意識して、事実を書き連ねた内容や構成にはかなり好感を感じた。
そして何より専門の作家や研究者ではなく、一外務官僚がこのような文章を書いて本を出版した、という事に意外さを感じつつも、ああ日本の官僚にも優秀な人はやっぱいるんだな、と感じることができた。それが一番の収穫だったかも。
Posted by ブクログ
学問的に先進的な書ではないが、一般読者向けにチャーチルの人間性に焦点を当てており読みやすい。演説や先行研究者によるチャーチル評をふんだんに盛り込んでいる点も親切。
日本には危機の時代に耐えうる指導者がいるだろうか?リーダーシップの本質は「他の誰よりもうまくやれるという確信を持つこと」であるという。リーダーシップのスタイルには様々なものがあろうが、これは不可欠だと思う。
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駐英経験豊富な外交官である著者が、執筆当時の最新の研究成果も踏まえながら、第二次世界大戦時の英国を指導したチャーチルの多面的な人物像を紹介。
時系列でチャーチルの足跡をたどるのではなく、政治指導者としてのチャーチルを理解するためのいくつかの切り口を特定し、掘り下げた考察を加えるというスタイルを採用している。具体的には、青年期、政治信条、家庭といった指導者としての人格を形づくった要素を吟味した上で、第一次大戦中、戦間期、第二次大戦中のそれぞれの時期において、チャーチルがどのように実際の危機に取り組んだかを詳述し、最後に危機における政治指導者の在り方について著者の考察を示している。
名前だけは知っているという程度だったチャーチルについて、その人生の大まかな流れが把握できたとともに、チャーチルのある面で傑出した人物像がよく理解できた。
特に、チャーチルの若い頃からの野心とエネルギー、自身に対する揺るぎない信頼は、他人から見たらいかがなものかと思う面もあったとは思うが、危機に直面する政治指導者としてはこの上ない特質だったように思うし、率直にすごいなと感じた。
また、著者がチャーチルの政治観として指摘している、歴史観の重視、問題解決型、中庸の追求という3点は、自分としても政治指導者の在り方として共感するところ大である。
そして、著者がチャーチルから学ぶことができる危機の指導者に求められる資質として提示する、(国民に対する)コミュニケーション能力、行動志向の実務主義(「即日実行」の精神)、歴史観という3点についても、もっともな指摘だと思った。
Posted by ブクログ
非常に丁寧に調べて分析し、自分なりの解釈を根拠付で示してまとめた良書。自分勝手で貪欲な若い頃のチャーチルには共感できないが、有事における行動力と決断力、リーダーシップは目を見張るものがあった。
Posted by ブクログ
首相を辞める時のチャーチルが、ロールスロイスで宮殿に向かい、妻の運転する大衆車で帰る所にイギリスの民主主義を感じた。また、戦時体制が、配給による福祉を充実させたと知らなかった。戦時でも議会政治を貫いた、英国は、素晴らしい。
Posted by ブクログ
リーダシップとは何か。この問題意識から読んでみた。
二つわかったことがある。まず、置かれている状況によって取るべきリーダシップは異なること。危機時期には大きな成果を出したチャーチルだったが終戦後は結果を出せなかった。
もう一つは成果を出せるのは自分だという確信。見方によっては自惚れや傲慢にもなるが、自分以外の誰がやるという気概なしでは事は成せない。
イギリスという切り口でサッチャー、チャーチルと同時期に成果を出したマーシャルについても関心を持った。
Posted by ブクログ
■題名がとても魅力的だ。しかし、内容はチャーチルの一生プラス指導者像だ。
■チャーチルのリーダーシップを理解したいのであれば、第7章と最終章だけ読めば十分だ。
■しかし、この2つの章は繰り返し読むと味わいが出るところだと思う。
Posted by ブクログ
●内容
・外交官によるチャーチルの評伝。人物を主体に、WWⅡ前後の政治情勢に迫る。
・チャーチルを“自信過剰で後進に道を譲れなかった”としながらも評価は高く、彼の行動を挙げて理想の指導者を語る。
「指導者が自己への確信を示すことは、危機においてはとりわけ重要である。人は危機的状況において自らの能力に疑問を持つ指導者に運命を委ねる気にはならないからである」
●感想
・トップマネジメントのケースとして読める。
自信過剰でなんにでもクチバシをつっこむ「いやな奴」のチャーチルが、そこそこ失敗しながらもトータルで成功を収めたのはまさにその自信のゆえ。
・チャーチルを通じて語られる「危機の指導者」の資質。
1、コミュニケーション能力→目的意識の明確化を行い、ヴィジブルなリーダーとなること。
2、行動志向の実務主義→大きな戦略的判断を下すにあたって、不作為のリスクは作為のリスクを大きく上回ると知ること。
3、歴史観→国家の存亡を左右する決断を迫られたとき、国家のあり方と国民についてどれだけの理解を持ちながら決断を下すか。