あらすじ
ヒマラヤで氷河湖が決壊した。下流のダム湖に浮かび上がったのは、なんと古代の「方舟」だった。こんな高地になぜ文明の跡が? いぶかる調査隊をさらに驚愕させたのは内部から発見された大量の木簡。それらにはみな、不思議な蓮華模様が刻まれており、文字とも絵とも判然としなかったが、なんらかのメッセージを伝えているのは確かだった――。一体、何者が、何を伝えようというのか? 第3回小松左京賞受賞作『神様のパズル』に続く、傑作長編SF、待望の文庫化。
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Posted by ブクログ
【僕は何故産まれたのか。それが知りたくて自殺しないで生きてる。】
僕にはまだ石を投げることしかできない。だけど、機本さんは石を作り、それを投げる大地を作り投げる人を作れる。答えは仮説でさえでないけれど、生まれた意味をみな求めている。人が一番最後にたどり着く答えは与えられるものでなくて、与えるものなのではないかとの布石。
ならば、僕らは救世主になり、僕らよりも高度な生き物を捻り出して何のために産まれてきたのか明確に定義し、自らは滅びるしかないのかもしれない。
Posted by ブクログ
超近未来のSF?
冒頭、いきなり氷河から舟が出土する。
未知の物体の登場で掴みはばっちり。
その舟には謎の木簡が収められていたがそれはなんと遺伝子情報だった。
主人公たちは専門家を集め非公式にその遺伝子情報から新たな生命を作り出す。
人間でないものを人間の手で作り出していいのかという生命倫理の問題とその存在に対する様々な立場の人間の思いが交錯して物語はクライマックスへ。
主人公がヘタレで少し盛り上がりにかけたので☆4。
登場人物が個性的だけど、主要キャラが少しイッちゃってたのがテーマを考えたらちょうど良かったと思う。
あと今思ったけど表紙が誰だかわからない
Posted by ブクログ
初めての作家さんでしたが、面白かった~。
氷河湖決壊で出てきた舟には蓮華模様が印字された木簡が。
教授指導の元に調査を開始したものの、別の教授が乗り込んできて
調査権限を独り占めしようとする。
主人公と怪しい仲間によって導き出されたに戸惑いつつも
倫理を超えて生命を作り出そうと神の領域に踏み出すのだが・・・
オーパーツにゲノムに生命倫理と好奇心のぶつかり合い。
こういうの大好きよぉ~
Posted by ブクログ
チベット山奥から「救世主を作るための遺伝子情報が書かれた木簡」が見つかったから、作ってみようぜ!…という話。
果たして現代に生れ落ちた救世主は何を語るのか!?
この作者の作品の中では、一番「つかみ」がいいと思います。
主人公がヘタレなのはいつも通りです。
救世主をどう解釈するか、というのは読者によりけりだと思うのですが、この作品の解はなるほどなぁと感心しました。
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機本伸司のメシアの処方箋を読みました。21世紀半ば、ヒマラヤの氷河が溶けて氷の中に埋まっていた正体不明の方舟が流れ出してきました。その方舟は誰かの墓のように見えましたが、中に格納されていたのはおびただしい数の木簡でした。木簡には綺麗なハスの花の模様がたくさん書いてありましたが、それが何を表しているのかは分からないのでした。そのハスの花の模様がDNAを表していると気づいた主人公たちが、巨大なコングロマリットを出し抜いてそのDNAを持つ生物を生成しようとするのでした。前作と同じで、天才のような登場人物に翻弄されてしまう、ちょっと気の弱い主人公という設定です。おいおい、どうしてそんなことを引き受けてしまうんだよ、ということが随所に出てきます。物語の展開が速く、ストーリーはそれなりに楽しめましたが、アイデア勝負で主人公たち登場人物の描きこみは今ひとつと感じました。
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ヒマラヤで氷河湖決壊対策工事にあたっている主人公は、突然の水流に巻き込まれますが、そこで古代の「方舟」を目にすることになります。さっそく調査が開始され、方舟の中から何かのメッセージのような蓮華模様が発見されます。そんなある日、主人公のホームページに「ロータス」と名乗る男からのメールが届きます。彼が、蓮華模様の謎をインターネットでクイズとして出題するという奇策に打ってでると、北川と名乗る男から、その模様は遺伝子情報を意味しているのではないかという回答が寄せられます。ロータスは北側を誘い込み、さらにエンジニアをしている上杉という旧知の男や、生殖医療の専門家の真田などをチームに加えて、研究を進めていきます。
やがてロータスたちは、コンピュータでのシミュレーションによって、蓮華模様の遺伝子から、肉髷や天眼をもつ三目八臂の不空羂索観音のような姿をした胎児が生まれてくることを突き止めます。これは「デザイナー」からの人類に向けたメッセージだと考えたロータスたちは、爽快堂製薬の会長に接触してゲノム・コンポーザーの使用許可を獲得し、さらに代理出産の闇サイトを装って子宮を提供する女性を募集して、ついにカビリアという女性に胎児を出産させることに成功します。
しかし、「不空」と名づけられた胎児をめぐって、さまざまな人びとの思惑が入り乱れることになります。そんななかで、やがて不空に訪れる「メタモルフォーゼ」によって「デザイナー」のメッセージを知ることができると信じるロータスは、冷徹な作戦を次々に実行に移していきます。
不空の誕生まではたいへんおもしろく、一気に読みましたが、そこから不空を連れて主人公たちが右往左往する展開は、いささか中だるみの感があります。結末は、ストーリーに語らせるより理屈が勝ってしまっているという印象はいなめないものの、きれいにまとめられていると思います。
Posted by ブクログ
太古の箱舟がヒマラヤの氷河湖決壊により突然出現、箱舟からは蓮華模様が刻まれた木簡が発見される。そこに刻まれた謎の模様を解読するに至り、弱小マッドサイエンティストらがあれやこれやの大騒ぎ・・・ラストの尻つぼみ感は否めないが、これだけの小難しい内容をまとめる力量って凄いと感心させられた。
Posted by ブクログ
作者が後書きに書いている通り
「神なき救いの物語」
多少ご都合主義…なところはあるが、
救世主伝説?とバイオテクノロジーを組み合わせてるのが
面白かった。
ロータスの、自分たちが謎を解明しなければ
謎は永遠に謎のまま、権力者に隠されてしまう、と言うセリフが
深いと思った。現実のニュースだって、
謎が謎のまま、ってことたくさんあるから。
あと、救われる側は救う側を救世主と思っているが、
救う側にとっては救われる側こそ救世主、というのも
深いな、と。
誰かを、何かを救ったり守ったりすることで、人は魂の救済を得る、
ということだと思うんだけど、わかる気がする。
Posted by ブクログ
ヒマラヤの氷河湖の決壊から発見された古代の方舟。
中から見つかったのは大量の木簡。
不思議な蓮華模様に秘められたメッセージとは?
氏が示した解に、タイトルに、やられた感たっぷり。
悩める者達よ、買って損は無し!(←なんて宗教色なセリフ?!)
科学の信徒よ、買っておくべし!(←断言?!)
Posted by ブクログ
ちょっと前に読み終わっちゃったんであんまり覚えてないけど、なんか最後のほうが微妙だったなぁ。。序盤はやたら専門的な薀蓄(きらいじゃないけど)がおおくてなんともいえなかったわ。
Posted by ブクログ
生命倫理と救いがテーマの作品です。
それなりにキャラクターは立っていると思います。
2012.10.26追記
読み直して思ったのは、語り役≠主人公であるということ。
そうでないとあまりにも語り役が情けない。
前作「神様のパズル」と同様、文章は読みやすい。
Posted by ブクログ
題名:メシアの処方箋
作者:機本伸司
出版社:角川書店(ハルキ文庫)
ヒマラヤの氷河湖が解け始めた近未来。
地球温暖化が進んだ結果だった。
ヒマラヤの下流の村や町を氷河湖が決壊した土石流から守る為にダムが作られた。
このダムの管理を勤めていた彼は、仕事をしてる時に氷河湖が決壊。
土石流から逃げようとしたが捕まってしまった。
その時丸い木のような物につかみ一命を取り留めたが、その丸い木のようなものは、舟の穂先だった。
ノアの方舟なのか?
考古学の調査隊が入り内部を調べると、発見されたのは大量の木簡。
不思議な蓮華模様が刻まれた木簡は、当初文字なのか絵なのか判断が出来なかったが、それはDNAの塩基情報かもしれないと解った・・・。
方舟のような舟は、5000年前と判明。
起源は、インダス文明より古い。
この舟は、何のために高地の氷河湖で眠っていたのか?
木簡に秘められたメッセージとは?
超古代文明の人は、何を伝えたかったのか?
考古学・遺伝子工学を舞台に書いたライトノーベルです。
映画「神様のパズル」を見た人いますか?
「神様のパズル」では、宇宙を造るがテーマでした。
この作品では、遺伝子工学を使い人の遺伝子を操作して「救世主?」を作ったがテーマです。
ある程度詳しく書いてるので軽い物語とのギャップが激しい作品です。
個人的にはこういうSFは、好きですね
ついて行けそうな人は、読むのもいいかもです
Posted by ブクログ
バイオ仕掛けのメシア譚。すかすかとエピソードが続き、本当にややこしい論争や問題をするすると場当たり的に解決する。ご都合主義や、葛藤の割愛はゲームかあらすじを読んでるようだ。もっともみっちり書き込んだら、この3倍くらいボリュームでたかも。あっさり読むために割愛や省略を繰り返した著者の演出は評価する。アイディアは壮大ながら猛烈な一本道で突き進み、なんだか矮小なエンディングへ落ち着いた感触は否めない。とはいえ、最後まで読ませた。全員が個人主義者で、強烈に突出した個性もあえて描かなかったため、感情移入はしづらい。作者も狙ってなさそうだ。とことんドライな人間が、救いを求めるのか。それがなんだか、不思議。