【感想・ネタバレ】カラーひよことコーヒー豆のレビュー

あらすじ

ささやかな日常から真理を見いだす作家の目

『博士の愛した数式』『ミーナの行進』などで知られる小川洋子さんのエッセイ集。

インドとドイツの区別がつかなかった子供の頃。「君、明治生まれ?」とボーイフレンドに揶揄された学生時代。
身近なエピソードからはじまり、単行本にしてたった5ページ弱で人生の真理にまでたどり着く展開は、作家ならではの発想の豊かさゆえ。
そんなエッセイの醍醐味を堪能させてくれる29の掌編が詰まった、宝石箱のような一冊です。

収録作品の多くは、ファッション誌「Domani」に連載されたもの。
小説を書くとき、登場人物の職業を最も重要視するという著者が働く女性に向けるまなざしは、温かな励ましに満ちています。
日々忙しく働く中で、つい“ドラマ”を求めてしまい、平凡な日常を退屈なものと思いがちですが、繰り返されるその日常こそがかけがえのない幸せなのだと気づかされます。

仕事、プライベートで、ついがんばってしまう女性たち。
そんな彼女たちに「今日は元気を出さなくてもいいかなと感じたときに読んでもらえたら」と小川洋子さん。
ふとたちどまり、肩の力を抜いて、自分自身を見直す--そんなきっかけをくれるエッセイ集です。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

短編のエッセイになるのかな。
あたしの好きな文調で 読みやすかった。

小川さんって 「博士の愛した数式」の作家さんだったんだな。
知らずに読んでいた。。
必要とする誰かのところへたどり着いてほしいとの願い。
あたし 読んで よかったな。


タクシーの無線や ハロー注意報とか ちょっと視点がおもしろい。
あとは縁日のカラーひよこ。
知らなかった!
(小川さんは カラーひよこがもう縁日で売られていなくて、知らない人が多いことに衝撃を受けていたけど。知らないことを知った あたしも衝撃的)

他の作家が書いた本のタイトルも ちょこちょこ出てきて
知っている本も 知らない本も。
こういう風に 次に読んで見たい本に出会えるのは ありがたいな。

靴の話で
戦後 旧満州から引き上げてくる時に 脱落した人は靴をなくした人。
靴がないまま必死で歩き続けたら 足の裏の肉 奥深くまで石が埋まっていた人など壮絶な話。
最後に自分の命を守ってくれる砦となるかもしれない靴。
きっちり自分に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていける。自分のためだけの、 足にぴったりな一足。

いい靴はいい道に導いてくれるって聞いたことあるけど
最近 合わない靴を無理にはいて ストレスがあるから
やっぱり あの靴は考えようかななんて 思ってしまう。



以下、引用。

思い出からやってくる人。
苦しかったりつまずいたりした時、思い出の中からやってきて、心をさすってくれるような。

本物のご褒美
宝石や香水は何個でも欲しくなるが、本物のご褒美は生涯にたった一個あれば十分。
何度繰り返し思い起こしても、そのたび新たな喜びに浸れる。


出会うべき誰かと誰かが出会う。
人と人が出会うに相応しい手順がちゃんと踏まれている。


どんな才能も、自ら売り込んでいる間は本物ではない。
神様の計らいは常に、本人に気づかれないようにこっそり施される。
それを施された人間より、その人間が発するものを受け取る側の方が、ずっと大きな恩恵をこうむる。

世界の周縁に身を置く人。
中心から少し視線をずらした時、世界の見方が変わることがある。
声高に叫ぶ人の声だけでなく、じっと黙っている人の声に耳を傾けていると、思いがけず深遠な真理に触れることができる。

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2012年11月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小川洋子さんのエッセイ。

読者の人によって思い出される祖母との記憶。
お金をもらってももらっていなくても、仕事をこなしている人への尊敬の気持ち。

本物のご褒美というのは、ふとしたときに出会うありがとうということ。

その人のことを詳しく知らなくても、一冊の本があれば十分だということをラジオの仕事で知ったこと。

いろいろ後悔してしまうこともあるけれど、姪っ子の愛おしさが全て帳消しにしてくれること。

思い描く理想の1日と、小説と犬と阪神に囲まれた生活。

控えめで謙虚で、愛に溢れている人。
素敵な人だなあ、と思う。作品ももちろん素敵だし、エッセイから伝わる小川洋子さんのお人柄も素敵。

0
2019年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

小川さんの日常を綴ったエッセイ
とても控えめなお人柄が伺えます

書下ろしの「ジュウシマツの芸術」がお気に入り
鳥には興味がなかった小川さんがジュウシマツの生態に感銘を受ける件がいい
小川さんの「芸術」に対する考え方が伺える

ジュウシマツは求愛のために歌の練習をし本番に挑む
練習と本番では遺伝子の発現パターンが異なるらしい

さらに、究極の歌をうたうオスが出現する、そのオスは
メスには求愛せず、自分の歌に聞きほれ満足する

「求愛という目的が消え去り、ただうたうためだけの歌、つまり芸術がここに誕生する。(中略)孤独を愛し、より繊細な美を追い求め、いつしかそれを芸術にまで高めることのできる彼ら。誰に自慢するでもなく、ひっそりとその美に酔いしれる彼らに対し、尊敬の念さえ湧いてくる。」

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2015年10月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

働く女性のためのエッセイ。
何も言わないけれどそっと側で見守っていてくれているような、そんな温かい目線の本です。

慎ましやかで、我慢強く、いつどんな時も感謝の心を忘れない、愛情深い明治生まれの女性だったおばあさんのお話。「思い出からやってくる人」

基本的に何に対しても自信の持てない性格であるという小川さんが落ち込んでしまった時のとっておきの救済策
「小さな命に救われながら」

友人との待ち合わせの時に、見知らぬ(失敬な!)女性に‘こんなにも大変なものを背負っておられるのに…’と言われた
「ただごとじゃない人生」

他にもたくさんあるけど、この3つが好きでした。


何の前触れもなく、静かに試練はその人の背中に舞い降りてくる。でも慌てる必要などない。必ず救いの道は用意されていて、それを探すことこそが、生きることなのだから。

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2013年01月28日

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