あらすじ
バブル絶頂期の1990年、個人として史上最高額4300億円の負債を抱え自己破産した朝比奈ハル。平成が終わる年、彼女はひっそりと獄死した。彼女のことを小説に書こうと決めた“私”は関係者に聞き取りを始める──。解説・芦沢央。
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Posted by ブクログ
すさまじい
葉真中作品が好きなので購入、完読
今回はバブル期に大儲けしたらしい尾上縫という人をモデルにした作品で、ある人物がハルをよく知る人たちに取材して物語にするというストーリー
社会派作品なので単純に勉強になる。なぜバブルが起きたのかとか、その前時代の戦後の様子などなど、
(ちょくちょく葉真中作品に多い、強姦されているのがやはりしんどい、、)
取材者が誰なのかわかるシーンで、一瞬とはいえないぐらい少しフリーズした。全作品こういう「お前だったのかよ」となる技術にはほんとにびっくりする。
しかも作品として読みやすい文体だからどうしてもサクサク進んでしまう中で、いきなり種明かしが始まり、その後のラストのメッセージ性の強い部分まで一気に駆け抜ける感がすさまじい!
ワガママに生きてきたハルでさえも結局何かの奴隷で、人生の最後には幸せでなかった感情の中に死んでいったと思われるところがやるせない。
彼女のどの分岐でも我慢を選んでも幸せになれたとは思えないし、満足のいく人生として終わることは極めて難しいことなのかもと感じる。
この作品の主人公(レポーター?)の取り巻く環境、過去に目を渡し、とても楽観できず、重い現状に押しつぶされそうになる中でハルが教訓として自分の人生に語り、それを希望とするように小説を書こうとする、ということになにか胸にくるものがある。
社会的に犯罪者として蔑まれ、被害者からは憎悪を向けられる人でも誰かの光になることがあるということをその作品を通して丁寧に納得させられたからかもしれない。